大宇宙より3
「ここで仕事の事言わなくていいじゃないか!俺だって男として守られっぱなしではいられないよ!」
「…女に守られるのがそんなに嫌?!」
メグは怒りに震えながら振り返った。
「女を型にはめようとする人は私大嫌いよ!!お子様はお子様らしくしてたらいいのよ!」
この感情的な反応に、俺は言葉が出なかった。
こんな酷い言い方しなくても…。本当に傷つく。
しかし、メグの目が涙でいっぱいだった。息遣いも荒い。顔色はみるみる失せていく。
驚きと心配の方が、怒りより優っていた。俺は何も言わずにメグを見つめた。
「私の付き合ってた人も…そうだった…」
え…?25歳になるんだから、そりゃあ付き合った事は…あるよな。
だけどやっぱり…少しショック。どんな男が彼女の恋人になれたんだろう…。
彼女の震えは止まらない。苦しそうに肩で息をしている。
誰かが彼女に傷を残している。それだけ彼女にとって、大きな存在だった男…。
「彼はSSP訓練校の同級生だったの。彼とは幼馴染みだったんだけど、数年会わないうちに背は高くなって、がっしりして…素敵だったわ…」
俺は動揺が顔に出ないように細心の注意を払いつつ、聴いていた。
「彼は本当に私の理想だった。同い年なのに、大人で頼り甲斐があって…。同級生でさえなければ…ずっとうまくいったかも…」
…そんなに素敵な人だったんだ?しかも大人?!それに引き換え俺はついさっき、『お子様』って言われた…。
メグは、俺と全く正反対の男が好みなんだ。はっきりと思い知らされる。
だけど俺は…。
「彼は運動能力も抜群だった。だから宇宙飛行士には最適な人だったんだけど、機器の整備がダメで…。SSPは華やかに見えるけど、宇宙飛行士と違って人の安全を陰から支えるのが本業だから、地味な仕事も多いし…彼には向いてなかったのかも…」
誰にでも向き不向きはある。
しかし彼のプライドは、自分の成績が、彼女であるメグより劣った事が許せなかった。
彼は卑劣な手を使って、メグが進級できないようにしたのだ。
それに気づいたメグは訴えを起こし、その間に落第していたのだという。
「でも自分に能力が無いからって…女を型にはめるような男の言いなりにはならないわ…!」
彼女は恋人に裏切られた失望を隠しながら、ずっと前向きに生きてきた。自分の決意を貫くために。