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ハンカチの木  作者: Gardenia
番外編1
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S9 従兄妹会2

保坂の話を聞いて慎吾と昌紀はしばらく考えている様子だったが、

やがて慎吾が「保坂さん、具体的にもう考えていることがあるんじゃないですか?」と言い出した。

昌紀もうなずいている。


保坂は皆の顔を見て何か躊躇しているようだった。

昌紀が「瑠璃、お前わかってるよな。守秘義務のこと」と言うと、

「わかってるわよ。家では子供の頃から言われていることだもん」と瑠璃が拗ねたように答えた。


保坂はワインを一口飲み込んで、ゆっくりと話し出した。

「実は、オンラインで顧客や入金管理するプログラムを作っているんだ。

休みの手の空いた時だけなのでまだ完成はしていないんだけどね」


それを聞いた亜佐美たちは一瞬驚いたが、すぐに皆の質問が始まった。

特に慎吾は不動産業務に関しては自分の専門でもあるので、聞きたことがたくさんあるようだった。

「僕は不動産業は専門じゃないので、こういうのが欲しいとか使い勝手が悪いとか実際に意見を貰って仕上げていこうと思ってる」

保坂は亜佐美を見ながら話を続けた。


「不動産情報から始まって、顧客管理、入金と支払いの状況をリアルタイムで見られるもの。

毎月のデータさえ更新すれば、総勘定元帳を更新し、経費帳はもちろん内装工事や設備を新しくすればその原価償却計算も連動して行うようなものを考えている。

さらにはデータ更新保存の度にバックアップもとるようにする」

それを聞いた亜佐美は、「とっても便利そうね。ありがとう」とお礼を言った。


「どういたしまして。亜佐美さんの事務が短時間で済むようにしたいからね」

と保坂は微笑んだ。


慎吾のほうを見て、「新契約や更新契約、入金をオンラインで二条不動産のほうでデータを入れてもらえれば、亜佐美さんに更新報告をメールで届け、帳簿に全部自動で加算されていくものなんだ」と保坂が説明する。

慎吾は目を輝かせて、「それは便利そうだな。完成までに一度見せてもらえれば有難い」と言っている。

昌紀も「僕も見たいな、そのソフト」と言ったところ、

「まだデザインには取り掛かっていないけど、動作確認くらいはしてもらえるよ?見るかい?」と保坂が二人に言った。

「「それは是非!」」慎吾と昌紀が同時にハモったので、保坂は笑いながら二人を自室に案内した。


ダイニングに取り残された亜佐美と瑠璃は、顔を見合わせて苦笑するしかなかった。

「やれやれ仕様が無いわね。まるで新しい玩具を自慢げに見せてるようじゃないの」と亜佐美が言うと、

「実際に玩具じゃないの(笑)あの人たちにとってコンピューターなんて」と瑠璃もため息を突いている。

「その間に私達はDVDでも見ない?」亜佐美がそう勧めると、「うん良いね。でもDVDより観たいテレビ番組があるんだけど?」と瑠璃が言うので、一緒に観ようとテレビを点けた。





かなり時間が過ぎてから保坂たち3人がダイニングに戻ってきた。

飲みかけていたワイングラスを再び手に取り、亜佐美が酸化を防ぐためにつけていた栓を抜いてそれぞれのグラスに注いでいる。

「喉が渇いたよ」保坂はそう笑っていた。

慎吾が「あのプログラム、うちの会社でも使いたいよ」と保坂に言ったが、

「いや、あれは亜佐美さんに作っているものだからダメだ」と素気無く断られていた。

昌紀はそんなやりとりを見て笑っている。

亜佐美は従兄弟たちが保坂と仲良くなったようで嬉しく感じていた。


瑠璃と亜佐美が観ていたテレビの番組が終わるまで、保坂たちはダイニングテーブルで時折ワインを飲みながら話し込んでいた。

ようやく亜佐美たちがTVを消しソファーから立ち上がると、「何か食べるか?」と昌紀が声を掛けた。

「お腹空いたら何か作るけど?」と亜佐美が言うと、

「今日は亜佐美さん作らなくていいよ。お昼頑張ったんだから」と保坂が言った。

「僕が何か作るよ」と言うと冷蔵庫の中を見ている。


「マジ?」と驚いたように慎吾が保坂を見ていた。

「料理できるの?」

「え~~、保坂さんの手料理食べたい」と昌紀と瑠璃も口々に言いながら、保坂を興味深く見ている。

「誰かサラダ作れたら嬉しいんだけど」と保坂が遠慮がちに言うと、慎吾が「瑠璃、お前サラダ作れ!」と瑠璃に話を振った。


「ひえっ?私?」と瑠璃が目を丸くすると、すかさず昌紀が「サラダくらい作れるだろうが」と言ってから、「亜佐美ちゃん、冷蔵庫拝見するよ」と瑠璃と一緒に野菜の確認を始めた。

「亜佐美ちゃん、このタッパーに詰めてるのってお昼食べた残りでしょ?」と瑠璃が聞くので、

「そうだよ」と答えると、「じゃ、これも出して食べよう」と呟いて次々に冷蔵庫から出していた。

亜佐美は手持ち無沙汰になって、ダイニングテーブルに近づいて慎吾にワインを少し注いでもらった。


「やっぱり、美味しいわ」と言ってワインを飲む亜佐美に、慎吾が笑いながら「亜佐美ちゃんまで飲んだら、帰りどうするんだ?」と聞いた。

「あ、しまった。飲んじゃったよもう」亜佐美は笑って、

「泊まっていけばいいでしょ?」と言うと、「泊まっていいのか?」と言うので、

「もちろんよ。もう送っていけないわよ」と慎吾を見ながらもう一口ワインを飲んだ。


瑠璃は適当に出した大きなお皿に、レタスを敷き、亜佐美の作り置きの惣菜を乗せて、所々プチトマトや胡瓜などの生野菜で綺麗に飾ったものを作ってテーブルに置いた。








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