プロローグ
隔週更新予定
無理な場合は月一で更新します。
初執筆で拙い部分もあると思いますが楽しんでいってくれたら幸いです。
くそ、なんでこうなった。
なんで俺がこんな目に合わなくちゃいけないんだ。
腰から下の感覚がない。隣を見ると助手席に座っていた兄貴が頭から血を流していた。
呼び掛けようとしても声が出ない。声が出たところで返事は返ってこないだろう。
あぁ、俺、このまま死ぬんだなと薄れゆく意識の中で思った。
こんなことになるなら稼いだお金をもっと使っておきたかった。
彼女ともっとたくさんデートしたかった。
アニメ、漫画、ゲームもっと楽しんでおけばよかった。
もっともっともっともっともっともっと…
そんなことをぼんやり考えながらなぜこんなことになったのか思い返していた。
俺の名前は雨宮ゆうとは雨宮一家の次男坊の22歳だ。性格は外向的で俗にいう陽キャっていう部類かもしれない。就職していたし彼女だっていた。お金もそこそこあった。家族関係も良好で、特に兄貴とは休日に一緒に出かけて買い物をしたり遊んだりした仲だった。趣味も合い友達からは「雨宮君ってお兄ちゃんと仲いいよね。」と言われるくらいだ。別に兄貴のことが好きでも嫌いでもないのだが。兄弟ってそういうものじゃないかとも思っている。
兄貴は雨宮ひでき25歳。就職はしているが彼女はいない。最近マッチングアプリを始めたとか何とか言っていたが特に興味もないので詳しくは知らない。性格は俺と違って内向的。陰キャだ。友達がいないからか、何かあるたびに俺に相談を持ち掛けてくる。そんな兄の相談に乗ることが結構好きだったのは内緒だ。
今日はそんな兄貴と一緒に映画を見に行く途中だった。ジャンルは今流行りの転生もののアニメ映画だ。お互いこの映画化されたアニメが好きということで一緒に見に行こうとなった。ド田舎に住んでいるため近くの映画館までは車で1時間くらいだ。
「昨日上司に言われたんだけどさ」と兄貴が口を開いた。
「君は内向的で友達もいなさそうだし人生つまらないと思うけど自殺だけはするなよ。ってさ」
「なにそれうける。兄貴は自殺考えるような奴じゃないだろ?」と俺が答える。
「そうだけどさー。それでこの後が面白くてさ。」
「自殺で転生したとしても君がなれるのはチートを持った主人公じゃなくて、序盤の村の近くに生息するスライムだぞってさ。何の能力も持たない雑魚になるってさ。」兄貴が苦笑する。
「そんなこと言われたのかよ。そんな上司がいる会社辞めちまえよ。今のご時世、就職先なんて山ほどあるぞ。」
「辞めづらいんだよなー。俺の性格知ってるだろ?」
「知ってる」と俺が続ける
「転生するなら剣と魔法のファンタジーな世界がいいよな。パーティ組んで魔王討伐とかしてみたいぜー!そしてハーレムを作る!!」
兄が大声で叫んだ。
「だったら俺は剣士になってみたいな。THE主人公って感じだろ?」
「確かに!だったら俺は魔法使いだな!せっかく転生したんなら魔法使ってみたいぜ!」
「兄貴は序盤でやられるスライムだろ?」
「うるせー。」
「ま、実際そんなのアニメとかゲームの中での話だけどな。」
「そうだけど想像するのは自由だろ?転生したら俺はハーレムを作る!」
現状彼女いない歴=年齢の兄貴が転生したところで彼女どころかハーレムを作るとか夢のまた夢だと思う。口には出さないが。想像するのは自由だ。
「俺は今の彼女をとても好いておりますのでハーレムには興味ありませんわ。」と冗談交じりに答える
「うわ、出たゆうとの彼女惚気。どんだけ好きなんだよ。」
「転生先でも付き合いたいくらい好き。」
「うっわ。」兄貴が呆れた顔をする。
「もし転生しても絶対ゆうととはパーティ組まんわ。」
「俺もスライムとパーティ組みたくねーわ。てか、なんで転生タイミング一緒で同じ転生先なんだよ。そんなのありえないだろ。」
「いや、転生自体あり得ないだろ。」
いきなり正論で返された。さっきまで想像するのは自由って言ってたのは誰だよ。
そこで会話が終了した。
転生か、今の人生まっとうしてから転生できるならしてみたいなとか思う。今すぐに転生したいとは全く思わない。俺にはまだやり残していることがたくさんあるのだ。特に彼女関係。
「ん?あのトラックなんかふらふらしてないか?」兄貴が口を開いた。
対向車線に目を向けると挙動がおかしいトラックがいた。やばい、あれ、こっちに突っ込んできてね?
そう思ってから数秒後激しい衝撃が起こった…
トラックにひかれて転生とかは聞いたことがあるがトラックに追突されても転生できるのだろうか。
そんなくだらないことを考えながら俺は意識を失った。