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太陽くんは、男の子  作者: 浅華
春の終わり

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なっちゃんと話したあと、澄はようやく少しだけ落ち着いていた。


泣きすぎて頭がぼんやりする。


それでも、胸の奥の痛みは消えない。


時間はもう遅くなっていた。


インターホンが鳴る。


「すみません、なつを迎えに来ました」


低い声。


玄関にいたのは、なっちゃんの兄の彰人だった。


澄のバイト先の先輩でもある。


「遅くまでなっちゃんお借りしました……」


澄が頭を下げると、彰人は優しく笑った。

「澄ちゃん、大丈夫?」


「……はい」

小さくうなずく。


なっちゃんは靴を履きながら、振り返った。

「また明日電話するから」


「うん」


「一人で抱え込まないで」

そう言って、なっちゃんは帰っていった。


玄関のドアが閉まる音、家の中が静かになる。



――好きだった。


一年かけて、ゆっくり育った気持ち。


最初は戸惑っていたはずなのに。


気づけば、ちゃんと好きになっていた。


だから。


こんなに苦しい。


このままじゃだめだ。


澄はスマホを手に取る

震える指でLINEを開く

恒一とのトーク画面


少しだけ迷ってから、打ち込む。


「話がある」


送信。


数秒後。


既読がついた。


そしてすぐに返信が来た。

「わかった」









それだけだった。












翌日。


澄はカフェには行かなかった。


なんとなく、あの席に座る気になれなかった。


駅前をゆっくり歩く。


恒一を待つ間。


心の中で、何度も言葉を作る。


本当は、まだ好きだ。

離れたくない。


でも。


恒一の気持ちは、もうここにはない。


だったら。

せめて、自分から終わらせよう。


今日、私から別れを言う。


胸が痛む。

悲しい。


それでも。


他の人とお似合いだなんて、笑われる関係を続けるのは、もう耐えられない。


澄は足を止めた。


駅前のドラッグストア。


外の棚に並ぶ日焼け止め。


ぼんやりとそれを見ていた。


そのとき。


「澄」


声。


心臓が大きく跳ねる。


振り向く。


「恒一くん……」

言葉が少し詰まる。


「移動、する?」


「いや、いい」

即答だった。


その言葉はまるで、


もう二人でどこかに行くことはない、と言われたようで。


胸がぎゅっと締めつけられる。


それでも、澄は口を開いた。

「あの……ね、」


言わなきゃ。


そう思った瞬間。

「澄、別れよう」


言葉が、被さった。


え?


思考が止まる。


恒一は続けた。


「俺、お前とはやっていけない」


淡々とした声。


「お前さ、俺の言うこと全然聞かないし」


「男とベラベラ喋るし」


「正直、お前が彼女で恥ずかしい」


言葉が、次々に押し寄せる。


澄は何も言えない。

自分が悪いのかもしれない。


そんな気がしてくる。


恒一は、ふと澄のカバンを見た。


そこに揺れる、小さなキーホルダー。


「あとさ」


冷たい声。


「そのキーホルダー付けるのやめてくれないか」


澄の呼吸が止まる。


「俺、もう捨てたし」


言葉が刺さる。


「お前も未練がましく付けてないで、捨ててくれ」


何も返せない。


言葉が出てこない。


恒一はそれ以上何も言わなかった。


「じゃ」


それだけ言って、背を向ける。


澄の返事も待たず。


そのまま駅の方へ歩いていった。


キーホルダーが、小さく揺れる。


澄はただ、そこに立っていた。











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