町の宝箱
……星って、孤独な存在ですよね。ああして夜空で仲良く並んでいるように見えて、その実、互いの距離は果てしなく遠いんです。どこか共感を覚えますよね。だからこそ、私は星が好きなのかもしれません。
どうも、こんばんは。詩人であり、知を追い求める哲学者の私です。
さて、私にはこの星で生きている中で、どうしても解けない謎が一つあります。それは、なぜこんなにも多くの食べ物が無造作に捨てられているのか、ということです。
今夜はこの謎を追うため、スーパーの裏に足を運び、実地調査を行うことにしましょう。
おお、ほほお、ほら、見てください。まるで大きな宝箱じゃないですか。その中には山のように積み上げられた食品ロス。美しい野菜、賞味期限が一日過ぎただけのパンやヨーグルト、さらには未開封のお惣菜まで。これらはすべて、人々の『選り好み』の犠牲となったのです。
私は考えました。「これはもしかして、食べ物を粗末にすることで、自らの豊かさを確認するための儀式なのではないか?」と。
人々は食べ物を捨てることで、自分たちが満たされていると思いたいのかもしれません。その証拠に、スーパーだけではなく、各家庭でも同じ光景が繰り広げられています。たっぷりと食べ物を買い込んでは冷蔵庫の中に詰め込み、放置している。ああ、まるで冷蔵庫が供物を受け取る祭壇のようではありませんか。食事を一番楽しんでいるのは、もしかしたら冷蔵庫なのかもしれませんね。養分を吸い取られた食品たちはゴミ箱の中へポイッと捨てられます。「賞味期限が切れてる」が合言葉。魔法じゃないんですから、たった一日過ぎただけで、その食べ物が悪魔に変貌するわけでもないのにね。
さてさて、哀れな食べ物たちを救出して差し上げましょう。お、んん、ああ、いい……。おっと、向こうから人が来るようですね。退散、退散。私って食事は一人で楽しみたいタイプなんです。
さて、夜道を歩きながら、救済を求める声にまだまだ耳を傾けることにしましょうか……ああ、さっそくありましたよ。これはバナナですね。皮が真っ黒で身はほとんど残っていませんが、皮の奥のほうにまだ、んん、ちゅる、んふぅ、はあ、少し残っていました。トロトロしていて食べやすかったですね。それから、お野菜がありますねえ。この萎びた感じがいいんですよ。あっ、口の中に張り付いて、もう寂しがり屋さんですねえ。それから、おっと、これはこれは食べかけのハンバーガーじゃないですか。まったく、ファストフードといえど、人間の心変わりの速さにはついていけなかったようです。
おっと、ちょっと見てくださいよ。これが黄金比というものでしょうか。ええ、私には黄金に輝いて見えますよ。じっくりと眺めたくなるような完璧な形のリンゴですね。……まあ、少し歪んでいますが、私の基準では十分美人です。このリンゴもルッキズムの被害者なんでしょうかね。
おっと、こちらにはお肉がありますねえ。トッピングまで付けていただきありがとうございます。ああ、おいしい。おっと、せっかくのご厚意ですから、お残しはしませんよ。地面に落ちた蛆虫ちゃんまでペロリと完食です。
あちらには空き缶が山積みになっていますねえ。これは、リサイクルというものですね。感心、感心。でも、少し食べ残しがあるので手伝ってあげましょう。じゅるじゅるじゅるり。
ちょっとちょっと、待ってくださいよ! ふうー、今夜はパーティですか? ピザの箱が……おっと、サプライズはサプライズでも残念なほうでしたか。中身がありませんでした、がくっし。でーもお、角にちょっとだけチーズが……。
おやおや、ここに宝石が落ちていましたよ。ははは、なんて大げさ? ノンノン。スイカは間違いなく赤い宝石です。綺麗ですねえ。匂いも最高。おっと、これは戦いの跡でしょうか? チョコレートケーキの残骸です。この持ち主は果たして勝利したのか敗北したのか。ダイエットは奥深いですね。おや、これはパスタソースの空き袋ですね。中身は……トリュフですか。ゴミですね。ああ、そんなものよりも、インスタントラーメンの残り汁が僅かに残っていますよ! これは最後の一飲みが美味しいんですよねえ。
んー、んふふ、いやあ、今夜もなかなかの成果でしたねえ。私も食品ロス削減に貢献できて何よりです。
しかし、森の哲学者の私はこう思うんですよ。ゴミ捨て場が豊かであればあるほど、人々の心は貧しくなっていく、と。食品ロスの問題を解決する日は、まだまだ遠そうです。
それにしても、こんなに美味しいものを食べている人間はどんな味がするのでしょうね?
「く、熊だ!」
そろそろ試してみるのも、いいかもしれませんね。元を断つ。それもまた、問題解決の一つの手段でしょう……。