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027 第十階層②

 ぼふんっと白い煙となって消える二体目のスケルトン。


「よし……!」


 難しいスケルトンへのヘッドショットを二連続で成功させ、オレはガッツポーズを取りたい気持ちをグッと堪え、背中の矢筒からさらに矢を取り出す。


「来てくれ! ゾンビが三体だ!」


 後ろにいるジルたちに声をかけ、オレは弓を引き絞る。


 ゾンビは腐っているからか、その動きは遅い。ゾンビが来るのを待っているより、ジルたちに来てもらった方が早い。


「げっ。ゾンビかよ……」

「うわぁー……」

「とっとと行きなさい!」


 ジルとギュスターヴが嫌そうな声をあげ、イザベルにどやされていた。彼らはこれから臭いゾンビと肉弾戦だ。南無。


 オレ? オレはほら……。矢を撃つのに忙しいから……。


「ファイアボール!」


 イザベルが杖を振り上げて魔法が発動する。彼女の目の前には大きな火球。杖を振り下ろすことによって火球が高速で飛翔し、ゾンビへと着弾する。轟と音を立てて一体のゾンビが炎に包まれた。あれではまるで火葬だな。これで残すところゾンビが二体。


「うおおおおおおおおおおおッ!」


 普段は大人しいギュスターヴが雄叫びを上げてゾンビへと突進する。その大きな盾でシールドバッシュをゾンビに見舞った。


「どりゃああああああああッ!」


 体勢を崩したゾンビに襲い掛かるのは、大剣を振り上げたジルだ。ジルの振り下ろした大剣によって、ゾンビが頭から股まで真っ二つになる。残りゾンビが一体。


 ボウンッと低い風切り音と共にオレは矢を放つ。矢は見事ゾンビの眉間に命中し、ゾンビの頭部を破壊した。


 首から上を失ったゾンビは、闇雲に緩慢な動きで腕を振るっている。


「せあああああああッ!」


 そこに飛び込んできたのは、ジルだった。今度は掬い上げるような大剣の一撃でゾンビを横に真っ二つにする。


 タフなゾンビもこれには敵わなかったのか、ぼふんっと白い煙となって消えていった。


 これで全部倒したな。


「みんな、お疲れ様」

「おう!」

「お疲れ様でした」

「よくやったわね」


 戦闘が終われば、オレは放った矢を回収するついでにドロップアイテムも回収していく。ドロップアイテムは骨片と腐汁だった。骨片は骨粉に加工したり骨細工に使用され、腐汁は主に毒や麻痺薬の材料になる錬金術のアイテムだ。パッと見ただのゴミだが、大切なアイテムである。


「ちっ。欠けたか……」


 矢を回収していると、一本だけ鏃の先が欠けた矢があった。まだ使えるが、ダンジョンを出たら買い換えた方がよさそうだな。


 ゲームでは、モンスターを毒や麻痺にする矢などさまざまな種類の矢が登場した。それらの矢については所持数があったが、通常の矢については無制限に撃つことができた。


 だが、現実はそうもいかない。矢を無限に持つなど夢のまた夢であり、オレの背中の矢筒には七本しか矢が入っていない。七本撃ったら、あとはダガーで戦うしかないのだ。


 だから、できる限り矢を回収してリサイクルしている。でも、そうすると今度は矢が摩耗していく。


「鏃って意外と高いんだよなぁ……」


 職人が手作りしているからかな? なんとも世知辛い話である。


「じゃあ、行くか……」


 なんとも切ないものを感じながら、オレは出発のハンドサインを出してダンジョンの通路を歩き始めるのだった。



 ◇



 スケルトンやゾンビはもちろん、ホーンラビットにゴブリン、スライムやウルフなどと戦いながら、オレたちは第十階層の最奥、ボス部屋の部屋までたどり着いた。


 目の前には大きな黒い両開きの扉があり、この扉の向こうが階層ボスの登場する部屋となっている。


「念のため訊くが、階層ボスの情報はあるよな?」

「当たり前でしょう? ……でも、復習は必要かもしれないわね……」


 イザベルが、オレから目を逸らしたジルを呆れた目で見ながら答える。


 ジル……お前、名ばかりとはいえパーティのリーダーだろ……。


「まあいい。ここのボスは五体のアンデッドだ。ゾンビが二体、スケルトンウォーリアが二体、スケルトンメイジが一体いる。注意すべきは何かわかるか、ジル?」

「そりゃスケルトンメイジだろ? なにせ、初めて魔法を使うモンスターとの戦闘だ。腕が鳴るよな!」


 ジルは胸の前で片手に拳をペチペチ放ちながら言う。ジルはお気楽だなぁ……。


 ゲームでは、魔法は強力な攻撃手段だった。ゲームではダメージが数値で出るからわかりやすかったのだが、オレが撃つ弓矢の通常攻撃の何倍もダメージを出すのが魔法だった。魔法使いは、MPを消費して必殺技を連打する怪物だ。味方にいれば頼もしい限りだが、敵にいれば厄介なことこの上ない。


 まぁ、とりあえずオレは溜息を吐いてジルの言葉を否定することから始めよう。イザベルも頭が痛いとばかりにおでこを押さえているし。


「いいか、ジル? ジルはスケルトンメイジと戦わない。OK?」

「あん? なんでだよ?」

「スケルトンメイジは魔法を使う前にオレとイザベルで倒す。ジルの相手はゾンビとスケルトンウォーリアだ」

「ちぇっ。どれほどの強敵かと楽しみにしてのによぉ」

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