カウントダウン6
だが僅かな望みでも、賭けるしかない。
多分無傷というわけには行かないが、命さえあれば、何とかなる。
俺はエネルギールームに戻ると、モニターを見ながら反射鏡の操作を始めた。
モニターにはミサイルの航路も映っている。
ミサイルへ太陽光線を反射する角度になるように、反射鏡を調整する。寸分違わぬよう、精確に。
俺は為す術を尽くした。ミサイルのコースが変わったかどうかは、まだ確認できない。
…あと5分だ。
時間が刻々と過ぎてゆく。
あと5分で至近距離で爆発が起こる。あと5分で…
…死ぬかもしれない…
ここに戻る前から覚悟していたつもりだった。
しかしこうしてじりじりと迫る恐怖は、想像を超えていた。
メグも、同じ恐怖に面している。
彼女はどうしているだろうか…。
きっとエンジンに点火できないので焦ってるだろうな…。
…あと3分。
モニターに点滅する赤い点が、中心に近づいてくる。
彼女も、コクピットで同じ画面を見ているはずだ。
生き残れる見込みが有る事も、彼女は知らない…。
―命を守る大事な仕事だから―
いつか、彼女は俺にそう言った。
彼女は、その任務を果たすために自分の命を投げうっている。
そして、俺も一緒に残るなんて思わせないように、俺を助けるために、俺に辛く当たったりしたんだ…。
どうして、そんなに勇敢で優しくなれるのだろう。
…あと10秒だ。
―どうか、もう一度メグに逢えますように―
そう祈っていた。その瞬間まで、ずっと。
あと5秒…4…3…2…1…