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君がいる街へ  作者: 芙美
3/16

 3 空想の鎧

 ずっと僕は何かになりたかった。

『何かって、何に?』

『……』

『…………』

 答えなんかあるはずもなかった。

 いつも妄想するのは何かになった、何かを手に入れた後の偉大なる僕であり、妄想する僕からその偉大なる僕までの道のりは全くの暗闇で、具体的に考えたり努力をしたことがなかった。

 成功すればなんでも良かった。

 いい加減だ。

 何になりたいかもわからず、何に対しても一つも努力しない。

 その僕がどうやって成功するというのだろう。

 このままで何かになることは出来ないのに、僕は能天気に空想を楽しんだ。

 ……いや、能天気ではなかったかもしれない。

 どこか焦りながら、切実に空想していた部分もあった。

 あの町を逃げ出した時と変わらず、妄想や空想に僕は逃げ続けていたのだ。つらい惨めな現実から。

 どこかでは疑っていたけれど、僕は何か出きるんだと本気で信じていた。なんて無邪気で無茶な思い込みだろう。

 しかし僕のその得体の知れない信念は、ずっと僕を救っていたのだ。

 それは友人すら持たない孤独な僕の心の支えであったし、苦しみから僕を守る鎧でもあった。

 鎧を外した生身の僕はとてもとても弱く、とても脆い。

 テレビゲームで敵にちょっと触れただけで死んでしまう主人公がいるだろう。あれが僕だ。

 きっと僕は鎧がなければ、生きていくことさえ出来なかった。

 鎧に包まれた僕は自分を守るためにいつでも怒り、生身の僕は鎧の中で小さく小さくなって、傷ついて震えながら泣いていた。

 そうして、どこに行っても、鎧が全てから僕を遠ざけた。


 僕は、ちょっと考え方を変えたり、努力をするだけで状況が変わるなんて、夢にも思っていなかったんだ。

 愚かだろう。


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