二人で目指す場所
──私は、ずっと魂の欠片を探し続けている……
凍り付いた氷の上を歩き、空に手を伸ばしては虚無を掴み
吹き荒れる風に身を委ねながら浮力に揺さぶられて
景色の青さと白い冷たさに心の隙間を重ねてゆく
刻の彼方に願いを失くして、忘却に逃げていた
ただ遠い姿を求めて、幻の中を彷徨っていく
果ての楽園は、過去に夢で描いた絵の具の中に……
二人で一緒に駆けて、手を取り合っていた
あの日見た虹色に約束を重ね合わせて
小さな誓いの言葉を胸の奥に刻み込んでいた
雨上がりの隙間から、希望が差し込んで
お互いに笑い合って、小さな私たちは手を繋いでいた
どこまでも無限に、きっと遠い所まで羽ばたける気がした
私は外から来た目覚めの使者で、
あなたは全てに望まれたお嬢様で、
おそらく鳥籠からの脱出計画は順風満帆だった
きっと外の世界は美しく、光が満ちていて
何も知らない彼女は目を丸くして驚くのだろう
教えてあげたかった、この世界が持つ本当の輝きを……
雪の舞い散る中を、彷徨い探していく
意地悪な運命と、呪われた魂を背負いながら
あの時の誓いと、忘却の想いを拾い集めながら
真夜中の星空の下で、月明かりの静まった中で
二人で遠い未来を夢にみていた
自然の草木が揺れる囁きの中で、お互いに手を繋いでいた
夜空に永遠を感じて、終わらない願いを捧げて
大切だという気持ちが、少しでも伝わるように祈って
私たちは遠い記憶を、同じ景色を共有していた
二人で見つめ合って、言葉を紡ぐ……
『いつか必ず再会すること、お互いに忘れないこと
たとえ離れていても、心は共にあること』
約束と呪い、それでもお互いに求めずにはいられなくて
小さな私たちは、無邪気にお互いに呪いを浴びせ合っていた
二人で泣きながら、お互いに言葉を交わし合っていた
──『いつか必ず、迎えに行くから』と……
私はあれから、季節をいくつか巡らせた
家出の計画は、子供心に無謀すぎたと知っていた
それでも冒険は、まだ諦め切れていなかった
大人になる道を捨てていた
分からず屋の子供のままでもいいとも思った
利口な未来なんて、ただの心の無い人形に過ぎないから
想い出の欠片を集めて、やっぱりあの子が大切なんだと気付く
大人になるために蓋をしようとしていた気持ちを抉じ開けて
だって私は、あの子を連れていくと約束していたから
迷いを捨てて、走ってゆく……
私は目覚めの使者、あの子に外の世界を見せると約束した者
そのためなら翼を生やして、空に羽ばたいてもみせよう
キラキラとした光が射し込む教会の中で
神様に祈りを捧げている女の子がいる
懺悔を吐いて、周りに背負った罪の赦しを請いている
私は外からやって来た部外者で、ルールを知らない
全てをぶち壊すために、その固く閉ざされた扉を叩き開けていく
あなたたちが作った秩序、階級、上下関係など私には意味が無いから
永遠の刻を彷徨い続ける彼女に手を差し伸べる
リセットを繰り返して箱庭に捕らわれ続けた彼女の手を
この場所しか知らない、他の行き場所を知らない彼女に向けて
大地よ、今こそその雄大な威厳を地平に示せ
秩序を壊す精霊たちよ、書を食い破って不敵な調べを奏でろ
流れる刻の支配者よ、その束縛を越えて彼方に羽ばたけ
本当の、『外の世界』に彼女を連れ出すために……
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私たちは、手を繋いで探し続けている
虚無に閉ざされた社会の中で、迷い歩き続けながら
二人で一緒に過ごせる、楽園の場所を目指して……