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028 第十階層ボス戦

「いくぞ!」


 ジルの威勢のいい声と共に目の前の黒い大きな両開きの扉が開いていく。いよいよボスとの戦闘が始まるのだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」


 扉が開くと同時にギュスターヴが吠える。ボス部屋のモンスターの注意を引こうとしているのだ。


「行きましょう」

「ああ」


 オレとイザベルはギュスターヴ、ジルの後からボス部屋に入る。ボス部屋はまるでホールのショートケーキを内側から見たような白い円形闘技場だった。天井は緩くドーム状になっている。


 その闘技場の中央にいるのが、道中で出会ったものよりも大柄なゾンビ、そして両手に剣を持ったスケルトンウォーリア、それぞれ二体ずつ。そのさらに奥には、木の杖を持った骸骨、スケルトンメイジの姿も見える。


 この五体が、第十階層の階層ボスだ。


 スケルトンメイジの姿が見えた瞬間、オレは背中の矢筒から矢を取り出して弓に番えた。


 その頃には、スケルトンメイジが魔法を発動させようと杖を振り上げるのが見える。


 自分に落ち着けと念じながら、オレは弓を引き絞った。狙うはスケルトンメイジだ。


 チャンスは一度。オレが矢を外せば、スケルトンメイジが魔法を発動させるだろう。その魔法はまだ十分に装備の整っていないギュスターヴを屠るかもしれない。


 つまり、オレのこの一矢にはギュスターヴの命が乗っていることになる。


 絶対に外すわけにはいかない!


 呼吸を止め、ゆっくりと矢を手放す。


 ボウンッと鳴り響くのは、いつもの弓の弦の振動音。


 それと同時に、オレの手から矢が放たれる。


 放たれた矢はまっすぐに飛翔し、カツンッという音を立ててスケルトンメイジの左の眼窩に吸い込まれた。


 矢が当たった衝撃でのけぞるスケルトンメイジ。スケルトンメイジの詠唱がストップする。


 その隙を見逃すイザベルではない。


「ファイアボールッ!」


 イザベルの前に灼熱の火球が顕現し、高速で発射される。


 火球はゾンビやスケルトンウォーリアの間をするりと抜け、スケルトンメイジに着弾した。


 火球の勢いに吹き飛ばされ、勢いよく燃え上がるスケルトンメイジだったが、やがて力尽きたように白い煙となって消えた。


 一番の懸念点であったスケルトンメイジを倒せた。


 とはいえ、まだ四体のモンスターが残っているのは間違いない。気を引き締めないとな。


 オレは弓を放り投げるとダガーを握って前線へと走り出す。


「うらああああああああああ!」


 前線ではジルがその大剣でゾンビを両断したところだった。


 残り三体。


「ファイアボールッ!」


 背後から火球が飛び出し、スケルトンウォーリアを一体屠る。


 残り二体。


「うおおおおお!」


 ゾンビとスケルトンウォーリアの相手をしていたギュスターヴが、シールドバッシュでゾンビを吹き飛ばした。ゾンビが飛んだ方向には、ジルが大剣を持って待ち構えている。


「うりゃあああああああああああああああ!」


 ジルの持つ大剣が振り下ろされ、ゾンビはぼふんっと白い煙となって消えた。


 残り一体。


 ギュスターヴとスケルトンウォーリアがやり合っているのを見ながら、オレはこそこそと移動し、スケルトンウォーリアの背後を取った。


 スケルトンウォーリアは当然ながら動く骨格標本のように骨だけで動いている。本当なら急所にダガーを突き立てるのだが……スケルトンウォーリアの急所ってどこだ?


 とりあえず、首を落とすか。


「ふッ!」


 カッと乾いた音を立てて、オレはスケルトンウォーリアの後ろ首にダガーを突き立てた。


 ダガーの刃は狙い通り首の骨の隙間に入り込む。その状態でダガーを回すと、パキンッと軽い音を立ててスケルトンウォーリアの首が落ちた。そして、ぼふんっと白い煙となって消えていく。


 これで全部片づけたな。


「ふぅ。みんな、お疲れ様。怪我はしてない? リーズの作ってくれたポーションがあるけど」

「大丈夫だ!」

「僕も大丈夫だよ」

「みんな、お疲れ様。疲れているでしょうけど、早くアイテムを回収して出ましょう」

「お! 宝箱があるぞ!」


 ジルの指差した方向を見れば、大きめの木箱が部屋の中央にあった。いつの間に出現したんだろう。たぶん、あれが階層ボス攻略のご褒美だ。


 誰も何も言わなくても、オレたちは宝箱に引き寄せられるようにその前に立った。


「じゃあ、開けるぞ……!」


 誰かの息を呑む音が聞こえた。もしかしたらオレのものかもしれない。


 階層ボスの宝箱には罠の類はない。そのことを知っているオレは無造作に宝箱を開けた。


 ピカッと宝箱の中から光が漏れる。中に入っていたのは、小さく粗末な布袋が一つだけだった。


「何だこれ?」

「これって……」


 ちょっと拍子抜けしたようなジルとギュスターヴの声が背後から聞こえる。


 その声を無視して、オレは布袋を丁寧に持ち上げた。半ば以上確信しながら布袋の中を確認すると、小さな木片が入っていた。


「間違いない。反魂香だ」


 宝箱に反魂香が入っている確率は低い。それを最初から引き当てられてラッキーだね。もしかしたら、オレの【幸運】のギフトの力が働いたのかもしれない

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