少年サッカー 第7話 短編版
十月下旬。横浜SCは港北FCとの練習試合に臨んだ。
村上コーチは選手を集め、新しい 4-2-3-1 のフォーメーションを告げる。
緊張しながらも、子どもたちの目は期待で輝いていた。
石川コーチ――つまり“お父さん”の自分は、この日ついに主審デビュー。
ホイッスル、時計、カードをポケットに入れ、キックオフの笛を吹く。
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一本目
横浜SCのキックオフ。
ピッチの中で選手たちと走るのは初めてで、息遣いや足音がこんなに近いとは思わなかった。
スローイン、ファール、攻防の応酬。
気づけば時計は21分。20分を過ぎている。慌てて笛を吹いた。
ベンチに戻ると村上コーチが優しく指摘する。
「ハーフタイムの笛は、攻撃が切れたタイミングでいいですよ」
ルールブックには書いていない“実戦の知恵”だった。
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二本目
ムラッチョに代わってリュージがセンターバックへ。
キックオフ直後、港北FCがまさかのロングシュート。
リュージがヘディングで返すかと思いきや――
怖くてよけてしまい、そのままゴールイン。
「リュージ、次はヘディングね!」
笑いが起きる。練習試合らしい、温かい空気だ。
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三本目
左ウイングに入ったナオヤが魅せる。
マオのキラーパスに追いつき、ボールを止めた…が、勢い余って自分がゴールラインを割ってしまう。
「ナオヤ、ボールと一緒に止まろうね!」
ベンチがどっと笑う。
続く守備ではマサトが顔面でシュートを止め、鼻血で交代。
仲間たちが薬箱を持って走る姿に、チームの温かさを感じた。
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四本目
ヒョーガに代わってソウがトップ下へ。
ロングパスの応酬に村上コーチが喝を入れる。
「雑になってるよ! もっとつないで!」
ワタルがドリブルで切り込み、ソウへパス。
ソウは左足でアウトにかけたシュートを放つ。
カーブしたボールは左スミへ吸い込まれた。
「横浜SCのゴール!」
これぞ“左のファンタジスタ”。
試合は 1対1 のまま終了。
自分の初主審も、なんとか無事に終わった。
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夜の反省会
家に帰り、ユースケと晩ご飯を食べながら語り合う。
「初主審、どうだった?」
「まあ、よかったんじゃない。ケチもつかなかったし」
ソウのゴール、ユースケのサイド攻撃、仲間の連携。
父として、コーチとして、審判として――
いろんな視点でサッカーを見ると、楽しさが何倍にも広がる。
“続けられそうだな”と思ったが、現実はそう簡単ではない。
それでも今日の試合は、確かに一歩前へ進んだ日だった。
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