大宇宙より5
そんな気持ちとは逆に、どうしようもない生理現象が起きていた。
病気で寝ているメグを起こしたくないが、MSの居住区にある自分の部屋までは、もちそうになかった。仕方が無い。
「メグ、悪いけど起きて…」
「…何?」
高熱に喘ぎながら、メグは答えてくれた。
「近くのトイレを教えて…。もう限界…」
ああ、恥ずかしい。情けない。
こんな事でメグの安静を妨げている俺。これのどこが、メグの助けになれると言うのか。
しかしメグは、そんな俺を責める事無く、起き上がった。
「ついて来て」
そう言うと、床にある取っ手を引いた。
すると床下に下りるハシゴが現れた。トイレはコクピットの床下にあったのだ。
このトイレは普段は水洗式だが、無重力空間にも対応する事が出来る。汚物は空気圧で宇宙空間に排出される。
その勢いで進路が変わってはいけないので、進行方向へ排出されるように、自動的に制御されている。
つまり噴射しているエンジンと同じ方向から排出されるのだ。
無重力に対応できるトイレは、MS内ではここしか無い。
「…ごめん、メグ起こしちゃって。我慢できれば、自分の部屋のトイレまで行こうと思ってたんだけど、行ってたら大変な事になってた」
そう。無重力空間では、液体はシャボン玉のように散らばってしまうのだ。液体が液体なだけに…考えるだけでも恐ろしい。
「何ですって?!」
メグが怒るのは当然だ。
「ごめんなさいっ!」
「違う。私が怒ってるのは別の事!コクピット以外は暖房切れてるのよ。ここを出たら一瞬で凍死するところだったの!」
…メグは、どんな時でも人の命を守る事を考えている。そして今は、俺の命を。
それは任務だから、責任だから…それだけではない。
彼女は心から、そうしたいと思っているんだ。
それを確信した瞬間だった。
「じゃ、小さい方の時は、アレを使う事もできるから」
メグは早口でそう言い残すと、顔を赤らめてそそくさと出ていった。
『アレ』とメグが指した物は、便器と繋がったホースの先にある…太さは3〜4cm長さ15cmくらい?の…ちょうど…。
それを、自分の物にあてがう。
そしてスイッチを入れた。
すると、それは締め付けるように密着してきて、俺の膀胱に溜っていた物を吸い出した。
ふぅ〜。ホッとしたぁ。と同時に、さっきのメグの顔を思い出すと、笑いを堪えきれなくなってしまった。
やっぱりメグも、女の子なんだな。
あんなに気が強いのに…。でも、もしかしたらそれも…女だからこそなのかな…。
もし男だったら、こんなに細やかに気を配れるだろうか。
そして目一杯に気を張っているからこそ、きつい事を言ったりもするんだ…。
女って不思議…。でもやっぱり、メグは大事な親友だよ。
そして、好きだ…。




