好きなことを好きなだけ
ポチャムの雪ダルマシリーズ、夏のかいじゅうのおはなしのあとの話となります。
よろしければ、シリーズをご覧ください。
さむいさむい冬の町にはふたつきにいちどほうき星のせいれい様がとおって、ほうき星のおっぽから雪のようなほうき星のかけらをふらせていく。
ポチャムたちのかつやくで、夏のかいじゅうがまんぞくして帰っていって、町の人たちはポチャムたちをすごいやつらだと思うようになりました。
すっかりおとなしくなったドガンたちはいのちのおんじんのポチャムにあたまがあがらなくなったけど、たまにまた、いばろうとして町の人たちに怒られて、ポチャムが笑いながらドガンっておもしろいねって言ったりします。
アルド町長もポチャムにたすけられたんだぞって、みんなに言われるから、やくたたずなんて、言えなくなりました。だって、それを言ったら、町のみんながかいじゅうみたいに真っ赤になるから、アルド町長はすっかり小さくなっちゃって、ポチャムはかわいそうだなって思っています。
夏のかいじゅうがしまに帰ってから、ひとつきくらいたって、冬の町にあくまがやってきました。
「ここにポチャムとかいうガキがいるのか」
まっさおなかみにまっくろなコウモリみたいなはねとしっぽをはやして、ひつじさんみたいなつのをしたおねいさんはとってもさむそうなふくで冬の町へときたんだけど、あくまだから、さむくないのか、平気そうにしています。
「あのほうき星のせいれいに気に入られて、せいれいのこどもを子分にしてるそうだし、春のまじょも気に入ってるそうじゃないか。
夏のかいじゅうのこどももなついたって言うし、どんなすごいやつなんだろうね」
あくまのおねいさんはポチャムのうわさをきいて、冬の町に来たみたい。あくまのおねいさんは自分をとってもえらいと思っていて、自分と同じくらいえらいせいれい様や春のまじょ、夏のかいじゅうに気に入られているポチャムがどんなすごいやつなんだろうと思ったみたい。
ポチャムたちは町の広場でいつものようにあそんでいる。まえはポチャムと雪ん子しまいに雪ダルマきょうだいだけだったけど、今はドガンと子分二人に、ほかにもいっぱいともだちがいるんだ。
そんなポチャムの前に一ぴきのネコがやってくる。
ポチャムはかわいいなってなでようとしたんだけど、にげられちゃった。
あーあって思ったポチャムだったけど、すこしはしったネコがこっちをみてたから、ポチャムはネコをおいかけて一人ではしっていっちゃった。
「どこに行ったんだろうなー、さっきのネコ」
ポチャムはネコをさがしてあるいていると、さっきのネコをみつけて、しゃがみこんでよんでみることにしました。
「おーい、こっちへおいでー」
すると、ネコからモコモコとけむりが出ると、そこにはあくまのおねいさんがあらわれました。
「あれっ、またネコちゃんいなくなっちゃった」
すこし、しょんぼりしてるポチャムにあくまのおねいさんはあきれたようにいいます。
「さっきのネコはワタシがへんしんしてたんだよ。あんたがポチャムだね」
「そうだよ、なんでわかるの」
「あんたにしか見えないようにへんしんしてたからね」
あー、それでだれもいっしょにこなかったんだとポチャムはきづきました。
「それで、おねいさんはボクになんのようなの」
「はっはっは、ただのにぶいだけのボウズかと思ったけど、なかなかどきょうがあるじゃないか。なるほどね、ほうき星のせいれいや春のまじょがかわいがるわけだ」
「あれ、ほうき星のせいれい様や春のまじょ様を知ってるの」
ポチャムは目の前のおねいさんがせいれい様や春のまじょのお友だちかもしれないと思いました。
「仲はわるくないよ、たまに話をするくらいさ。ポチャム、ワタシは死者のくにのあくまさ、まぁ、この見た目でわかるだろうけどね。せっかくあったんだ、なんでもひとつねがいを叶えてやるよ」
あくまのおねいさんはポチャムのたましいがとってもキレイでまっすぐだと見てわかりました。
だから、せいれい様たちが愛してるのも、すぐになっとくしました。そうして、ポチャムのたましいをとってしまうために、ポチャムにねがいごとをさせようとしています。
ポチャムは疑うことを知らないので、キレイなおねいさんがねがいを叶えてくれるときいて、うれしそうにこたえました。
「好きなことを好きなだけしたいな」
あくまのおねいさんは、キレイなたましいをしているのに、ずいぶんと欲にまみれた、ありふれたねがいをしてくるとがっかりしましたが、お安いごようさと叶えてあげることにしました。
それからポチャムはみんなのところへと戻りました。とつぜんいなくなったポチャムのことを、みんながしんぱいしていたので、ポチャムはごめんなさいしました。
それから、あくまはしばらくポチャムを見ていました。
ポチャムは毎朝、はやくにおきるとせいれい様へあいさつをお空にむけていいます。
「おはようございます。きょうもたのしいことがいーっぱいありますよーに」
元気いっぱいにあいさつすると、みんなのところへといって、困っている人を助けたり、知らないことを教えてもらったり、良いことがあった人のところへいって、みんなでおめでとうって、いっしょに笑ったりしています。
ポチャムと雪ん子しまい、雪ダルマきょうだいはお手伝いしたり、おべんきょうしたり、あそんだりして、いつもとかわらない日々をおくっていました。
あくまのおねいさんはふしぎに思います。好きなことを好きなだけとねがっていたのに、お手伝いしたり、おべんきょうしたり、困った人をたすけたり、ポチャムは遊んだりもしているけれど、「好きなことだけ」しているとは思えなかったからです。
むしろ、誰かのためにいっしょうけんめいにがんばるポチャムは自分のためより、だれかのためにがんばっているようにみえて、あそんでいるときも、つねにみんなの輪のまんなかでケンカやいじめがおきないようにしています。
あくまのおねいさんはついにポチャムにききました。
「なぁ、ボウズ、あんたは好きなことを好きなだけしたいなっていったが、ぜんぜん遊びほうけてなまけてないじゃないか」
するとポチャムはふしぎそうにいいました。
「ボクはこの町が大好きなんだ。この町のみんなが幸せならボクもうれしい。そのためにはボクはいーっぱいおべんきょうして、いーっぱいいろんなことをして、たくさんのことができて、困ってる人を助けられる人にならなきゃいけないんだよ」
あくまのおねいさんはやっとポチャムのことがわかりました。ポチャムにとっては、いっしょに笑い合える人たちがいて、その人たちとがんばって毎日を生きていけることが、とっても大切な「好きなこと」なんだって。
あくまのおねいさんはポチャムのねがいを叶えてあげられませんでした。
だって、ポチャムのねがいごとは、もうポチャムが自分で叶えていたからです。
「かなわないねー。ありゃ、もう大物だ。ほうき星のせいれいがこどもをたくすわけだよ」
あくまのおねいさんはネコになって、嬉しそうに笑いながら、冬の町から出ていったのでした。
おしまい
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