出会い1
皆様初めまして。空と申します。初の作品なので未熟な点がありますが、楽しんで読んで頂けるお話を目指して頑張ります。
今後の精進、励みのために、評価して頂けると大変嬉しく思います。よろしくお願いします。
「これが、MSかあ」
俺が見たのは、月の近くに浮かぶ、巨大な宇宙船だった。
しかも、これはただの宇宙船じゃない。中は何と、宇宙都市だ。
月の近くに建造されたこの宇宙ステーションには、お店や工場、住宅、図書館…色々揃っている。
ここは自治をしていて、ちゃんと市役所もある一つの都市なのだ。
確かに、都市にしてはかなり小さいし、学校は医科大学しかない。
でも世界の人達が集う場なので、スケールとしてはすごく大きい。
というのも、MSが造られた目的は、世界中、全ての人々が仲良く交流するユートピアを築くためだから。
俺、緒方 弥は、最先端の医学を学ぶため、必死で勉強してここの大学に入学した。
入試もただものじゃなかったけど、もう一つ、ここに入るには宇宙ステーションの入場資格を取得する試験を受けないといけない。
これに合格しないと、MSに一歩も踏みいれる事ができない。
そのために俺は、大学に入るまで死に物狂いで働いた。
合格するには、宇宙航行学の初期過程をマスターしなければならず、専門のスクールに通わなければならなかった。
スクールはアメリカにしかないため、渡航滞在費用、そして何より、学費…。家の財産では、間に合わない。
それで俺は、働きながら高校に通い、更にお金を作るのに1年浪人していたんだ。
そのせいで、MSに居る人間は限られている。
日本人も多くはない。
そしてこの大学に所属する日本人は、俺だけだった。
まだここは新しいから、2回生までしか居ないせいでもあるけど。
…やっぱり寂しい。
入学式の日が近づくのに不安さえ感じた。
展望室まで地球を見に行き、思いに耽る。MSの中で地球が見えるのはここだけだ。
不安なのは、ここが地球じゃないせいでもあると思う。
でも少なくとも地球を見ている間は、心が落ち着く。
漆黒の天に輝く碧青。
吸い込まれそうな…。美しい、綺麗、優美…?どの言葉でも、表す事なんてできない…
「おい、何寝てんだよ」
この声と同時に、後頭部に衝撃を感じて、俺は椅子から跳び上がりそうになった。なかなか目のピントが合わない。
「以上です。皆さん頑張って下さいね」
スピーカーから流れる澄んだ声。
続いて拍手の音。あまりに鳴り止まないその拍手に、つられて手を叩く。
それから隣を見る。きっとこいつが俺をぶったんだ!