十一話 最低基準と、“お互い様”の握手
テントの布越しに、灰の谷の風が低く鳴っていた。
灰と焦げた土の匂いがほんのり混じった空気の中で、俺はできるだけいつもの声で口を開く。
「まず、こちらから質問させていただきます」
向かいに座るギルゼンが、静かに頷いた。
「どうぞ。我々としても、“人間側の基準”を知りたいと思っています」
「では――捕虜の一日に関して、なるべく具体的に教えてください」
俺は用意してきた質問票を見ずに、頭の中で並べた順番どおりに言葉を出していく。
「起床時刻、就寝時刻。
作業時間と休息時間の配分。
食事の回数と量。
それから、“夜間にどれだけ叩き起こされるか”」
最後の一文に、軍務省の将軍が小さく咳払いをした。
だが、ギルゼンは眉ひとつ動かさずに答えた。
「まず、前提を共有しておきたいのですが」
彼は手元の書類を一度閉じ、こちらをまっすぐに見る。
「我々が現在保有している人間側の捕虜は、“前線で捕らえた兵士”が中心です。
つまり、“元々戦場で過重な勤務にさらされていた者たち”だということを踏まえておいていただきたい」
「その前提には、深く同意します」
俺は素直に頷いた。
「だからこそ、“今さら少し休ませたところで”という言い訳も、簡単に出てくるはずですね」
「ええ。現場の指揮官からは、そうした声も上がっております」
ギルゼンはあっさり認めた。
「しかし、“今さらだからこそ、せめて今から”と考える者も、我々の部署には多い」
そこで、彼はようやく書類を開いた。
「標準的な一日の流れは、このようになっています」
ギルゼンが読み上げた内容を、俺は録札に刻みながら聞いた。
日の出とともに起床。
簡素な点呼と、朝食代わりの薄い粥。
そのあと二刻の軽作業――主に水運びや、壕の補修。
一刻の休憩。
昼食。
さらに二〜三刻の作業。
夕食。
夜間は、基本的に拘束区域内での休息。
「“基本的に”?」
外務局のクラウスが食いつく。
「“魔獣の暴走”や“奇襲の危険”がある場合には、夜間点呼や臨時作業が入ります。
ただし、その場合は翌日の作業量を減らすよう通達しています」
「“通達しています”と」
俺はあえて言葉を繰り返す。
「その通達が実際に守られている割合、どれくらいだと把握していますか?」
ギルゼンが、ほんの一瞬だけ目を伏せた。
……ああ、この間が嫌な予感しかしない。
「――監査課が巡回した拠点では、六割から七割程度かと」
「残りの三〜四割は?」
「“戦局の都合により、遵守できなかった”という報告になっています」
その言い回しが、あまりにも“こちら側と同じ”で、思わず苦笑が漏れそうになる。
(“戦局の都合”ね。こっちは“国庫の都合”ってよく言います)
喉まで出かかった言葉を飲み込み、代わりに別の問いを重ねる。
「では、“最低限、守らせている線”はどこです?」
「“一日に八刻以上の連続作業をさせないこと”、および“食事を一日二回は出すこと”」
ギルゼンは淡々と答えた。
「これは、“兵士に対して課している基準”と同じです。捕虜であれ、“死ぬまで使い潰す”ようなやり方は長期的に見て得策ではない」
「“得策ではない”――その認識を持っているなら、話が早い」
俺は心底ほっとした。
少なくとも目の前の男は、“捕虜は全部石ころだ”というタイプではない。
「人間側の現状を、お聞かせ願えますか」
ギルゼンが逆に問いかけてくる。
「捕虜の収容場所、拘束時間、作業内容。
それから、“どこまでが貴国における最低基準”なのか」
「隠し立てするつもりはありません。――こちらも、紙を出しますか」
俺は荷物から一枚の資料を抜き出した。
王都近郊および幾つかの砦に設けられた捕虜収容施設の“標準運用表”。
捕虜の一日の流れ、食事、作業、休息について、労務局が監査した数値が並んでいる。
「起床は日の出から半刻後。就寝はそれから十二刻以内。
食事は一日三回。ただし、戦時の物資状況によっては量が減ることがある。
作業は最大で一日五刻。
“戦闘を命じないこと”と、“夜間に不必要に叩き起こさないこと”を、王都近郊の施設には義務付けています」
魔族側の随員たちから、小さなどよめきが漏れた。
ギルゼンが目を細める。
「一日三度の食事と、五刻以内の作業……。
それは、“王都近くの収容施設”に限られる基準ですか?」
「ええ。前線を兼ねる砦では、もっと条件が悪いところもあります」
そこはあえて隠さない。
「ただし、“捕虜に戦闘をさせない”“監視のため以外に夜間点呼を乱発しない”という基準は、前線でも通達済みです。
“守られている割合”については、そちらと同じくらい――六、七割程度でしょう」
「……正直ですね」
「お互い様でしょう」
あえて肩の力を抜いてそう返すと、ギルゼンが小さく笑った。
*
しばらくは、ほとんど“報告書を読み上げる会”みたいな時間が続いた。
人間側の収容施設での病人の割合。
魔王軍側での過労による死亡例の数。
捕虜が自発的に申し出た作業と、強制された作業の割合。
数字のやり取りをしているうちに、変な緊張は少しずつ薄れていく。
(――不思議なもんだな)
敵味方のはずなのに、“現場が疲弊している”という一点については、完全に同じ言語で通じ合っている。
俺たちは今、“お互いのブラック自慢”をしているわけではない。
“どれぐらいマシにできているか”“どこがまだダメか”を、数字で突き合わせているだけだ。
「では、ここからは“最低基準”について、提案をしたい」
クラウスが軽く咳払いをし、会談の方向を本題へと戻した。
「人間側としては、以下の点を“両陣営共通の基準”とすることを提案します」
彼が読み上げる。
「一、“捕虜に対し、戦闘行為を強制しないこと”。
二、“一日二回以上の食事を与えること”。
三、“病人・負傷者に対し、適切な治療を施すこと”。
四、“過度の暴力や拷問を禁止すること”。」
言葉の一つひとつが、会談テントの空気をきゅっと締める。
ギルゼンは表情を変えずに聞いていたが、その横にいた魔族の将官が眉をひそめた。
「“過度の暴力”とは?」
「“捕虜の従順さを保つための最低限の強制手段”までは、こちらも目をつぶる……と言ったら聞こえは悪いが」
クラウスが苦い顔で続ける。
「鞭打ちや粗暴な言葉が“一切ない世界”を、今ここで作ろうとは思っていない。ただ、“見せしめの虐殺”や“快楽としての拷問”といった行為は、互いに禁じようと言っている」
その言葉には、教会の神官も静かに頷いた。
「両陣営とも、“報復のための残虐行為”を重ねれば、いずれ誰も捕虜を取らなくなります。
それは、戦の終わりを遠ざけるだけです」
ギルゼンは少しだけ視線を落とし、それからこちらを見た。
「“戦闘行為の禁止”と“一日二回の食事”、それから“病人・負傷者への治療”については、我々としても異論はありません。
実際、兵站局の通達でも、同様の基準は既に盛り込まれています」
「“拷問の禁止”は?」
「……“完全な禁止”という文言には、上が抵抗するでしょう」
ギルゼンは慎重に言葉を選んだ。
「ただ、“誇示的な残虐行為の禁止”および、“捕虜の身体能力を著しく損なう暴力行為の抑制”という形ならば、検討可能です」
「言い回しが見事に官僚ですね」
思わず漏れたつぶやきに、ギルゼンがわずかに肩を揺らした。
「そちらもでしょう?」
「ええ、“過度の暴力”という曖昧な言葉を使っている時点で、人のことは言えません」
お互いの“役所語”がぶつかり合う中で、外務局と魔王軍の随員たちが、細かい文言を詰めていく。
俺の役目は、そこで“実務的に守れるラインかどうか”をチェックすることだ。
(ここで高すぎる理想を掲げても、現場は守らない。
低すぎる基準に妥協すれば、“結局何も変わらなかった”で終わる)
紙の端を指で撫でながら、俺は一つひとつの文言を頭の中で現場に落としていく。
「――“作業時間の上限”についても、触れておきたいのですが」
休憩に入りかけたところで、俺はあえてもう一つ口を開いた。
クラウスが驚いた顔をしてこちらを見る。
事前の質問票には、“作業時間上限”は“聞けたら最高”の項目に分類されていたからだ。
「捕虜を単純労働に使うこと自体を、ここで全面的に否定するつもりはありません。
ただ、“一日にどこまで働かせていいか”という線は、互いに共有しておいたほうがいい」
ギルゼンが、少しだけ興味深そうに首を傾げた。
「人間側の“線”は?」
「“長くても一日六刻まで”。
本音を言えば、“五刻まで”にしたいですが、前線施設を考えると、今すぐは難しい」
嘘はつかない。ただ、自分たちの課題も含めて正直に言う。
「そちらは?」
「我々の通達では、“八刻を超えないように”となっています」
「……そちらのほうが、二刻分余計に働かせているわけですね」
「そうなります」
ギルゼンは淡々と認めた。
「ただし、“魔力炉周辺”や“死霊術の実験場”など、“精神に過負荷がかかる現場”については、既に“連続二刻以上の勤務をさせないこと”と定めてあります」
「魔力炉の件は、現場監査のメモにもありました」
「ええ。あなた方の監査官が、前線拠点を視察したという報告は、こちらにも上がっていますよ」
ギルゼンがふっと笑った。
「“人間側の労務局が監査に来た”と聞いて、“こちらの監査課にも何か言ってくるだろう”と、上がざわついていました」
「それは初耳ですね……」
俺の苦い顔を見て、ギルゼンの笑みが少しだけ深くなった。
「――作業時間の上限については、“捕虜については六刻までとする”という案はいかがでしょうか」
その提案に、テント内の視線が一斉にギルゼンへ向いた。
「“我々の基準”から見れば緩い。
しかし、“人間側の基準”と合わせることで、“捕虜については両陣営で同じ扱いにする”という建前が作れる」
「“捕らえられた場所によって、一日に働く時刻が変わる”という事態を避けられるわけですね」
俺は、心の底から頷いた。
「それは、労務局としても歓迎したい。
“どこに捕まっても、一日に六刻以上働かされない”と分かっていれば、前線の兵士たちの恐怖も、多少は和らぐかもしれません」
軍務省の将軍が、少し複雑そうな顔をした。
「“捕虜になることを前提にする”ような言い方はどうかと思うが……」
「“捕虜になっても地獄だ”と思い込んでいる兵士ほど、“無理な突撃”をして死にますよ」
俺は正面から言った。
「“捕虜になっても命までは取られない”と思っているほうが、“一度退いて態勢を立て直す”という判断がしやすくなる。
それは結果として、我々の側にとっても戦力の温存になります」
ギルゼンが、小さく頷いた。
「同意見です。
“逃げ場があること”を知っているほうが、長く戦える」
“働き方”の話をしているはずなのに、いつの間にか“死に方”の話になっている。
それでも、ここで線を引けるなら、引いておくべきだ。
*
会談は、休憩を挟みつつ、半日近く続いた。
最後にまとめられた条項は、完璧とは程遠い。
それでも、“何もなかった昨日”よりは、確実にマシになっている。
戦闘への強制の禁止。
食事二回以上の保障。
病人への治療。
見せしめ的残虐行為の禁止。
捕虜の作業時間を一日六刻までに抑える努力義務。
“努力義務”という言葉がついたあたりに、外務局と魔族側の官僚たちの苦心がにじんでいた。
(まあ、“努力義務”から始めるしかないよな)
当直表の赤線だって、“明日から完璧運用”なんて無理だ。
まずは線を引き、そこから少しずつ近づけていくしかない。
「――本日の会談は、以上とします」
教会の神官が締めの言葉を述べ、両陣営の代表が立ち上がる。
そのとき。
「レオン・グラハム殿」
ギルゼンが、小さく手を挙げた。
「先ほどお願いしていた“個人的な意見交換”、少しだけ時間をいただけますか」
「もちろん。こちらも聞きたいことが山ほどあります」
クラウスが時計をちらりと見て、「三十分だけですよ」と釘を刺す。
その制限時間を胸に刻みつつ、俺はギルゼンと並んで会談テントの脇に設けられた小さな控えスペースへ移動した。
*
テントの布一枚隔てた向こうでは、護衛たちの足音と、灰の谷を渡る風の音が混じり合っている。
簡素な折りたたみ椅子に腰を下ろすと、ギルゼンが軽く息を吐いた。
「……思っていた以上に、“まともな話”になりましたね」
「正直、もっとお互いの上司が怒鳴り合う場面になるかと覚悟してました」
「あなたのところの軍務省の将軍、最後のほうはずいぶん疲れた顔をしていましたよ」
「そちらの将官も、“労務署”の話が出るたびに渋い顔をしてましたけどね」
二人して苦笑する。
ギルゼンが、ふと真顔に戻った。
「一つ、率直に伺いたい」
「どうぞ」
「あなた方の国で、“勇者”はどの部署の管轄なのです?」
来たか、という感じだった。
「名目上は“王直属”。実務的には軍務省と教会、それに労務局がそれぞれ口を出している状態です」
「似ていますね」
ギルゼンは薄く笑う。
「こちらも、“魔王直属”でありながら、実際には兵站局と戦略局、それに宗教部門がそれぞれ“自分が正しい”と言い張っている」
「宗教部門……そちらにも、あるんですね」
「ええ。“魔王の火”を祀る祭司たちです」
ギルゼンは肩をすくめた。
「彼らは、“命を燃やし尽くして戦うことこそ栄誉”だと言う。
兵站局としては、“燃やし尽くされたら補充が大変だ”と言い返したくなる」
「……前線の砦でヘンリー伍長と話したのを思い出します」
「ヘンリー伍長?」
「ああ、こちらの話です。夜明け前の見張り台に三晩連続で立たされていた兵士がいましてね」
俺は簡単に“当直表の赤線”の話をした。
ギルゼンは黙って聞いていたが、途中でふっと吹き出した。
「“夜目が利くから”という理由で、同じ者に負担が集中する。
……我々のほうでも、よくあります」
「そちらでは、夜目が利くのは……?」
「闇属性持ちの魔族や、目に魔力を宿している者たちですね。
“便利だから”という理由で一晩中立たされ、“便利だから”という理由で翌日も休ませてもらえない」
「“優秀だから仕事が増える”と同じ構図ですね」
俺はため息をついた。
「そういうところから少しずつ変えないと、“戦場で死人が増える”以前に、“仕事のやり方そのものが崩壊する”」
「その点では、あなた方の当直表の“見える化”は参考になりました」
ギルゼンが真面目な顔で言った。
「夜勤回数を板に刻んで、皆の目に触れる場所に置く、というやり方は、我々にも応用できそうです」
「“数字を晒す”のは、役人の武器ですから」
「まったく同感だ」
彼は打ち合わせのときよりも、わずかに砕けた口調で続けた。
「――こちらからも、一つ情報をお渡ししておきましょう」
「情報?」
「あなた方が視察した前線拠点。あそこの魔力炉の勤務表、あなたの報告書を読んだあと、こちらの監査課でも再調査しました」
心臓が一瞬だけ早く打つ。
「結果は?」
「“連続三刻以上の立ち番”が、常態化していました。
我々の通達に反しています」
ギルゼンは顔をしかめる。
「責任者は更迭されました。魔力炉の勤務は、“最長二刻”という基準をあらためて全拠点に通達済みです」
「……それは、こちらとしてもありがたい話です」
本心だった。
「こちらの監査報告が、“そちらの現場”を動かしたと?」
「“人間側に突っ込まれる前に、自分たちで何とかしろ”という上からの指示もありましたが」
そこで、ギルゼンが少しだけ上目遣いにこちらを見る。
「――“異世界労務局は、魔王にも裁定できるのか”。
そんな話を、あなた方の王都の酒場でしている者がいると、聞きました」
「誰の耳が早いんですか、それは」
思わず頭を抱える。
「少なくとも、俺が言いふらした覚えはないんですが」
「酒場の噂話など、どこまで本当か分かりませんが……」
ギルゼンは小さく笑った。
「“魔王にも”かどうかは分かりませんが、“魔王軍にも”なら、少しは口を出せるかもしれませんね、あなた方の監査報告は」
「そちらの監査課が、本気で動いているなら」
「もちろん。我々だって、“自分たちの現場”を守りたい」
その言葉に、俺ははっきりと頷いた。
「同業者として、一つだけ約束しましょうか」
「約束?」
ギルゼンが目を細める。
「こちらは、“魔王軍の現場で見聞きしたこと”を、労務局の報告書に淡々と書きます。
それがたとえ、“こちらの上層にとって都合の悪い情報”だったとしても」
「……まあ、そうでしょうね」
「その代わり、そちらも、“人間側の現場で見聞きしたこと”を、兵站局の報告にねじ曲げずに書いてください。
“捕虜の扱いがおかしい”と思ったら、“魔王にとって気持ちのいい話”だけで作られた報告書にはしないでほしい」
ギルゼンは、しばし沈黙した。
灰の谷の風が、テントの布をぱさりと揺らす。
やがて彼は、ゆっくりと手袋を外した。
青白い指先が、こちらへ差し出される。
「――それは、“労務監査官としての矜持を共有しよう”という提案だと受け取っていいですか」
「ええ。“魔王の部下”と“王の部下”である前に、“現場を見てしまった側”同士として」
俺も手袋を外し、その手を取った。
ひんやりとした感触。
魔族の肌は、人間よりもわずかに温度が低い。
けれど、その握り返す力は、人間のそれと何ら変わらなかった。
「――お互いに、“自分の陣営からまず是正する”ことを誓いましょう」
ギルゼンが言った。
「“相手がひどいから、自分たちは変わらなくていい”という言い訳を、お互いに潰すために」
「了解しました。“お互い様”の是正ですね」
短い握手が終わる。
それだけのことなのに、胸の中の何かが、少しだけ軽くなった気がした。
*
控えスペースから会談テントへ戻ると、バルドがほんの少しだけ目を細めた。
「何を話していた?」
「同業者の愚痴と、これからの仕事の面倒くささについて、少々」
「そうか。顔つきが、“新しい仕事を引き受けた顔”になっている」
「否定できないのがつらいところです」
俺が肩をすくめると、アルズの代わりに今回の護衛として来ていたリシアが、ほんのり笑った。
「でも、なんだか……よかったですね」
「何が?」
「“魔王軍側にも、人事担当がいた”って話です」
その一言に、不覚にも少し笑ってしまう。
「そうですね。“敵の中に同業者がいる”って、こんなに心強いことだとは思いませんでした」
灰の谷の上で、紙とペンで引かれた一本の線。
それはまだ細く、頼りない線だ。
けれど、“何もなかった場所”に、確かに一本刻まれた線でもある。
王立労務局監査官、レオン・グラハム。
魔王軍統一兵站局労務監査課、ギルゼン・ヴァルナ。
この二人の握手が、どこまで世界をマシな方向へずらせるかは、まだ分からない。
それでも――やる価値はある。
そう思えるだけの、一日だった。




