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037 森②

 クロウラーの粘糸によって身動きを封じられたギュスターヴ。そこにクロウラーが圧し掛かろうとギュスターヴに迫る。


「ふッ!」


 そして、ちょうどクロウラーの真後ろを取ったオレは、クロウラーの脳天にダガーを突き立てた。クロウラーに骨がないからか、ダガーはずぶずぶと柄まで入る。


 傷口を広げるためにダガーをひねると、クロウラーはビクリと大きく体を震わせ、そのまま動かなくなった。どうやら倒したらしい。


 一体倒せたと喜ぶ暇はない。たしかに倒せはしたが、代わりにこっちはギュスターヴが戦闘不能だ。未だ二体のクロウラーは混乱しているとはいえ、厳しい戦闘になるかもしれない。


「えいっ!」


 リーズのかわいらしい掛け声と共に薬瓶が宙を舞う。


 薬瓶は腐葉土の上をゴロゴロ転がっていたクロウラーに見事命中し、パリンッと割れて中の液体がクロウラーを濡らした。


 途端にクロウラーが苦しがるように体を丸める。


 よく見れば、薬液で濡れた所が煙を上げて穴が開いていた。開いた穴からは、絶え間なく緑の色の血が溢れ出し、クロウラーの臓器と思しきものが零れている。


 使った薬品はたぶん溶解液だろう。ゲームでは対象にダメージを与えると共に対象の防御力も下げる効果があった。ゲームではよくある攻撃だと思うんだけど、現実ではこんなにもグロいのか……。


「サンダーアロー!」


 もうかわいそうなくらいボロボロなクロウラーだが、そこに追撃が入る。イザベルのサンダーアローだ。


 サンダーアローは的確にクロウラーの傷口に着弾し、クロウラーはビクビクと体を震わせた後、ピクリとも動かなくなった。


 倒したのだろうか?


 ダンジョンのように倒したら白い煙になるわけじゃないのでわからない。ゲームだったら、ちゃんと「倒した」って表記されるからわかりやすいんだが……。この世界はゲームのようでゲームじゃないから仕方ないね。


 この後、リーズとイザベルの連携によって残ったクロウラーも倒した。ジルとギュスターヴが戦闘不能になった時はどうしようかと思ったんだが、なんとかなってよかったよ。


「おバカなジルはもう目はいいのかしら?」

「バカっていうな! だいぶ見えるようになってきた」

「リーズからどんなアイテムを使うかは、事前に説明を受けていたでしょう? 指示に従わないあなたが悪いのよ?」

「わーってるよ……」


 ジルはイザベルに説教されていた。ちょっとふてくされているが、まぁ大丈夫だろう。


「ごめんよー」

「いいって。それより動くなよ?」

「うん」


 オレは粘糸にかかってしまったギュスターヴの救出である。


 リーズの話では、この糸は火に弱いらしい。念のために持ってきた松明に火を着け、ギュスターヴに絡みついた粘糸を焼き切る作戦だ。


 ちなみに、リーズはクロウラーから取れる毒液などの錬金術アイテムを採取しているところである。


「おー、焼ける焼ける」

「あづッ!? 熱いよ!」

「すまん、すまん」


 粘糸はすぐに焼き切れ、ギュスターヴは動けるようになった。まだ鎧に少しこびり付いているのがあるが、あれはもう仕方がないと諦めてもらおう。


 その場で軽く休憩した後、オレたちはまた森の中を彷徨い歩く。


 クロウラーにジャイアントセンチピード、アッシュウルフやビッグモスなどなど、森にはたくさんの魔物がいた。


 そんな魔物たちを倒しながら、どんどんと森の奥へと向かう。


 ゲームでは森といっても道があり、その最奥にソウルイーターが待機していた。


 だが、現実の森に道なんてなく、ソウルイーターがどこにいるのかもわからない。この広い森の中から一体の魔物を見つけるなんて土台無理な話なんじゃないか?


 だが、この体とギーの魂との繋がりがだいぶ細くなっている気がする。もう今日中にソウルイーターを倒さなければマズい状況だ。


 見つかってくれ……!


 魔物と戦闘しながら、祈るような気持ちで森を彷徨う。


 昼も過ぎ、そろそろ今日のところは帰ろうかというところでそれは現れた。


「ん?」


 そのことに最初に気が付いたのはオレだった。先ほどまでけたたましいほど鳴いていた虫も鳥も姿を消している。異様な静けさに包まれていた。


「あ、あれ!」


 先頭を歩いていたギュスターヴの上ずった声が聞こえる。


 ギュスターヴは、ただ前方を指差して歩みを止めていた。


 前方は暗がりになっており、ここからではよく見えなかった。


 だが、体が呼ばれているような奇妙な感覚を味わった。


「ソウルイーターだ!」


 なぜだかわからない。


 しかし、オレの中では確信があった。


 オレの声に全員が武器やアイテムを構える。


 そして、それはギュスターヴの指していた前方から現れた。


 少し黄ばんだクリーム色の骨、骨、骨。それはデタラメに骨をかき集めて造形したサイのようなフォルムのバケモノだった。内臓が収まっているであろう肋骨の内側には靄がかかり、青や赤に淡く光っている。


 鋭く尖った大きなツノの奥、その眼下には真っ黒な炎がちろちろと燃え、まるでオレたちを睥睨するような輝きがあった。


 あれこそが物語のキーモンスター、ソウルイーター。ギーの魂を奪った犯人だ!

お読みいただき、ありがとうございます!

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