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006 バベルの塔

 そんなこんなで、オレたちは賭博で勝ったお金を元手に、錬金術の腕を磨いていった。


 まぁ、磨いているのはリーズだけどね。リーズの成長は順調だが、問題はオレだ。ダガーの素振りや弓の練習はしているけど、まだ実戦の経験はない。


 というわけで、オレはこの街バローの中心部にあるダンジョンにやってきた。


 リーズが錬金術をしている間にオレは実戦経験を積み、経験値を溜めてレベルアップするためだ。


 モブのオレでもレベルを上げれば少しは強くなれるよね?


 それに、オレの想像があっていれば、オレたちは早急にソウルイーターを倒さなくてはいけない。


「ここがダンジョンか……」


 オレの目の前には高い城壁が円形にそびえ立ち、その中には天にも届きそうなほどアホみたいに高い塔が立っていた。この高すぎて頂上が見えない塔が、バローの街のダンジョン『バベル』だ。なんだか神様に壊されそうなネーミングだが、ゲーム中では壊されることはなかったので安心してほしい。


「たっけー……。これを今から登るのか……」


 なんとも圧倒されてしまう光景だった。だって、雲も突き抜けて塔が続いてるんだよ? もしかしたら、宇宙の果てまで塔は続いているのかもな。


「装備は……。第一階層までだし、大丈夫だよな?」


 軽く装備の点検をしたオレは、ダンジョンに向かって歩き始めた。


「よし、次!」


 ダンジョンの入り口に続く道には城門があって、そこでは兵士がダンジョンに入る冒険者たちのチェックをしていた。冒険者の列に並んでいると、オレの番が来た。


「冒険者証を見せろ」

「はい」


 オレは首に提げていた羊皮紙を見せると、兵士は頷く。


「ペーパー級か、気を付けろよ。よし、次!」


 兵士に軽く肩を叩かれると、ゴーサインが出た。


 オレは城壁によって区切られた中に入る。ダンジョンの外壁は、まるで穢れを知らないとばかりに真っ白だった。外壁には装飾や継ぎ目がなく、どうやって造ったのかもわからない。さすが、女神さまが造ったと言われるだけのことはある。


 オレはぽっかりと大きな口を開けたダンジョンの入口へと入っていく。ダンジョンの中は、まるで白い壁自体が光っているかのようにぼんやりと明るかった。


 ダンジョンの中に入ると、すぐに白い大きな部屋に出た。部屋の中央にはまるで砂時計のような変なモニュメントがあり、その奥には白い通路が続いている。ゲームで見たとおりだね。


 その時、オレの前にいた冒険者パーティらしきグループが姿を消した。ワープしたのかな。


 オレは部屋の中央にある変なモニュメントに触れると、じんわりと手の平が温かくなった。これで登録は済んだのかな?


 ダンジョンには生体認証のような機能があり、その個人がダンジョンをどこまでクリアしたか登録してくれるのだ。そして、二回目以降はこのモニュメントから今までクリアした階層にワープできるのだ。ハイテクだね。


 まぁ、全部で百階層あるダンジョンを毎回一階層から攻略してたら日が暮れちゃうよね。


 登録が済んだと認識したオレは、モニュメントを超えて奥の白い通路へと進んでいく。ここからはモンスターの出るダンジョンの中だ。気を引き締めないとな。


 まぁ、まだ第一階層だから手こずることはあっても負けはしないだろうが。


 オレは弓に矢をつがえて緩く持っていつでも矢を射れるようにしながら通路を進んでいく。


 すると、道先の十字路から小さな何かが姿を現した。額から一本の鋭いツノを生やした小柄なウサギだ。


「ホーンラビット……!」


 オレはすぐに弓を構えると、矢を放つ。


 矢はホーンラビットの左側五十センチほどの所を通過する。ハズレた!?


 練習ではここまで大きく外すことはなかったんだが、初めてのダンジョンでオレも緊張しているのかもしれない。


 ホーンラビットが攻撃に気が付いたようで、オレに向かって駆けてくる。


 このまま矢を撃つべきか。それとも弓を捨ててダガーで応戦するべきか。


 迷いは一瞬。オレは背中の矢筒から矢を取り出すと、弓につがえる。


 ホーンラビットとの距離は十メートルほど。これを外したら弓を捨ててダガーで応戦しよう。


 そう決めてから狙いを付けて矢を放つ。ホーンラビットとの距離、七メートルほど。


 外した時のことを考えていたからか、集中できていないせいか、オレはまたしても矢を外してしまう。


「くそっ!」


 悪態を付きながら、オレは弓を捨てて左右の手でそれぞれ腰のダガーを抜く。ダガーの二刀流。


 オレは前世で剣道の経験はあるが、二刀流の経験はない。ギー君も二刀流を選んだのはかっこいいからであり、得意というわけじゃない。一応、練習はしてきたが、あんまり自信がない。


 相手は第一階層のモンスター。ダンジョンのモンスターとしては最弱だ。


 だというのに、オレはかつてないほど緊張していた。


 やっとの思いでダガーを構えた時、ホーンラビットとの距離は一メートルもなかった。


 ホーンラビットが、鋭いツノでオレの腹目掛けてジャンプする。


 このままでは腹が突き破られる。


 だが、オレの体はまるで石になってしまったかのように動かない。


 なんでだ!?


 今までオレはダガーの練習はしてきた。だが、それは攻撃することばかりで、攻撃された時のことをまるで考えていなかったことを気付かされた。


「ぁ……ッ⁉」


 ずぶりと腹に異物が侵入する感覚。そして、ホーンラビットのタックルによって体が自然とくの字に曲がってしまった。

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