カウントダウン3
「何で今まで言わなかったんだ?!」
俺は夢中で叫んでいた。
「君をホワイトに会わせるわけにいかなかったからだ。任務を果たす決意をしているホワイトが君にまた会えば、どんなに辛い気持ちになるか、解るだろう?」
俺は真っ白になった…
気がつくと、俺は彼のピストルの先を掴んで、銃口を自分の胸に押し当てていた。
「大丈夫です。俺は彼女と運命を共にしますから!」
「撃つぞ?!」
「…いっそ殺して下さい。もし行かせてくれないなら」
もう一度メグに会えるなら、…何でもする。
―大事な時に…俺は親友のお前と一緒にいたかった―
ジョーの言葉が頭に浮かんだ。
「大事な時に一緒にいる、それが友達なんじゃないですか?」
そう。メグはもう、単に一目惚れしただけの人じゃない。
彼女は俺の親友なんだ。今は独りぼっちの彼女の側に、いたい…。
祈るような思いで、彼を見つめた。
「それだけの覚悟があるなら…」
今まで英語で話していた彼が、突然日本語に切り替えて呟いた。
「―行ってこい」
そう言って、サングラスを外した。
俺の目を見る、俺と同じ、茶色の瞳。
「責任は取ってやるから」
そう言って、ピストルを下ろした。
俺は、驚きのあまり呆気に取られていた。
「さあ、急がないと間に合わなくなる」
彼は俺を連れて地下室から外に出た。
そこには小型宇宙船があった。
大きめの乗用車くらいのサイズだ。俺にも操縦免許がある。
しかし彼は操縦席に座ると、まだ唖然としている俺を見て笑った。
「どうした?早く乗れよ」
言われるがまま、後ろの席に乗り込む。
彼は無線に向かって英語で話していた。
「…分かりました」
無線から聞こえたのは、メグの声だった。
今メグは、MSのコクピットでたった独りで…命を賭けた任務を、しっかり受けとめて…。
そんな彼女の健気な姿が、目に浮かんで熱くなった。
「では先ほど伝えました通り、MSに残してしまった住民1名を只今より救出に向かいます」
そう言って彼は通信を終えた。
「今のは…?」
「当然、嘘。MSに住民は残ってない。俺がチェックミスする訳無いやん」
何と?ちょっと関西弁だっ!
「MSはミサイルを引き付けて、月や他のステーションに影響無い場所まで移動する事になっている。だから引き止めとかないと追い付けないやろ?」
軽い衝撃と共に、小型船が宙に浮いた。