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14 登録

 扉をくぐり、俺は少し1000年前の冒険者達を思い浮かべる。屈強な男達が、魔物やでかい荷物を担いでたむろしている。確かそんな感じだった気がする。

 しかし、なんということだろうか。今目の前に広がっている光景はそれとは全く違ったものだ。いや、多少似ている部分はあるのだが。

 大きな違いとしては、女と細いやつが増えたこと、魔術士っぽいやつが増えたこと、酒を飲みまくってるやつがいること、だろうか。

 冒険者としてのスタイルが変わったのだろうか。あとすれば変なことは言わないように気をつけないとな。


 「ねぇ、あそこ」


 アーレがそう言って俺の手を引きながら、奥にあるカウンターを指差した。


 人が並んでいるのを見るに、あそこが受付のようんものだな。さっさと登録を済ませてしまおう。

 周りを見ると、各々が酒に集中しているからか、新参者の俺たちを気にする目はほとんどない。

 とりあえず、この街でやることはこの冒険者というものを利用してコネを作ることだな。


 「すみません、冒険者登録をしたいのですが」


 空いているカウンターまで歩いて行き、受付の人にそう話しかけた。

 なんとなくで感じるだけだが、そこらで酒を飲んでいるおっさん達よりかは強そうな雰囲気がある。なぜだろう。


 「はい、登録ですね。冒険者というものについては、どれほどご存じですか?」


 「村から出てきたばかりなので……ほぼ知りません」


 「そうですか……。では簡単な説明だけでも」


 説明があると聞いて、アーレの方をみたが、ずっとキョロキョロとあたりをみている。うん、そうだな。放っておこう。


 「基本的に、冒険者協会は依頼の仲介を行なっております。冒険者様には、その依頼を受けていただき、報酬をお渡しするという形になっています。細かいことは、先輩冒険者なんかを頼ったりする方がいいかもしれませんが」


 ふむ、依頼の仲介とな。そこは変わっていないのだろうが。変化から考えるに、依頼の内容が変わっているのだろう。


 「依頼の内容というのはどんなものがあるんですか?」


 変化から考えるに、依頼の内容が変わっているのだろう。


 「ランクにもよりますが、薬草採取などと言った簡単なものから、魔物の討伐、Sランクまで行きますと竜の討伐なんかもありますよ」


 なるほどやはり、依頼の内容が大きく変わっているな。1000年前も魔物の討伐はあったが、毛皮や肉のためだし、竜種の討伐なんてそんなものは一切なかった。


 というか、冒険者は竜種の討伐とか、出来るものなのだろうか。レッサードラゴンとかならまだわかるが。


 「ランクというのは?」


 ランク。これも1000年前は聞かなかったものだ。


 「冒険者様の危険を可能な限り排除するために、依頼の難易度をランクに分けて振っています。冒険者様にもランクがあり、その一つ上までの依頼しか受けることはできません」


 確かに、それは大事だ。1000年前なんかは誰でも強い魔物の討伐に向かえるから、新人が普通に死んでたしな。


 「一応このアルドラスの支部にも一人……あれ?」


 受付の人が何かを言いかけて、視線を俺の後ろにずらした瞬間に首を傾げた。

 こういう時は必ずと言っていいほど面倒臭いことが起こる。俺の少なく頼りにならない人生経験より。


 「なぁ、お嬢ちゃん。ボクの弟子にならないかい?」


 見ると、俺と同じくらいの身長より少し高いくらいの女が、アーレに向かって話しかけている。


 いや、それよりも今こいつはなんて言った。アーレを弟子に、か。

 それだけならまだ良かった。問題はもう一つ。俺はこいつの顔を見たことがある。

 そう、あの時の魔術士だ。アーレの村でどんちゃん騒ぎをやっていた時にアーレとやり合ってたやつだ。

 あの時の認識阻害の魔術が破られた感覚はなかったが、バレたのか。


 だとすればこの街とはもうおさらばするしかないか。

 はぁ、せっかくコネを作れると思ったのに。振り出しか。


 「ねぇ、君がこの子のお兄さん? 少しこの子を貸して欲しいんだけど」


 今度は俺に話を振ってきた。カマをかけられているのか。

 いや、バレていない可能性にかけて、流れに身を任せてみよう。


 「はい……リグナを弟子にとは、どういう意味ですか?」


 「あぁ、機嫌を損ねてしまったらすまない。ただ単純に……この子の魔力量、興味が出ただけだよ」


 嘘を言っているようには思えない。


 確かに、今周りを見渡しても、アーレ以上の魔力量を持つのはこの魔術師ぐらいだ。

 だからこそ謎なんだ。なんでアーレの魔力量がこんなにも増えているんだ?俺のところまで来た時は、周りにいる人たちと同じか、それ以下かと言った具合だった。

 ともかく、今そこに言及しても仕方がないか。それは後で考えるとして、アーレを弟子に差し出すだけでこの場を切り抜けられるなら、それでもいいか。


 「あぁ、安心してほしい。これでも私はSランクだからね……実力は申し分ないはずだ」


 色々考えているとそう言ってきた。

 それよりもSランクと言ったか。確かになかなかやる魔術師だとは思ったが、これでSランクか。存外、拍子抜けだな。


 アーレの方をみてみると、女魔術士の方ではなく別の方をみている。食堂だ。

 確かにまともな飯は一昨日から食べてない気がするしな。飯を食べてからこの話は考えるとしよう。


 「……先にご飯を食べてもいいですか? お腹が減っていて」


 「あぁ……もちろん」


 一瞬首を傾げる仕草をしたが、すんなり許可をしてくれた。

 ここまでのことを考えるに、バレているという可能性は薄くなってきた気もするが、油断は禁物だな。

 アーレが後ろについていることを確認すると、その食堂まで向かった。


 食堂。ただの食堂といった感じだ。

 1000年前はこんなものはなかったが、需要の変化というやつだろう。そう解釈しておく。

 メニューは、基本肉とパン類。魔物の肉は使っていないようだが、豚のいい匂いが漂っている。ふむ、なかなかいいじゃないか。

 先に席を見つけてから食事をとりに行こう。


 「ごめんごめん、待たせたね」


 後ろからゴンッ、という音と共に女魔術士の声がかかる。

 先に言っておく。嫌な予感しかしないと。


 後ろを振り返ってみれば、やはりと言うべきなのか、嘘だろと言うべきなのか。酒樽まるまる机の上に置いてある。

 なんというか、意味がわからない。


 「君たち成人はしているんだろう? 僕からの奢りだ。飲んでくれ」


 女魔術士の顔が赤い。既に飲みまくって酔っているのか。そういうのはやめてくれ。

 ひとまず逃げるべきか、いやそれとも相手をするべきなのか。


 「何やってんだエヴァニス」


 その声が聞こえたと同時に女魔術士が首根っこを掴まれて担がれる。

 それをしたのはこれぞ戦士という風格の男。背中の大剣と、それを片手で持てそうな腕が強さを物語っている。


 最初に感じたのは、戦ってみたい、ということだ。なぜかって?簡単な話だ。強い戦士とは戦ったことがないからな。いや、勇者と一緒にいたあいつは強かったのかもしれないが。

 とにかく、今はこいつに助かった。


 「あ、えっと……ありがとうございます」


 「いや、こちらこそすまない……君たちに変に絡まないよう、キツく言っておくから」


 その戦士はエヴァニスと呼ばれた女魔術師を連れて建物から出て行った。

 なんと話のわかる人間なんだろうか。エヴァニスとは全く違う。

 今度恩返しをしないとな。


 その後、飯を食った俺たちは途中で忘れていた冒険者登録を終わらせた。

 Fランク、つまり最底辺からのスタート。だが何も問題はない。目標はさっさとSランクになって色んな人、例えば貴族みたいな上流階級とのコネを作ることだ。


 冒険者業は、そうだ。明日から始めよう。そうしよう。

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