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013 アルケミストリング

「ありがとうございましたー!」


 その後、オレとリーズはそれぞれ自分の装備を決定して店を出た。


 リーズはオレのオススメしたメイド服っぽい装備。オレは革でできた軽装の鎧だ。


 リーズが目論見通りの装備を買ってくれて大満足である。オレも防御力が上がって安心だ。


 それと、リーズ用にポーション入れや錬金術で作ったアイテムを入れるポシェットなんかも買った。リーズも喜んでくれるだろうと思ったのだが、彼女はちょっと俯いて溜息を吐いていた。


「リーズ、どうしたの? 嬉しくないの?」

「そういうわけではないけど、あーあ、散財しちゃったなぁ……」


 たしかにそれなりのお値段はしたけど、まだお金は半分以上残っている。そんなに気にしなくてもいいのに。


「申し訳ないけどリーズ、まだ買う物はあるんだ」

「……まだなにか買うの?」

「うん。ちょっと探し物があってね。時間がかかるかもしれないから、リーズは先に宿に帰っててもいいよ?」

「いいわ。あたしも行く……」

「そう? じゃあ、行こうか。とりあえず、宝具を売ってる店を片っ端から探していこう!」

「あっ!」


 オレは構わず声に構わずリーズの手を取ると、近くのお店に突撃するのだった。



 ◇



 それは七軒目の宝具専門店でのことだった。


「おぉー! あった! やっとあった!」


 オレは無造作に籠の中に入れられた指輪たちの中から一つの指輪を拾い上げる。銀色に輝く幅広の指輪。指輪には繊細な模様が刻んであり、その模様を再度確かめるように見る。


「間違いない。アルケミストリングだ!」


 アルケミストリングは、錬金術の習熟速度がアップする指輪だ。まさに今、リーズに必要な装備である。


 その効果故に需要が天井知らずだったアルケミストリングだが、ダンジョンの第十階層のボスのレアドロップ品であり、そのドロップ率は驚異の0.03%。欲しいと思っても持っているプレイヤーは少なかっただろう。


 オレはゲームに膨大な時間を捧げてゲットしたけどね。『リーズのアトリエ~落魄の錬金術師と魂奪の魔王~』ではアイテムを引き継いで周回プレイも可能であり、めちゃくちゃ重宝するアイテムなのだ。


 アルケミストリングを持っているかどうかで、クリアに必要な時間が倍以上変わってくるとまで言われる装備である。


 もしかしたらと思ったけど、まさか本当に見つかるとは思ってもみなかった。探してよかったなぁ。


「ギー? やっと見つけたの……?」


 振り返ると、ちょっと疲れた顔をしたリーズと目が合った。


「うん! やっと見つけたよ。さっそく買ってくるね」


 お金を払ってアルケミストリングを手に入れる。まさか、アルケミストリングをこんな序盤で手に入れられるとはね。まさにラッキーだ。


「これが、アルケミストリング……」


 手のひらの中にゲームでも屈指のレアアイテムがあるかと思うと、かなり興奮する。無意識に鼻息が荒くなるほどだ。


「その指輪を探していたの?」

「そうだよ、リーズ。これがアルケミストリング。錬金術の習熟スピードをアップしてくれる指輪なんだ」

「えっ!? そんな宝具聞いたことないわよ!?」


 リーズが驚いた顔でオレの手のひらに乗せられたアルケミストリングを見た。そんなリーズもかわいらしいよ!


「それに、もしそんなすごい効果の宝具なら、もっと高く売られているんじゃ……」

「それにはからくりがあってね。アルケミストリングはダンジョンの第十階層のボスのレアドロップ品なんだけど、第十階層のボスは通常ドロップでパワーリングっていう指輪型宝具もドロップするんだよ。たぶんそれと間違えたんじゃないかな?」


 それに、ダンジョンの低階層で手に入る宝具を鑑定せずに売りに出してしまう文化も今回はいい方向に働いたと思う。たぶん、このアルケミストリングを売ってしまった相手は、どうせパワーリングだと思って鑑定せずに売ってしまったのだろう。


 ありがとう! 見ず知らずのやらかし冒険者たち!


「それじゃあこの宝具は本当に……」

「まあね。まぁ、錬金術をする時に、お守り代わりに着けてみてよ」


 指輪を差し出すと、なぜかリーズが顔を赤らめてオレに左手を差し出した。


「ギーが見つけたのよ。ギーが着けてくれない?」

「ん? いいよ」


 オレは繊細な細工物のようなリーズの左手を手に取ると、その中指に指輪を填めようとした。


「ん? ちょっと小さいか?」


 次に左手の薬指に指輪を着けようとすると、リーズの左手が微かに震え出す。


 寒いのかな?


 オレは気にすることなくリーズの薬指にアルケミストリングを填めようとする。


「あれ? 入らない……」


 しかし、指輪は薬指の中ほどで止まってしまった。


 スポンッとアルケミストリングを薬指から抜くと、今度はリーズの小指に填めてみる。今度はすんなり入った。


 よし!


「填まったよ、リーズ」

「……ありがとう、ギー」


 その時のリーズは、なぜだかとても残念な様子をみせていたけど……オレの気のせいだよな?

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