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「へえ、白石さんって……確かに校外学習のレポートの時も字きれいだったね」
久我くんが思い出すように言った。
「澄、書道部だもんね」
彩音ちゃんが言う。
そう、実はバイトばかりしているように見える澄だが、書道部に所属している。
と言っても、月に一回行くか行かないかだ。
小学生の頃から習い事で続けていた書道は、自分ではさほど意識していなかったが出来が良いらしく、
中学の頃は書道教室からの参加で、いくつか賞をもらっている。
高校でも細々続けていくつもりだったが、
入学してすぐ、籍だけでも書道部に入ってくれと、面識のない顧問から頼み込まれて入部した。
もともと書道部は週一回ほどしか活動がなく、基本的に習っていた教室で書く澄は、部室にはほとんど顔を出していない。
「月一回も行ってないけどね」
野球部などの運動部と比べ、そんなに熱心に活動しているわけでもないので、少し苦笑いしながら言う。
「えっ、書道部?」
久我くんが意外そうに声を出した。
少し考えるようにしてから、
「…ハルも書道部だけどね」
さらっと言う。
「え?」
思わず澄が固まる。
「そうなの??!」
澄が陽翔くんを見る。
陽翔くんは「やめろよ」という顔をして久我くんを見る。
「言うなって」
「別に隠してるわけじゃないだろ」
「いや、そうだけどさ……」
頭をかきながら少し照れたように笑う。
「実は、澄ちゃんが書道部なの知ってたんだよね」
「え?」
「顧問と先輩から聞いてて」
陽翔くんは、字が綺麗になりたくて書道部に入ったらしく、ちゃんと週一で活動しているらしい。
「自分の知らないところで一方的に知られてるのって嫌かなって思ってさ……」
「えー、むしろ私のほうが申し訳なくて」
澄は慌てて言う。
「いつも参加しないのに、コンクールだけ部の名前で出してるから」
陽翔くんはすぐに首を振った。
「そんなことないよ」
「二個上の先輩はもう卒業しちゃったけど、今いる先輩も一緒に書きたいし話したいって言ってたよ」
顧問に是非是非と連れて行かれた部室で、キョトンと目を丸くしていた当時の三年生が印象深い。
顧問はノリノリだったが、他の部員に申し訳なくて足が遠のいていた。
「そっか……じゃあ今度部活行こうかな」
「うん!一緒に行こう!」
陽翔くんは本当に嬉しそうに笑った。
⸻
帰り道。
寄るところがあるという久我くんと陽翔くんと別れて、彩音ちゃんと駅まで歩く。
「山崎、書道部だったんだね」
「ね、びっくりした」
一年同じ部活で気付かなかったんだ……。
どれだけ私が真面目に行っていないかがよく分かる。
「バイトも同じなんでしょ」
「そうなの!」
澄は思わず笑う。
「そっちもびっくりしちゃった」
陽翔くんとは偶然が多い。
「ふーん……」
彩音ちゃんが横目で澄を見る。
「山崎いいヤツだし、澄とお似合いだと思うけど」
「アリ?ナシ?」
「ちょっと!?そんな私なんか陽翔くんとお似合いなわけないよ〜!」
彩音ちゃんのいきなりすぎる質問にどぎまぎする。
「それに陽翔くんみたいなかっこいい人に対してアリナシとか!私が向こうからしたらナシだよ!」
彩音ちゃんは静かに言った。
「澄は“なんか”じゃないよ」
「……うん」
澄は少し笑ってから、
ぽつりと続ける。
「それに当分、恋愛とかはいいかなぁ」
「そっか」
夕方の風が、少しだけ涼しかった。




