【400字詰め小説】ヨシノさんの憂鬱
コロナ禍の今だからこそ静かに愛でたいものです。
また、この時期がやってきた。
――いったい何なの?
夏のビアガーデンも、秋のバーベキューも、冬のクリスマスパーティーも全く誘われないのに、なぜこの時期だけ・・・
「君ってやっぱキレイだね! 」
などと手のひらを返したように、なぜ飲み会に私を誘ってくるの?
でもいざ始まると、あれだけ皆が私に「今日の主役は君だよ」なんて言っていたのに、誰も私を見ていない。完全に無視して盛り上がっている。
誰一人、私にお酒も料理も勧めてくれない。
男性陣も他の女の子とは話したがるのに、私なんて見向きもされない。あれだけ「キレイだね」って言ってくれたのは一体何なのよ!
――きゃあ! 誰か私の足元にゲ〇吐きやがった! ひどいっ!
飲み会が終わった・・・ちょっ何で私の周りにゴミを捨てていくの!?
何なのこれ、イジメじゃない!? だったら私なんかもう誘わないでよ!
「染井ヨシノさん、君は最高の盛り上げ役だよ! 」
――そうか、私は「サクラ」だったのか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
私の場合、一人静かに桜並木を散歩するのが好きです。
花の色、花びらを散らす風の音、花の匂い・・・春、そして生命力を感じられます。
なので、地面を埋め尽くすシートの色、騒々しい喚き声、アルコールやゲ〇の臭いがする場所には近付きたくありませんし、そこにある桜が可哀想に思えてきます。