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021 『バベルの塔』第六階層

 次の日の朝。オレとリーズは街の中心にあるダンジョン『バベルの塔』がある広場で『狼の爪牙』のメンバーを待っていた。


 今日はオレとリーズが『狼の爪牙』とお試しパーティーを組む日だ。その結果が良ければ、オレとリーズは晴れて『狼の爪牙』に加入だ。


 ゲームだったらリーズがパーティリーダーしてメンバーを集めるのだが、普通に考えれば、成人したばかりの少女に命を預ける奴なんていないだろう。オレとリーズがパーティに加入する側になるのは当たり前のように思えた。


 『狼の爪牙』はメンバーもわりといいし、できればこのまま加入したいところだね。


「あ! 来たわよ!」


 リーズが見ている方向を見ると、大剣を背負った赤髪の少年、大きな盾を持った少年、装飾された杖を持った少女の三人が見えた。ジル、ギュスターヴ、イザベルの三人だ。


「よお、待ったか?」

「いや、オレたちも今来たところだよ」

「じゃあ、行くか」

「ああ」


 挨拶もそこそこに、さっそくオレたちは『バベルの塔』へと続く行列に並ぶ。並んでいるのは、すべて冒険者だ。このバローの街にこんなに冒険者がいたのかと驚くほど並んでいる。


 その冒険者たちを誘惑するように左右に並んでいるのは、主に食べ物を扱っている屋台だ。先ほどから行列を抜け出しては食料を買っている冒険者が後を絶たない。それを物欲しそうにギュスターヴが眺め、イザベルに肘鉄砲を喰らっていた。


 行列はどんどん進み、いよいよオレたちも『バベルの塔』の中に入る。大きな砂時計のようなモニュメントの前でオレたちは手を繋いだ。こうすることで全員同時に目的のフロアまでワープすることができるらしい。


「第六階層でよかったよな?」

「ああ」


 ジルに頷いて返すと、一瞬の浮遊感の後、目の前の景色がガラリと変わった。第六階層に着いたらしい。


 ゲームの時は疑問に思わずに使っていたけど、いったいどんな仕組みなんだろうね?


「じゃあ、行こうぜ。予定通り、斥候はギーに任せる。いいよな?」

「いいよ」


 オレは今回、斥候の役割を求められている。


 斥候とは、パーティの目だ。一人だけ突出して前に出て、モンスターの有無の確認や罠を発見することを期待されている。


 オレはまだ罠の解除には自信はないが、前世でゲームを死ぬほどプレイしたおかげでダンジョンの迷路はもちろん、罠の場所もすべて記憶している。たぶん、斥候の役割もこなせるだろう。


「行ってくる」

「気を付けなさいよ?」

「ああ」


 リーズと別れるのは少し寂しいが、これもリーズのためだ。


 忍び足を意識して、ぼんやりと明るいダンジョンの通路を進んでいく。


 曲がり角から少しだけ顔を出して確認すると、ピンクのブタ頭をした巨漢の姿が目に入った。その数、三体。弛んだ体をしているが、力は強そうだ。その手には棍棒を持ち、警戒しているように辺りを見渡している。


 オレは手早く昨日決めたハンドサインでパーティに報告した。


 ジルは頷いて背中の大剣を引き抜く。


 オレはそれを見てさっそく行動を開始する。背中の矢筒から二本の矢を引き抜き、一本を長弓に番えた。


「ふー……」


 そして、深呼吸一つすると、曲がり角から身を乗り出して弓を引き絞る。


 まだオークたちはオレに気が付いていない。


 オレは一番手前のオークに狙いを定めると、そっと矢を手放した。


 ボウンッという弦が空気を切り裂く音と共に、スッと滑るように矢が飛翔する。


 矢はオークの後頭部に命中し、そのままオークは白い煙となって消えた。


 残り、二体。


 さすが長弓。当たり所がよかったとはいえ、一撃でオークを倒せるとは思わなかった。もしかしたら、オレの【幸運】の力で会心の一撃になったのかもしれない。


「PIGYA!」


 オークたちは仲間の死に怯むことなくオレに向かって駆けてくる。


 彼我の距離、五メートル。できればもう一本撃ちたかったが、欲張るのはよくない。オレは急いで踵を返すと駆け出した。


「オーク、二体!」


 オレは声をあげてモンスターの種類、それと数をパーティメンバーに周知する。


「おう!」

「了解!」


 すると、ジルとギュスターヴが応えるように武器を構えた。


 オレはその二人の間を通り過ぎ、リーズとイザベルの所で止まると、弓を手放して腰のダガーを引き抜いた。これからは接近戦だ。


「はああああああああッ!」


 振り向くと同時にジルが大剣でオークに斬りかかる。


 そして、それと時を同じくしてギュスターヴがオークに向かってタックルをしていた。


 このままお手並み拝見といきたいところだが、オレにはまだ仕事がある。オークの注意が完全にジルとギュスターヴに移っていること確認して、オレはコソコソと動き始めた。


 慌てず、ゆっくりと自分に言い聞かせ、通路の端を通るようにしてオークたちの背後に出る。


 そのままギュスターヴの対峙しているオークの背中に近づくと、オレはオークの急所を狙ってダガーを振り下ろした。

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