出会い2
それは、金髪の、同年代に見えない程落ち着いた奴だった。
こいつが呆れたように俺を見ている。そして一言。
「お前さぁ、入学式から居眠りしてたら、教授連に目付けられるぞ」
不安のあまり不眠になっていたツケが、事もあろうに入学式に回ってきた俺。
でも寝てる間に不安は解決してしまった。
それは、こいつのお陰、ジョー・チャールストン。
ジョーと居ると、国境の隔たりを全く感じない。
講義の時間も、予習の時も一緒で、何だか日本にいた頃と何も変わらない。
「あ、ホワイトさんだ」
図書館で一緒に勉強していた時、ジョーが何気なくその名前を口にした。
彼の視線の先には、飛行服の様な制服に身を包んだ女性がいた。
名前と髪色からしても欧米の人だろうけど、それにしては小柄な後ろ姿だった。
9月に入学してもうすぐ2ヶ月になるけど、その名前をあちこちで何度耳にした事か。
ところで俺達は、明日人体解剖の見学があるというので、予習をしていたわけなのだが、ジョーがあまりにその後ろ姿を見つめるので、勉強にならなくなってしまった。
「…ねぇ、お前あの人好きなんだ?」
そっと尋ねてみた。
「ま、まさか!違うよ!」
ジョーは真っ赤になった。
「俺には地球に残してきたフィアンセが居るんだって、いい加減な事してられるか!」
本当にジョーは婚約している。若いのに落ち着いているのは、そのせいかもしれない。
「じゃあ何なんだよ」
俺が言うと、ジョーは俺を見て一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐにふっと笑った。
「そうそう、お前あの人が話してる間、見事な爆睡だったな」
念のため、俺が居眠りしたのは、今のところ入学式の時だけである。
後は真面目にやってるので、悪しからず。
そう言えば、ジョーに叩き起こされた時に聞こえたのは、女性の声だった気がする…。
「宇宙安全パトロール:SSPの中で、ただ一人の女性隊員なんだって。自分の経験とかを入学式の時に語ってくれたんだよ。あれから1回生の中ではすごい人気だけど」
SSP(Space Security Patrol)は、3年前に発足された。
今宇宙に行くのは、宇宙飛行士だけではない。
無重力体験ツアー等が行われていて、宇宙旅行の機会が一般人にも開かれるようになった。
そんな一般人の宇宙での安全を確保するために、必要になった組織がSSPなのだ。