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朝。
澄はスマホを開いて、彩音にLINEを送った。
「今日は行くよ」
送信してから、少しだけため息をつく。
でもやっぱり。
思い出すと、行きたくない気持ちも出てきてしまう。
彩音に行くよと言った手前、今日もズル休みはしたくない。
でも……。
迷っているうちに、時間はどんどん過ぎていった。
気づけば、もう家を出ないと遅刻しそうな時間だった。
⸻
なんとなくソワソワしながら登校する。
別に誰かに見張られているわけでもないのに、落ち着かない。
日差しが少し強い。
――そろそろ日焼け止めか、日傘用意しなきゃな……
そんなことをぼんやり考えているうちに、学校が見えてきた。
予鈴の五分前。
なんとか間に合った。
教室の扉を開ける。
その瞬間。
なんとなく空気がざわっとした。
……なに?
澄は何も言わず、自分の席へ向かう。
机の横にカバンを置いたとき。
「体調大丈夫?」
彩音がすぐ近くに来ていた。
「うん……」
そう答えた瞬間。
遠くから、吹き出すような笑い声が聞こえた。
「絶対体調じゃないって」
彩音の顔が一瞬で変わる。
きっと振り返る。
――あ、止めなきゃ。
そう思った瞬間。
「おはよう!!体調大丈夫!?」
元気な声が教室に響いた。
陽翔だった。
その声に、さっきまでこちらを見ていなかった子たちまで振り向く。
「澄ちゃんまじで無理するなよ〜!?」
「あ、うん」
思わず返事してしまう。
彩音は少しだけムスッとした顔で隣に立っていた。
陽翔はポケットから何かを取り出す。
「よし!頑張って来た澄ちゃんに、ちょっと冷めちゃったけど俺のミルクティーを進呈しよう!!」
「え、いいの?」
「もちろん!」
そこに小田も混ざる。
「あ!じゃあ私チョコレート持ってるからあげるね!」
「え、そんな……」
さらに、久我が少し離れたところから近づいてきた。
「……じゃあ自分からも……」
少し嫌そうな顔で、アニメのパッケージのウエハースを差し出す。
「……中のカードだけ後でちょうだい」
「おーいー」
陽翔が久我を睨む。
久我は小さく息をついた。
「……いいよ。カードもあげるよ」
思わず、澄は笑ってしまった。
「ありがとう。もう体は元気になったよ」
言いながら、ミルクティーを両手で持つ。
陽翔くんは目を合わせると一瞬ニヤッと悪い顔をした。
ミルクティーは
ほんとに、少しぬるい
でも。
机の影で、彩音がそっと手を握っていた。
澄はその手を、少しだけ握り返す。
大丈夫。
たぶん、まだ大丈夫。
陽翔くんがくれたミルクティーは、
澄の気持ちをほんの少しだけ、あたためた。




