017 パーティメンバー募集
「これね。開けても大丈夫かしら?」
「いいよ」
リーズが木製のこぢんまりとした宝箱を開けると、中から何かを取り出した。指輪のようだ。
「あ!」
リーズが宝箱から指輪を取り出すと、宝箱は空気に溶けるように消えていく。
「ギー、指輪よ」
「そっか」
第五階層のボスのドロップは素早さがプラス1だけ上がる指輪。そしてレアドロップは角笛だったはずだ。今回はレアドロップは出なかったようだね。残念だ。
「リーズ、その指輪だけど、オレが貰ってもいいかな?」
「いいわよ」
素早さは、回避や攻撃速度に関係するステータスだった。モンスターと近接戦闘をするオレが持っていた方がいいだろう。
まぁ、プラス1だから誤差みたいなものだけどね。
「じゃあ、いったん街に戻ろうか」
「まだお昼前だけど戻るの?」
「うん。冒険者ギルドに行こう」
ダンジョンの第五階層をクリアしたということは、これで冒険者ギルドで仲間を集めることが解禁されたはずだ。
まぁ、その制約はゲームの時のものだし、第五階層をクリアしてなくても仲間を集めることはできたのだが、なんとなくゲームの制約を守ってしまった。
オレはできる限りイベントなどをゲームの通りに消化しているつもりだ。ゲーム通り、ちゃんとソウルイーターが倒せるようにというオレなりの願掛けみたいなものだね。
そんなこんなで、ダンジョンの第五階層からダンジョンの入り口まで謎のモニュメントを使ってワープし、オレたちはバローの街まで帰ってきた。
「バロー名物のホットドッグはいかがかな?」
「そこのお二人さん、昼食は済ませた? まだならぜひ当店へ!」
「今日のポトフはじっくりコトコト煮込んだ絶品だぜ!」
お昼時だからか、バローの街はいつにも増して賑やかだ。そこかしこの屋台や飲食店から客引きの声が聞こえる。
「今日は外で食べるの?」
「うん。たまには冒険者ギルドで食べようかなって」
バローの街の大通りを進み、一際大きな石造りの武骨な建物の前にたどり着いた。大きなスイングドアの上に飾られたのは、盾をバックに剣と杖が交差している冒険者ギルドの看板だ。
バローはダンジョンを抱える冒険者の聖地とまで呼ばれる街だからね。冒険者ギルドもかなり大きい。
冒険者ギルドの中からは陽気な笑い声や怒号のような声まで聞こえてきて、何度来ても圧倒されるような気持ちがあった。
「行こうか」
「ええ……!」
リーズと一緒に冒険者ギルドの中に入ると、わあっと聞こえる声が大きくなる。
「おめえ、しばらく見ない間どこ行ってたんだ?」
「あん? ちょっと村に出たって言うゴブリンどもを退治してたのよ」
「第二十階層の攻略を祝って、かんぱーい!」
「最近、街の近くに妙な魔物が出るらしいぜ? なんでも、襲われたら二度と目を覚まさないんだってよ」
「ポーションも神聖魔法も効果なくて、教会もお手上げだってな。恐ろしいもんだぜ」
「お前を追放する!」
「「「「いや、お前が追放されろよ!」」」」
冒険者ギルドは今日も賑やかだなぁ。
冒険者ギルドは入って左側がうるさい飲食スペースとなっており、右側には主にポーションなどの消耗品を扱う店が入っていた。奥のスペースには木製のカウンターが並び、受付嬢さんたちが冒険者たちの相手をしていた。
「ギー、どうする? 先に昼食を食べちゃう?」
周りがガヤガヤうるさいからだろう。リーズがいつもより大きな声で問いかけてきた。
「先に受付でドロップアイテムを売ろうか。あとは、パーティメンバーの募集も出さないと」
「パーティメンバーの募集?」
「うん。さすがにこの先は二人だけだと厳しいからね」
できれば、強いキャラが仲間になってくれるといいけど。
ゲームでのパーティメンバーの募集は、誰が来るか完全にランダムだった。まぁ、ガチャみたいなものだね。よくセーブ&ロードで強いキャラが来るまで回したことがあるよ。
でも、現実にはセーブもロードもない。一発勝負だ。今こそ、オレの【幸運】のギフトが試される時じゃないか? がんばれ! 【幸運】!
「こんにちは。今日はどういったご用件でしょうか?」
オレたちの番が回ってきて、笑顔を浮かべた受付嬢さんが対応してくれる。
「冒険者を紹介してほしい。パーティを組みたいんだ。リーズと、この子とセットで募集したい」
「でしたら、こちらの用紙に記入をお願いします」
「はい」
受付嬢さんから渡された用紙には、名前の他にも扱う武器や特技、ギフト、ダンジョンを何階層まで攻略したかなどを記入するようだ。
スラスラと用紙に記入し、受付嬢さんに渡した。オレもリーズも隠さないといけないようなことはないからね。
「ありがとうございます。パーティメンバーのマッチングまで少々お時間を頂きますね。決まり次第、係りの者からご連絡差し上げます」
「ああ」
「よろしくおねがいするわね」
後は冒険者ギルドが適当にパーティメンバーを見繕ってくれる。
「じゃあ、ご飯でも食べながら待ってようか」
「はい」
オレとリーズは、併設された食堂へと移動して、食事を開始するのだった。
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