012 防具を買う
「あん? 防備が欲しい? そうだなぁ」
モヒカン肩パットの青年が顎に手を当てながらオレとリーズを交互に見た。
「見たところ、おめーら初心者だろ? んじゃ、あっこだな。安いがいい仕事してるぜ」
モヒカン青年が、意外なほど丁寧に店への順路を教えてくれた。
「ありがとう、助かるよ」
「ありがとうございます」
「なに、いいってことよ。お互い長生きしようぜ」
モヒカン青年は、颯爽と大通りの人込みの中へと消えていった。
「いい人だったわね」
「そうだね」
リーズの呟きにオレは頷く。
恰好が格好だったけど、清々しい好青年だなぁ。やはり、人は見かけによらないね。
その後、オレたちはモヒカン青年に教えられた店へと行ったのだが、店の一角で信じられないものを見つけてしまった。
「宝具!? なんで店で宝具が売ってるんだ!?」
オレの目の前には、腕輪や指輪などが並んでいるのだが、そのどれもがダンジョンでしか手に入らない不思議な力を持ったアイテム、宝具だった。
「ギー? どうしたのよ?」
「いや、どうしたもこうしたも!」
オレは真相を確かめるために店の従業員に突撃する。
「少しいいか? この店では宝具を売っているのか? どこで手に入れたんだ?」
「はい。当店では数は少ないですが宝具も扱っています。当店の宝具は、ダンジョンから冒険者の方々が持ち帰った本物ですよ」
「冒険者が持ち帰った……」
「はい」
「そうか……」
そうだよな。この世界はゲームじゃない。当然、オレたちの他にも冒険者がいるし、ダンジョンで宝具を見つけることもある。そして、その宝具を売り払うこともあるだろう。
むしろ、なぜ今までその可能性に気が付かなかったんだ? とんだ間抜けじゃないか。
「ありがとう、助かった!」
オレは急いで宝具の売られているコーナーに戻ると、一つ一つ吟味し始める。
「うーん……。低級の宝具が多いな……」
ここには、ダンジョンの低い下層で手に入るような低級の宝具しか売られていないみたいだ。それでもそこそこのお値段がするから、このダンジョン都市といえども宝具というのは高価な物なのだろう。
それに、売り物だというのに宝具にはその効果が書かれていない物が多い。こんなの誰も買わないんじゃないか?
オレは店員さんを呼んで訊いてみることにした。
「ここに置かれている宝具には効果が書かれていない物があるんだが、どういうことだ?」
「はい。こちらは未鑑定の物になります。どんな効果の宝具であるかは、鑑定してみないとわかりません。その分、お求め安くなっております。冒険者ギルドに鑑定士がおりますので、気になる場合は鑑定してみるとよいでしょう」
「ほえー」
なるほどなぁ。ゲームではアイテムを手に入れたら自動で名前がわかり、フレーバーテキストまで読むことができた。だが、ここは現実だ。そんな便利な機能はない。たとえ宝具を手に入れても、その効果がわからないのか。
だが、冒険者ギルドには鑑定士と呼ばれる宝具を鑑定してくれる人がいるらしい。その人にお金を払って鑑定してもらうのが一般的なようだ。
「これ、チャンスじゃね……?」
ところがどっこい。オレは『リーズのアトリエ~落魄の錬金術師と魂奪の魔王~』に出てくるアイテムをすべて覚えている。もちろん、それは宝具も同様で、オレは鑑定なんかしなくてもそれがどんな効果を持った宝具か見ただけで分かるのだ。
もちろん、鑑定士のマネをしようというのではない。鑑定料をケチって、未鑑定で売られた宝具の中から、有用な物を探すのだ。
ダンジョンの低階層で出る宝具だからって全部が全部弱いわけじゃない。中には最終装備候補になる宝具もあるくらいなのだ。
「ギーは宝具が欲しいの?」
「まぁね。欲しいのはがあるかはわからないけど」
「今日は防具を買いに来たんだけど……」
「そうだったね……。はぁ……」
宝具を一つ一つ吟味していくが、欲しい宝具はなかった。ちぇっ。
「もういいかしら?」
「うん。欲しいのがなかった。防具を見ようか」
「ええ」
それからオレとリーズは予定通り防具を見ていく。
「ギー、これとこれ、どちらがいいと思う?」
「ん?」
リーズの方を見ると、リーズが二つの服を持っていた。
一つは地味な黒のローブだ。そしてもう一つが、これまた地味な茶色のローブだった。
「うぅーん……」
これが、噂の男の試練。女の子からのどっちがいいか……。
でも、どちらも微妙な時はどう返したらいいんだろう?
見た目的に微妙なのはもちろん。性能的にも微妙なんだよなぁ。
「こっちはどう? 性能的に良さそうだけど」
オレが勧めたのは、一見ミニスカメイド服にも見えるモノトーンの装備だった。見た目的にもいいけど、店売りの中では性能がいい装備だ。序盤ではこれ一択といっていいほどの装備である。
「ギーはこういうのがいいのね……」
「え?」
なぜかリーズがジト目でオレを見ていた。なんで?
「ほら、このコートが付いてるから、ミニスカートだけど平気だよ? それに性能もいいし、かわいい!」
「ッ⁉ まぁ、ギーがそこまで言うなら……」
リーズはちょっとだけ顔を赤らめながら、オレのオススメした装備を手に取ったのだった。
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