絶体絶命3
気づいてほしい…それが、俺の本音かもしれない。
もちろん気づかれたら恥ずかしいし、その後のメグとの関係がどうなるか、考えると怖い。でも、それよりも…。
素直に、“好きだ”って言ってしまいたい。
だけど駄目だ。
まだ社会的に何の立場も無い俺。休学状態だし、当分学生のまま。お金も無い。
卒業したって、一人前の医者になれるまで、どんなに時間がかかるだろう。
こんな俺が、彼女を幸せにできるのか?苦労させるだけじゃないのか…?
不安が、頭から離れない。
「ワタル、もうすぐ火星に着陸するから用意してね」
メグの声で我に返った。
…そうだった。
今日は着陸する日なんだ。頑張らないと。地球に還るために、俺…しっかりしないと…。
メグに連れられてコクピットに入った。
窓の向こうには、やはり赤茶けた無毛の惑星が迫っていた。
蒼い水の満ちた、あの星をそこに見る日は…来るだろうか…。
操縦席に座っているメグの横顔を見る。
顔色は良いみたいだな。もう、安心して見ていられる。やっと体調が安定してきた。
でも今の俺は…。自分の体力に…不安がある。絶対、大した事は無いんだ。…けど。
自分達をこんな目に遭わせた連中を、恨まずにいられない。
MSに向けてミサイルを発射した、あのテロ集団だ。
しかし、メグは恨み言なんて一言も言わない。
彼女こそ、実際に命を落としかけたんだ。
体調も相当深刻だった。なのに、病床においてさえ、彼女は何も言わなかった。
一体どう思ってるんだろう…。
「メグは奴等の事、腹立たないのか?」
ずっと気になっていた疑問を、打ち明けてみた。