011 ダンジョンの後で
その後、オレたちはぎこちないながらも次々とホーンラビットを倒していった。
まぁ、ほとんどオレが弓で倒したんだけどね。リーズもオレの弓の腕の上達スピードに驚いていた。これも【幸運】のギフトのおかげだね。
そして、午前中だけでオレたちは十三枚のウサギの毛皮と、二つのウサギの肉を手に入れた。
これも【幸運】のギフトによるものだろう。やっぱり地味だけど【幸運】のギフトは優秀だね。
でも、それがわかるのはゲームを通してオレがだいたいのアイテムのドロップ率を知っているからだ。もし知らなかったとしたら、【幸運】の効果だとはわからなかっただろう。まず、弓をメイン武器にしようとは思わなかったはずだ。
やっぱり、ゲームの知識があるからこそ輝くギフトだな。この調子でリーズの役に立ちたいところだ。
「全部ギーが倒しちゃったわね……。あたしのいる意味が……」
バローの街の中、リーズが落ち込んだように呟く。
まぁ、たしかに今回、リーズはほとんど活躍していない。というか、すべてのホーンラビットはオレが倒したので、リーズは何もしていない。
でも、リーズはそれでいいんだよ。
オレがほとんど役に立たないとわかっていてもリーズをダンジョンに連れてきた理由。それはリーズのレベルアップのためだ。
ゲーム『リーズのアトリエ~落魄の錬金術師と魂奪の魔王~』では、直接戦闘に参加していないキャラクターにも経験値が入る仕様だった。実験してみないとわからないけど、たぶんリーズも経験値を得てレベルアップしているはず。
ステータスが見れないのってこんなにも不便なのか。まぁ、縛りプレイと考えれば面白いかな?
「ギーって強かったのね。驚いたわ」
「昨日一日ダンジョンに潜ってたからね。少しは慣れたじゃないかな?」
「すごい……」
リーズはしょんぼりした様子だね。そんなに活躍できなかったことがショックだったのかな?
「まぁ、これからどんどんダンジョンは難しくなるし、リーズも嫌でも活躍しないといけなくなるよ。今日のは、リーズが活躍する必要もないくらい相手が弱かっただけだよ。そういえば、リーズには錬金術師の戦い方の話はしたっけ?」
「戦い方?」
リーズがギュッと杖を握るのが見えた。
うん。話していなかったのがわかったよ。
「そう。錬金術師の戦い方は、他の人のサポートが主なんだ。今まで錬金術で作ってきたアイテムを駆使して、戦いを優位にするんだよ。例えば、モンスターに妨害用のアイテムを使ったり、怪我をした味方を癒したりね。だからモンスターと戦うと言っても、リーズが直接杖で戦う必要はないんだ」
まぁ、レベルを上げちゃえば、この国の騎士団相手に杖で無双できちゃうんだけどね。でも、基本的にリーズの役割は味方のサポートなのは変わらない。
「錬金術師は、魔力を使うことでアイテムの効果を高められるんだ。だから、リーズもアイテムを有効活用した戦い方を考えてみよう」
「そう、なのね……。勉強になるわ。本当にギーは物知りね。まるでなんでも知っているみたい」
「まぁね」
この世界のことなら、オレはかなりの部分を知っているだろう。それこそ、そのあたりの学者さんより詳しいかもしれない。
だが、オレもこの世界について知らなかったことがあるのも事実だ。
例えば、戦闘について。
オレの知っているゲームでの戦闘は、ターン制コマンド選択式の簡単なものだった。
だが、この世界の実際の戦闘は、ターン制やコマンドなんて存在しないリアルな戦闘だった。
どんなに敵の攻撃を耐えても自分の自由に動けるターンなんて回ってこないし、今日オレがやったように、モンスターから距離を取って遠距離攻撃をすれば、一方的に攻撃できてしまう。
実際の戦闘は、ゲームのように公平で親切じゃない。それこそ、油断すればすぐに死んでしまうだろう。
「いつまでもゲーム気分じゃいられないな……」
「ギー?」
「なんでもないよ。それよりも、装備を買いに行こう」
「ギー!?」
オレはリーズの手を取ると、バローの街の南側へとやって来た。このあたりは商業地区と呼ばれ、いろいろな店がしのぎを削っている場所だ。ここで装備を買っていこうと思う。
オレたちは大通りを外れて横道に入っていく。大通りに店を構えるような大店は、品質は確かだけどその分高いからね。まぁ、前世で言うところのブランド物みたいなものかな。
お金はあるけど、無限じゃない。できる限り節約したいところだ。
「さて、どこにしようか……」
脇道に入ってもお店がたくさんある。さすが商業区だね。
バローは『バベル』を擁するダンジョン都市だ。冒険者向けのお店もたくさんあるから悩んでしまうね。
「どうするの、ギー?」
「そうだねぇー。よし! あの冒険者に訊いてみるか」
オレは丁度通りがかったモヒカンの冒険者にどこかいい店はないか尋ねるのだった。
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