カウントダウン4
実は、彼は俺を地下室に待たせていた間、俺をメグに会わせようと、SSP本部に頼んでくれていたらしい。
しかしどんなに言っても、許可は出なかった。
それでも強行してくれてるのって…?嘘まで言って、命令に背いて。
おまけに月面基地の通信システムも、暫く使えないように細工したと言う。
MSのポートに着陸すると、彼は後ろにいる俺に真剣な眼差しを向けた。
「日本に[生き恥]という言葉があるね。そんな風に後悔するような人生になって欲しくないんだ。人の命を守る事は、その人自身を守る上でこそ成り立つ物だと、俺は思うから」
「本当にありがとうございました!」
俺は深く頭を下げた。
「俺が責任を取る代わり、必ず、自分に悔いの無いようにやって来い。いいな!」
「…はい」
俺は船を降りた。
彼の制服のネームを、目にしっかり映しながら。
そして、彼の船がポートを出てMSのハッチが閉じられるまで、見送っていた。
アキラ・ミヤネ―絶対に、忘れはしない…。
宮根隊員の事は、3年前に彼がSSPになった時から、日本中のTVで活躍が報じられていた。
彼は第1期隊員として、今や後輩達を指導しつつ活躍している人だった。
その彼が、今回この件をどうやって責任を取るつもりなのか…。
答えは、分かりきっていた。
―自分に悔いの無いようにやって来い―
彼の言った言葉を噛みしめる。
ミサイル接触まで、あと27分。
全ての住民が消えた都市。耳が痛くなる程の静寂が俺を襲う。
この都市の中に…宇宙の真ん中に、自分は取り残されたのだ…。
急にとてつもない恐怖を覚える。
―自分に悔いの無いように―
この言葉を心の中でもう一度リピートさせると、拳をギュッと握り締めた。
すぐに俺はエネルギールームに入った。
MSのポート内に給油口があるため、そこに併設されているのだ。
まず動力エネルギーをカットする。MSが動かないように。
MSを遠くに移動させる…それがメグの任務だ。
しかしそれは、メグと俺にとって死を意味する。
ミサイルはMSから出る僅かな電磁波を追跡して、確実に襲ってくる。
メグを救い、同時に他の沢山の命を守る方法はただ一つ。
MSに接触する前にミサイルを破壊する事だ。
今から僅かな時間で、その方法を考えなければならない。
SSPでさえ、考えつかなかったその方法を。
だが俺は素人だ。無力な俺に何が出来るのか…?