表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/61

大宇宙より1

今までの不安と緊張が、涙に洗い流されたのだろう…。メグは安らかな表情で眠りについた。

それを見ていると、俺の中で張り詰めていたものも、解けていくのを感じた。

良かった…。追い掛けてきて、本当に良かった…。

と思った時、さっきの記憶が一気に蘇ってきた。

大義名分があったとはいえ、俺は見てしまったんだ、メグの…。

目の前の可愛すぎる寝顔が、俺の鼓動を更に速くする。

飛行服の硬く厚い繊維の下に隠されていた…滑らかな曲線を描く躰のライン。

華奢な両肩、透き通るような白い肌。

吸い付くように柔らかなその感触が、まだ掌に残っている。

いずれも男の俺には無いものばかりだ…。

いくら手当てだと言ったって…その場は割り切れても、結局無理だ。だって好きな人なんだから。

やっぱりメグの事だけは女として見てしまうよ…。

…ん?

気配を感じて目を開けると、天井が物凄い勢いで迫ってきていた。

「うわ〜っ!!」

頭をぶつける寸前に、何とか天井に手をついた。

「何?何だよ?!」

裏返った声に寝惚け眼。思いきりカッコ悪い。

振り返って下を見ると、メグが呆れた顔で俺を見上げていた。

「何度起こしたら起きるのよ」

冷静に怒っているメグ。かなり恐い。

どうやら俺は、いつの間にか眠っていたらしい。

で、あまりに起きないので、メグに投げ飛ばされたらしい。

無重力だから容易い事なのだが…、全くこの人は、怪我人のクセにバイタリティ全開だ。

壁を蹴りながら、何とか床まで下りてきた俺は、メグの座っている操縦席の側に立った。

大きなフロントウィンドーの向こうには、真っ暗な闇の世界が果てしなく広がっている。

俺は溜め息をついた。絶望的になる。今ジタバタしても同じだ。どっと疲れが出てきた。

そりゃあ疲れてるさ。

だってMSに戻ってから、緊張状態の中で必死に頭使って、それから頭打って気絶して、その後はメグの傷の手当てしてたんだ。俺も大変だったんだから…。

「分かってると思うけど、俺疲れてるんだよ。もう少し寝かせてくれよ」

「何言ってるの!私だって…」

それは、今まで見た中で一番恐い顔だった。

一瞬だったが、怒りを滲ませた瞳で俺を見ていた。

でもそこでメグは口を噤んだ。

「…何でもない。食べ物持ってこよう。お腹空いたでしょう」

そう言って、操縦席を立って俺に微笑みかけた。

…でも明らかに作り笑いだ。

―何か文句があるならはっきり言えよ!―

そう言いたい気持ちをぐっと堪えた。

何だろう。苛々する。彼女も苛々してる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ