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その日も、本当はカフェで待つ予定だった。
けれど読んでいた小説がもうすぐ終わりそうで、澄は少し足を伸ばすことにした。
高校の最寄り駅から少し離れた場所にある、新しい図書館。
学校の図書室よりも蔵書が新しくて、静かで、落ち着く。
それに――
ちょうどいい。
野球部と顔を合わせずに済むから。
恒一に「今日は図書館にいるね」とLINEを送ると、すぐに返事が来た。
――そっち行く。
迎えに来る、ということらしい。
少しだけうれしくなる。
「終わった」
と連絡が来たのは、それからしばらくしてからだった。
澄は本を閉じ、貸し出し手続きを済ませて外に出る。
夕方の光がやわらかい。
道路を挟んだ向かい側のハンバーガーチェーン店のドアが開く。
出てきたのは、同じ高校の制服を着た二人。
――あ。
山崎 陽翔と、久我 千景だった。
どちらかと言えば静かめの久我と、明るい山崎の組み合わせは少し意外に思える。
でも、不思議としっくりくる。
仲良いのかな?
陽翔がこちらに気づき、目を見開く。
大きく手を振り、名前を呼ぼうと口元に手を持っていく。
その瞬間。
「澄、行くぞ」
すぐ近くから聞こえた声に、はっとして横を向く。
「あ、恒一くん。おつかれさま」
もう一度、向かい側に視線を流す。
山崎に小さくぺこっと頭を下げると、向こうの二人も軽く会釈を返した。
そのまま、恒一と並んで歩き出す。
少しの沈黙。
「……仲いいのか?」
不意に、恒一が言った。
「んー? 同じクラスなんだよ、二人とも」
恒一は、ほんの少しだけ眉を寄せる。
「……あんま仲良くすんなよ」
「え?」
予想外の言葉に、澄は瞬きをする。
「なんか俺、ああいうチャラチャラしていい加減なやつ嫌いだ。いい噂聞かないし」
直接何かされたわけでもないのに。
棘のある声。
――嫉妬、かな。
そう思うと、少しだけ胸がくすぐったくなる。
「普通にクラスメイトってだけだよ。今度の校外学習で同じグループになったから、手振ってくれたんだと思う」
恒一は、ふっと視線を逸らす。
「……ならいいけど」
それ以上は何も言わない。
さっきの言い方、ちょっとだけ嫌だったな、と一瞬思う。
でも。
自分のことで、あんなふうに言ってくれるのは。
――愛されてるのかもしれない。
澄は深く考えず、恒一の歩幅に合わせて歩いた。
夕方の風が、少しだけ冷たい。
あっ、1話1話の長さはバラバラタイプの人間です




