大宇宙より2
だが、これ以上事を荒立ててはいけない。一度した失敗を繰り返す事になる。
だけどメグへの思いが、変わっている。
目が覚めるまでは、あんなに信頼と恋心でいっぱいだったのに。
今は彼女が何を考えてるのか解らない。
俺が追い掛けてきた事を、良かったと思ってるのか?本当は俺の事、目障りに思ってるんじゃないのか…?
食料を取りに行くためにMSの中を移動しながら、俺は答えを探るようにメグの後ろ姿を窺った。でも、何も分からない。
分かるのは、メグの口数が極端に少ないという現実。それだけ。
早く目的地に着きたい。早くこの気まずい空間から逃れたい。
コクピットからポートを挟んで向こう側、MSの後部に大学や居住区がある。
一言の会話も無いまま、ようやく居住区の中にある食品店に着いた。
メグは真っ直ぐ店の奥に入ると、俺を呼んだ。
店の倉庫には、食品の入った段ボールが堆く積み上げられている。
ざっと高さ3m。
それが倉庫いっぱいに。ちなみに倉庫はバレーボールのコートくらいの広さがある。
「これを全部、コクピットの方に運んでくれる?」
メグはあっさりとそう言うと、どこかに行ってしまった。
酷くねえか?一人でやれって?!もちろん全く重さは無いが、手に持てる量が限られている。せいぜい2箱くらいだ。
俺は腕に段ボールを抱えると、レジを通り過ぎて外に出た。金も払わずに…何か複雑な気分。
何十回往復しただろうか…。
やっとの事で、作業が終わった。MSにある全ての食料が、コクピット付近に集結した。
本当に疲れた。
重くはなかったけど、重さの無い世界での作業は、変に筋肉を使う。足も攣りそうだ。
暫く座りこんでいると、どこに行ってたのか、メグがコクピットに戻ってきた。
息を切らしている俺をねぎらうわけでもなく、無言のまま計算用紙を片手に食料の量をチェックし始めた。
何だよ。一言言ってくれてもいいんじゃないか?!
メグは一頻りチェックを終えると、操縦席に座って計算を続けた。
無音の世界に、ただペンの走る音だけが響く。
やがて、やっとメグが口を開いた。
「私は任務を終えたつもりだったんだけど、新たに、貴方を守る責任ができてしまったの。私は責任を果たさなければならないから」
疲れの入り混じった淡々とした言い方。
俺が迷惑なんだ?俺のせいで仕事が増えたから。ずっと機嫌が悪いのはそのせい??どうしてもそんな考えに走ってしまう。
「…俺はメグを助けるためにここに居る。メグは俺を助ける事は考えなくていい」
俺は精一杯に冷静を保って、この言葉を絞り出した。
しかしメグは向こうを向いたまま答えた。
「何の根拠が有ってそう言うの?宇宙で人を守るのは私の仕事なの!」
あくまでも強情なメグに、俺はショックを隠せなかった。