好きよ
僕は佳奈を写真に収めようと、カメラを佳奈に向ける。佳奈は「こんな格好撮らないでよ」と、嫌そうに言う。僕はシャッターを切る。カシャっという音がして、デジタルカメラは佳奈の姿を収める。「もう」と言って、佳奈はベッドでなんともいえない顔をする。
僕はもう1枚写真を撮った。
20歳のころ、カメラに出会った。家電量販店で売られていたCANONのkiss3が僕の目の前にあって、写真なんかに興味がなかった僕は、なんの気なしにそのカメラを手にとる。初めてのカメラは僕の手の中に馴染むように収まった。僕はファインダー越しに世界を眺めてみた。小さく切り取られた世界は無限に見えた。
佳奈の心臓はやはり悪くなっていった。石化した心臓は血液を送る力を失っている。「佳奈」と言って、僕は佳奈の上半身を起こし、佳奈の顔を僕の胸にもたせかける。だらりと落とした腕を僕は持ち上げ、握る。「ねえ。佳奈」と言うと、佳奈の唇は微かに動く。
「好きよ」
佳奈は言う。僕だって。そうだよ。僕は言う。ねえ。結婚式しないか。と僕が言うと、佳奈は驚き、その後、微笑む。「あと、2分」僕が言うと、そうね、と佳奈は頷く。




