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太陽くんは、男の子  作者: 浅華
春の終わり

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2/24



数日後のショートホームルーム。


「来月の校外学習な。二年最初のオリエンテーションみたいなもんだ。グループで散策するから、今から決めるぞー」


担任の木村先生がのんびり言う。


本当は自由に決めるはずだったけれど、なかなかまとまらない。


「もう先生が決めるぞー。文句なしなー」


教室から不満の声が上がる。


澄は静かに前を向いたまま、名前が呼ばれるのを待つ。


同じグループになったのは、

一年のとき同じクラスだった女子と、

初めましての女子が一人

そして初めましての男子三人




その中に。


「えー! あたし陽翔と一緒がよかったー!」


いつもクラスの中心にいる女の子の声が響く。


ざわっと空気が揺れ、教室が笑いに包まれた。


澄は思わず、そちらをちらりと見る。


山崎 陽翔(やまさき はると)

一年のころから、女子の間で少しだけ噂になっていた。


イケメンで

明るくて

軽いらしい…?


ちゃんと話したことは、ない。


「よろしく」



グループごとに集まると、陽翔は気軽に手を挙げて笑った。



「とりあえずLINE交換しよ。俺、グループ作るね」

スマホを差し出しながら、ふっと目が合う。


山崎は一瞬、目をぱちっとさせたあと、にかっと笑った


思っていたより、やわらかい笑い方だった


「今日はもう解散!帰れ帰れー」


担任の声で教室が一斉に動き出す。


関わったことのない人たちばかりだけれど、思ったより話しやすそうで、澄は少し安心した。









今日の放課後はバイトの日。


定期圏内の大きな駅にある飲食店。

昼はカフェ、夜はダイニングバーになる、落ち着いた雰囲気の店だ。


親友のなっちゃん――藤原奈津子のお兄さんの紹介で、高校一年のときから働いている。


「校外学習どこ行くの?」


カウンター越しになっちゃんが聞く。


「隣の県の、散策コースがあるところ。自由行動多めらしい」


「へえ、楽しそう」



そんな話をしていると

大学生の先輩が思い出したように

「あ、そうそう。俺、今年から就活で出勤減るんだよね」


「えー、ほんとですか?」


「そろそろバイト募集かなあ」


店長の声が奥から飛んでくる。


澄はグラスを拭きながら、なんとなくその言葉を聞いていた。








閉店後。


制服に着替えながら、なっちゃんが横目で言う。


「澄ちゃん、明日シフト入ってなかったよね?」


「うん」


「ってことは、明日も武田待つの?」


「待ってないよ」


「待ってるじゃん」


澄は苦笑する。


「楽しいからいいの」


なっちゃんは少しだけ黙る。


「最近さ……武田と仲いいよね」


澄は少しだけ考え、照れたように笑う。


「うん、いいよ」


前よりも、ちゃんと好きだと思う。

部活帰りに会えるのも、帰り道も、キスも。


「……ふーん」


なっちゃんは、ふっと息を吐いた。


「私はあんまり好きじゃないけどね、武田のこと」


「うん」


知っている。


なっちゃんは前から武田 恒一を嫌っている


また、それが自分を思っての言葉だということも。




理由は、なんとなく分かっている。


中学のころのことを、なっちゃんはずっと気にしていた







あのときの、あの空気。


「でも私は気にしてないよ」


澄はそう言う。


本当に、今はもう。


なっちゃんは何も言わず、ロッカーを閉めた。


帰り道、夜風が少し冷たい。


「あーあ!武田に澄ちゃん取られた気分だー!」


「なにそれ」


二人でケラケラ笑いながら電車に乗る。


けれど、なっちゃんはときどき眉間にきゅっと皺を寄せる。


武田の名前が出るたびに、ほんの少しだけ。









その理由を、澄は思い出していた。




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