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校外学習当日。
天気はよくて、街並みも思っていたより綺麗で。
気づけば、小田ちゃんとも谷さんとも自然に話せるようになっていた。
「え、それ澄っぽい!」
「なにそれ〜」
六人で笑う。
山崎は写真を撮るのがうまくて、気づけばスマホの中が少しずつ増えていく。
「昼どうする?」
「映えそうなとこ調べる?」
小田ちゃんがスマホを見せる。
「ここよくない?」
白壁の店内、窓際の席。
「決まりだな」
山崎が言って、みんなでその店に入った。
「何名様ですか〜?」
「六名です」
「少々お待ちください〜ご案内しますね〜」
店内は少し混んでいる。
パーテーションの向こうから、賑やかな声が聞こえた。
「いや!まじで!!恒一と美玲ちゃんってお似合いだよなぁ〜!!」
聞き覚えのある声。
川端。
え、と澄の心臓が跳ねる。
「えーと、白石?さんより早川のが普通に可愛いしな笑」
坂本の大きな声。
「いやいや失礼だから笑」
美玲の、少し笑いを含んだ声。
「美玲より普通に彼女ちゃんのが可愛いでしょ〜?!」
「そんなことありえないでしょ」
川端の声が重なる。
澄の指先が冷える。
一年間、特別なことはなかった。
でも、ずっと付き合っているのは事実だ。
みんな知っているはずなのに。
吉田くんが困った顔で視線を泳がせている。
小田ちゃんが、そっと澄の袖を握る。
今日の道中、「どうやって付き合ったの?」と聞かれたばかりだった。
――さいあく。
空気が、変わる。
「お待たせ致しました〜こちらです」
店員の明るい声。
澄は一瞬、ここを出たいと思った。
でも、自分たちの、いや、澄の都合で案内された席を出るのは忍びない。
「……ほら、入ろ」
小さく言って、みんなを促す。
席についた瞬間。
パーテーションの向こうから立ち上がる人影。
川端の顔が見えた。
一瞬、ぎょっとした顔。
その奥に。
恒一。
え。
ここに、いたの?
店員がメニューとお冷を置く。
向こうは出るらしい。
伝票を持って席を立つ。
澄たちのテーブルの横を通る。
美玲が立ち止まる。
「ごめんね、白石ちゃん。川端に悪気は無いんだよね」
初めて、直接かけられる声。
柔らかくて、にこやかで。
でも、一方的に名前を知っている距離感。
澄は、うまく笑えているのか分からなかった。
「あ、うん……全然」
恒一は、何も言わない。
目も合わせない。
ただ通り過ぎる。
その背中が、遠い。
川端と一瞬目が合う。
「……女子、こえ〜……笑」
小さく、でも聞こえる声。
澄はうつむいた。
「……なんだあれ、感じ悪」
低い声。
谷さんだった。
山崎は、何も言わない。
けれど。
澄の前にさりげなく水を置いた。
「お腹すいたね」
いつも通りの声。
深く触れない。
澄は、こくりとうなずいた。
楽しかったはずの昼。
テーブルの上のメニューが、やけに遠く感じた。




