10 初陣
「これで3軒目、と」
最初の家の人を殺してから、魔力探知は使わずに自力で探し出している。
今終わった家なんかは、箪笥の中で布団にくるまって隠れていたおかげで、なかなか見つからなかった。
レッドウルフがしきりに気にしていたから、匂いがするのだろうと思ってなんとか見つけることができた。
しかし、自力で探すのは大変だということがわかった。
うーん、やはり魔力探知を使うべきか。
このまま時間を使っても意味がないし、さっさと終わらせた方が楽だ。
十分楽しむことはできたからな。
もう魔力探知だけで終わらせてしまおう。
「よし、とりあえず起点は俺でいいか」
魔力探知の方法としては、自分の周りを薄めの濃度魔力で覆い、それを広げてどこに何がいるのかを大雑把に把握するというものだ。
もちろん、そこに術式を付け足すことで、どんなものがあるのかも全てわかる。
今回は、人間がいればそれに反応するような術式を込めればいいか。
それを村全体に広げよう。
広げたらあとは簡単。反応があった場所に風魔術を自動的に打ち込んでいく。
悲鳴というか断末魔というか、そんな声が聞こえてきた。
思ったよりも生き残っていたようだ。
次はアーレのところへ向かおう。
『ヴォルド!もし伝わってるなら早く来──』
アーレのいるであろう場所に向かおうとした瞬間、繋げっぱなしにしておいた魔力糸を伝って、思念が飛んできた。
かなり気になる途切れ方をしたな。魔力糸が断ち切られたことによって、思念を伝達することができなくなった感じだ。そのせいで、俺の方からも向こうに伝わっている感覚がない。
なにか問題でも発生したんだろうか。一応帯同者として期待しているからな。助けに行ってやろう。
そこまで考えた時、奥から大きな爆発音が聞こえた。
村にアーレが入ってくる時にした音と同じ、魔石を割ったことによる爆発音だ。
一個で足りると思って渡してはいたが、念の為三個渡しておいてよかった。
それにしてもそれほどまでに魔力を消費したのだろうか。そこまで指示を出すほどではないように思うが。
そういえば、さっき魔力探知に引っかかったあと、魔術を放ってもずっと反応があるのが一人いた。
そいつであれば早めに行っておくに越したことはないな。
風魔術を使って浮遊する。2回目にこの村まで飛んできた時と、同じ魔術だ。
アーレがこれを使えないせいで、山の小屋から村に来るのには半日かかった。これが終わったらアーレには覚えてもらおう。
ワイバーンとほぼ同じ速さで移動するため、下の景色が一瞬で流れる。見えた色は全部血の赤か、火の手の赤か、レッドウルフの赤だった。
それと、レッドウルフたちが、全てアーレの方角に向かっている。
何かがあった、ということは確定でいいだろう。何者かと戦闘状態にでも入ったのか、はたまた自分で家を燃やしてそこに巻き込まれたのか。もし何者かと戦闘状態に入っている場合は、どんなやつか。色々考えたいことはあったが、もうアーレの元まで着いてしまった。
移動時間は20秒くらい。やはりこの魔術は非常に便利だ。
まずは上空からの観察をしよう。
見てわかる情報としては、アーレの相手は魔術士であるということ。それも手練だ。
だが、見たことのない術式を使っている。威力は高く、精密でもあるが、いかんせん魔力消費が大きいように見える。俺よりも少ないあの魔力量では、大魔術を50回も打てば枯れる。
あとは、アーレにも驚いた。
下で起きている戦闘は一方的なものだ。魔術士の高威力の魔術を、なんとかレッドウルフを肉盾にして耐えている。
しかし、俺はそこに心底感心した。安易な指示を大抵の個体に出しつつ、近くにいる個体には緻密な指示を出す。もしこれを本当に感覚でやっているのなら、大したものだ。
使役魔術の指示も、全て術式だ。相当慣れないと、感覚であれほどの術式を組み上げることは難しい。やっぱり天才なのか。だとしたら羨ましいな。
「ッ!」
アーレが呻き声を上げながら倒れる。
今のは魔術士の方がうまかった。火球の中に土魔術で作った小さな槍を隠し、レッドウルフを貫通させて、そのままアーレの脇腹を貫いた。
っと、一応助けてやるか。
そのまま高度だけを下げて、地面まで降りた。
もちろん、相手を威圧するためにも、魔力は全開放。魔術士が少し下がった。
魔術士は、背が高めの女か。俺とアーレにかけた認識阻害の魔術を破られた感覚はない。
つまり、相手には俺たちの顔はわかっていない。が、魔力の質は覚えられた可能性がある。
逃してもいいが、殺しておいた方がいいな。
「ちょっと……これやばいかも」
魔術士と睨み合っていたら、アーレの声が聞こえた。
見てみると、かなりの出血だ。5分も放置したら死ぬな、あれは。
とはいえ、この魔術士から意識を逸らすことは難しい。仕方がないか。
「今なら生きて逃してやる。さっさと──、ってあぶね」
雰囲気を壊さないためにも、威圧的な口調と声で話していたが、急に魔術をぶっ放してきた。
それなりの威力だが、結界を展開して難なく防ぐことができた。
しかし、人の話くらいは聞いてもらいたいものだ。
「クッ!」
同じ魔術で返してやると、呻き声を上げつつも、なんとか防御した。
防御はできるんだな、といった感じだが、それなりに高度な防御結界だ。
もちろん、俺は同じ魔術を使ったが、威力は増幅させたし、速度とか色々上位互換で返してやった。
これで降伏してくれたら楽なんだけどな。相手の顔を見る感じ、ダメそうだ。
「そうか、仕方がないな」
そう言って大魔術を発動させようとした瞬間、木の板が割れるような音が響いた。結界にヒビが入った音だった。
一瞬で作ったとはいえ、それなりの強さはあったはずだ。
それが人一人通れるぐらいのサイズの分だけ、術式が書き換えられている。
逃げる隙を窺っているのか、ずっと俺の方を睨みつけてくる。
このまま殺すこともできる。だが、ここで逃した方が美味しい。そう感じた。
腕を下ろし、そのままアーレの方へ向かう。
そういえば、生き残りを出して、この村の最後を伝えてもらうのを忘れていた気がする。
せっかくだし、あの魔術士にやってもらおう。
「……いいの?追わないで」
「あぁ問題ない。今はあの魔術士よりも、お前の方が、価値があるしな」
というか今思ったが、いつの間にか話し方が砕けてるな。
別に気にはしないし、邪険にされていないと思うことにしよう。
あと、アーレに魔術の才能があることは確定だ。色々教えられることがあれば、教えてやろう。
色々教えるためにも、体裁だけだが弟子として取ろう。
「なぁアーレ。俺の弟子になる気はないか?」
そう聞いてみた。
もちろん拒否されても、旅の道連れにするのは確定だ。最初に決めた指針は、絶対に変えてはいけないからな。
「もう弟子じゃないの?」
想定外の返答だ。アーレの中では、そういう認識だったのか。
なら関係ないな。このまま魔術に関して教えられることは教えていこう。
とにかく、初陣は圧勝だ。なんの損害もなく、簡単に勝つことができた。
あの魔術士に関しては、一瞬危ないかと思ったが、なんとかなった。
さて次はどこに行こうか。地形や気候に関する地理も忘れたし、街や国についても教えてもらいながらやっていこう。楽しみだ。
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