トライアングル2
MSは賑やかになった。ワトソン君と、患者3人。
大学にある診察室で、彼等を診た。
彼等もやはりメグと同じように、過労とストレスから体調を崩していた。
俺は内科的に出来る事を全て行った。
また、体操をしたりして、ストレスの軽減に努めた。
ワトソン君とも気が合い、共に楽しく働いた。
慌ただしく数週間が過ぎた。
新たな出会い、そしてやり甲斐のある仕事…。
本当に有意義な日々だったが、胸にはぽっかりと穴があいていた。
忙しく働いた後、静かな部屋で、ベッドに体をうずめる。
この静けさのせいなのか。夜になると、胸が痛みだす。締め付けられるような苦しさ。
目を閉じるといつも、見慣れた姿がそこにあった。
輝く笑顔、雄志を漲らせた瞳、そして涙…。
それは、4ヶ月間毎日、すぐ傍にあった俺の一部だった。
この数週間俺は…体の半分を失ったようだった。
彼女は今、MSには居ない。ワトソン君達が乗ってきた宇宙船に居る。
残りの2人のメンバー…ワトソン君の親友というシューラ・ケレンスキーと、そして彼等のリーダーと一緒に過ごしているそうだ。
彼等の宇宙船には、MSを再び発射させるだけの燃料が残っていた。
適切なタイミングとコースであれば、その燃料だけで、しかも最短期間で地球に還れるらしいのだ。
3人は複雑な計算から、その方法を導き出していた。
リーダーの名前は、アンドレイ・カデット。
彼は、世界で最も優秀な宇宙飛行士と言われている。
何度も宇宙に飛んで数々の功績を修めていた。
気象衛星や宇宙望遠鏡のメンテナンスを何度も成功させた。
恵まれた肉体、聡明な頭脳、そして優れた人格。
最近ではMSの建設に参加し、世界中から集まったクルーを指揮する立場に選ばれたのだ。彼は弱冠28歳だというのに。
彼も、ケレンスキー君も独身らしい。
メグは今、俺の居ない場所で、独身男に囲まれて…。俺の頭の中は不安でいっぱいになった。