カウントダウン2
「すぐにMSに向かう事はできない。避難してきたところなんだから、それくらい分からないのか?!」
彼は、月面基地のポートから少し離れた採掘場まで俺を連れてきて、地下にある倉庫に監禁していた。
「すぐに会わなきゃならない人がいるんです。その人が今MSに残っているので…」
とにかく今の俺は不安でいっぱいだった。
このまま、メグに会えなくなるような気がしてならなかった。喧嘩したまま…。
「…全員避難したのだから、今はSSPしかMSには残っていないんだが…?それは分かっているのか」
気のせいか、声に戸惑いを感じた。
「分かっています」
「…しばらく待っていなさい」
そう言い残すと、彼は姿を消した。
それから40分。
まだ彼は戻ってこない。多分、ポートにあるSSPの管制室にでも行ってるのだろう。
それにしても、ただの避難訓練であれば、俺をMSに帰すのは難しくないはずだ。手続きにこんなにかかるわけがない。
やっぱり、MSに何かあったんだ。俺の不安は、確信に変わっていた。
あのSSP隊員が戻ってきた時には、1時を過ぎていた。
待っていたとばかりに、MSに何があったのか聞こうとした俺は、そのまま固まってしまった。
眉をしかめて現れた彼の手には、ピストルがあったのだ。
「動かずに聴いてくれ」
表情とは対照的に、言葉はさっきより少し柔らかく感じた。
「MSは午前2時に、追跡ミサイルと接触する予定だ」
予感は的中した。
ニュースが具体的に放送されなかったのも、MSでのパニックを防ぐためだったのだ。
彼は銃口をこちらに向けたまま、話を続けた。
「ここでMSが爆発すれば、月に壊滅的な被害が及ぶ」
月には、月面基地に勤務している人々と、MSから避難した人達でいっぱいだ。
シャトルで逃げるにしても、うかつに動けばミサイルの追跡コースが狂って、標的になってしまう可能性が高い。
「我々SSPとしては、一人の人命も失いたくない。しかし人的被害を最小限にするため、SSP1名がMSに残るんだ。それが…」
そこで彼は声を詰まらせた。一息ついてから、その名前を口にした。
「…メグ・ホワイトだ」




