18
陽翔くんのおかげで、少しだけ空気が軽くなった教室。
そのあとすぐ先生が来て、ざわめきは自然と消えていった。
それぞれ席に着く。
授業が始まる。
一昨日と何も変わらないように、日常が始まった。
⸻
昼休み。
彩音と二人でご飯を食べていると、
「澄ちゃん」
小田ちゃんがやってきた。
珍しい。
いつもはソフトボール部の子たちと食べているのに。
「一緒にいい?」
「もちろん」
席に座ると、小田ちゃんは少しだけ言いにくそうな顔をした。
「ごめん澄ちゃん……病み上がりに言うことじゃないんだけど」
そう言って、彩音にも目を向ける。
「谷さんもごめんね」
少し迷うようにしてから、続けた。
「もう広まってしまってて……」
「他から聞くより、いいかなと思って」
あ。
澄はすぐに分かった。
――恒一くん。
いや。
武田くん、のことだ。
⸻
小田がその話を知ったのは、昨日だった。
澄ちゃんが休んだ日。
珍しいな、と思っていた。
昼休み、トイレに行こうと廊下に出たとき。
「えー!!!おめでとうじゃーん」
聞こえてきた大きな声。
うちのクラスの野村さんだった。
「ありがとう」
答えたのは、早川美玲。
その隣には、
澄ちゃんの彼氏のはずの、武田くん。
腕を絡めていた。
野村さんって、そういえば一年のとき早川さんと同じクラスで、同じグループだった気がする。
野球部の騒がしいやつ――名前はよく知らないけど。
「お似合いだろー!」とか、そんな感じで騒いでいた。
校内で大騒ぎするわけではない。
でも
澄ちゃんと武田くんが付き合っていたのは、みんな知っている。
え?
浮気?
それとも、もう乗り換えた?
早川さんのアタックもどうかと思うけど。
それよりも。
ほんの少し前まで澄ちゃんと付き合っていたはずの武田くん。
そして全部知ってるはずの野球部の2年たち
その態度に、なんだか嫌な気持ちになった。
⸻
放課後。
その頃にはもう、
野球部の一大カップルの噂は、学年中に広まっていた
小田が所属しているソフトボール部は、野球部と同じグラウンドを使う。
だから、野球部の話題はよく出る。
「結局、野球部のエースも女は顔で選ぶのかー」
「よく分かんないけど、早川さん教室で元カノと修羅場った?って川端がめっちゃ騒いでたわ」
「あ!校外学習のやつじゃない?」
小田は、あまり会話に入らないようにしていた。
澄ちゃんから直接話を聞いたわけじゃない。
でも。
思わず口を挟んでしまった。
「校外学習は澄ちゃん全く悪くないよ……」
「え、そうなの?」
「小田っち、元カノちゃんと同じクラスか」
小田は、あの日のことを簡単に説明した。
「えぐー」
「早川やばすぎるんだけど」
部室がざわつく。
でも。
一人の部員が言った。
「でもさ、私聞いたの違うやつなんだよね……」
「え?」
その子は少し迷うように続けた。
「早川美玲が教室で話してたのはさ」
「なんか……武田に振られたのに、元カノがストーカーした、みたいな?」
「え?」
小田は思わず聞き返す。
「ちゃんと全部聞いたわけじゃないんだけどね?」
「駅前で早川が武田といたら」
「元カノが弟使って邪魔しに来た、とか」
「子供に声かけられて武田が気まずい顔してた、みたいな」
さらに続く。
「で、そのあと野球部の奴らの言い分的には」
「待ち伏せ?駅で?」
「カフェで?」
「なんか知らないけど未練がましく待ってたとか、そんな感じ」
小田は、言葉を失った。
それじゃまるで。
澄ちゃんが――
鬱回続いてごめんねー((`-д-;)




