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ポラリスの多世界  作者: 一
主特異界編
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#08 終わりの始まりと始まり

この世界はとても綺麗だ。大神都という大都市だけあって街並みまるでニューヨークのようなブロック街で仕切られた整然と街並みが広がっていた。道路幅も広く未来的というか、神秘的な印象も受けるような感覚にもなった。寂しいという印象は受けなかった。


自動観測モードに入っているおかげで、周囲の環境や状況が手にとるように頭に入ってきた。人口、広さ、人気店に至るまで。観測オブザーバーさんはまるで情報そのものであるかのように分析と観測を繰り返していた。真核というのがスキルなのかどうかはわからないが、僕という人格の一部ということは理解しているが、ここまでの性能だと自分ってそんなに能力高かったってけ?と疑問をを抱きたくなる。


車窓から見る景色は、魔炉機関車で見たものとは違って都会的で無機質な感じもしなくもないが、観測された情報が合わさると、いつまでも飽きなかった。


「見るだけでも退屈しなさそうだ」


ボソッと思わず声に出すほど感動した。にしても、リノは車の中でも賑やかにしている。

嬉しい気持ちは理解できたけど、もう少し落ち着きも欲しいものだ、と思ってしまったが、あの直視できない眩しい笑顔を見てしまうと面と向かって言えなかったので、もう少し慣れてきたら、コミュニケーションをしっかりとってお互いを理解しい合いたいものだ。


心がある者、コミュニケーションがとれるのであれば、しっかりと取られねば入らぬ誤解や人間関係の摩擦になってしまうからな。


「お姉さま!お姉さま!」


僕の身体を揺さぶってくる。揺さぶられながらどう話せばいいのか、困っていたがふと大事なことを思い出した。


「リノ、目的地ってそういえばどこなの?」


事前にリノの上司の元へ行くことは知らされていたが、どこの場所かまでは聞いていなかったからだ。知ったところでどうこうってわけではないのだが。


「目的地ですか?あの中央にある大きな建物の最上階部分ですよ」


中央にある大きな建物?

んんん???!

あ!あの星が周回するほどの巨大な建物か!


「あそこまで、どのくらいかかるんだい?」


僕は恐る恐る聞いてみた。予想はしているが念のためだ。確認は必要だ。


「大体、1億㎞でしょうか。建物まではそんなに遠くないですよ。途中で光速道路に入りますし」


1億㎞かぁ、やはりだ。規模が違う。観測した算出結果でも同様の結果だ。最初から観測オブザーバーさんに頼って自己完結してもいいのだが、コミュニケーションは必要だからな。些細なことでも時間があるときは交わしたいと思うのだ。


およそ、5分以内に建物に到着だ。この世界は移動による無駄な時間が発生しにくいだろうな。

近所ならほぼ時間差無しに現場や現地へ行けるのだから。


リノと数分だが揺さぶられながら建物の真下へ到着した。


《目的地へ到着しました。引き続き自動観測モードを継続します》


観測オブザーバーさんの声が頭に入ってきた。網膜には[応接駐車場]という表示が出ている。迎賓するための入り口か。


「お姉さま、こちらです」


リノが丁寧にエスコートしてくれる。とても大切に扱われていることが仕草から分かった。


さて、リノの上司とはどんな人なのだろうか。こればかりは妄想してもしょうがないし、少し緊張もするが大したことはない。

少しづつだが、この世界にも慣れつつある。ようやく頭も心も落ち着いてきたところだ。


ロットさんが言っていた調整ってこのことだったのかな?セントラルポスタマ―で自己照会したあたりから、自分自身が定着というか、慣れというか、馴染んできた感覚があるのだ。


「リノ、その上司のところまでは転送か転移で行くのか?」


「そうですよお姉さま。ただ、少し待っててください。上司の部屋までは通常とは違う権限でアクセスしないと通してくれないので」


リノが空間に浮かび上がったパネルに何か入力して操作している。


「お姉さま準備が出来ました!それでは張り切って参りましょう!」


「おう、よろしくな!」


転送装置みたいだ。魔法陣?ではないか、床に模様のような綺麗な細工が施してある。模様の上に立つと青く白く光り体を包み込んだ。


ーー


フランクな会話も慣れてきた。自分の成長振りに感心した。リノの希望でもあるのだが、硬い会話のままだと膨れていたので、リノとは崩した言葉で心掛けよう。


合わせて、アンドロイドとは言っても心がるのだ、親しきなかにも礼儀あり精神で接する初心を忘れないようにしたいと心に誓った。


生まれ変わる前からこれは自分の中で大切にしていた生き方の美学なのだ。


《ポラリス、素敵です》


観測オブザーバーさん、心の声聞こえちゃいました?)


《ええ。私はポラリスのそういうところが大好きです》


観測オブザーバーさんはとても嬉しそうだった。なんだか、心の声が聞こえるって恥ずかしいけど、嬉しい。


ーー


体感で何秒だろうか。一瞬という言葉の通り、リノの上司がいる階へ辿り着いた。

(ここは、地上何階なのだろうか)


《観測しましょうか?》


(いや、いいよ。きっととてつもない階数ってことぐらい具体的な数字じゃなくてもなんとなくわかるから)


「お姉さま、こちらでーす!」


リノは上司がいる階だというのに、ブレない性格をしている。楽天家というより楽観的なのだろうか。もしくは両方??


そんなリノに対する興味がなんだかんだ言って湧いてきた自分がいて、なんだか安心した。


この世界に来てもしかしたら友だちになれるかも知れないからな。


嫌われるよりは好かれた方が良いに決まっているのだ。


「お姉さま、上司の部屋に到着しました!」


大きく重そうな扉だ。緊張感が伝わってくる。ただの扉だが作りがこの階の他の扉とは格段違った作りになっている。芸術作品は僕にはわからないが、この扉の先にリノの上司がいて、間違いなく凄い偉い人ということだけは空気だけで伝わってくる。


リノが扉をリズムよくノックした。


「リノ到着しました!入りまーす!」


リノは相変わらずブレないな。


扉が開くと、大きな部屋と窓があった。窓からは周回している天体が見えて、大きなデスクと人?がいた。


「初めまして、私は十煌神が一人、エリアスだ。君がポラリス・ステラマリスだね」


落ち着いた心に響く良い低音ボイスのイケボだ。


「は、はい!」


《観測しました。敵意は観測できませんでした。エリアスは遍く多世界の序列9位の存在として観測。特異界で最強の一角です》


「ステラマリス君の真核は想像以上に優秀だね。無意識に主の危機に対して分析を始めている。そう、警戒しなくていい。リラックスして。君の真核にもそう伝えてくれるかな?あと、リノ君も同席して話を聞いて欲しい」


凄い、一瞬で見抜いた。僕の情報は既に知られているのだろうと捉えていいのだろう。


「あ、はい。失礼しました。ありがとうございます」


僕とリノは、ソファーへ腰かけた。


「お姉さま、この方が私の直属の上司です。時空検閲省のトップであり、軍の最高戦力の一角である存在です」


リノからの紹介は、観測オブザーバーさんと同じだ。落ち着いていこう。広い部屋だというのにとても張り詰めた緊張感というか、エリアスさんの存在で肌がビリビリするようだ。


「あの、早速ですが、僕の情報は全て軍に筒抜けなのでしょうか?セントラル・ポスタマ―では個人情報は大切にと言われましたが、リノさんが僕を訪ねてきたことどういうことなんでしょうか」


相手がどんな存在であれ関係ない、ストレートに疑問をぶつけた。


「もっともな疑問で質問だね。結論から言うと筒抜けではないし、軍に情報は共有すらされていない。私の能力に由来するものと単純に経験値からくる感だね。あと、リノ君をステラマリス君のところに行かせたのは定められた宿命だね」


「答えていただきありがとうございます。宿命とはどういうことでしょうか?」


「この特異界という世界の話をしよう。この世界は分岐しない世界。つまりIFというものが存在しない宇宙であり世界なのだよ。この世界は幾無限の宇宙と世界、法則全ての起点であるが故にこの宇宙だけは特異点として存在している。つまり、運命というものが存在しない世界であり結果が決まっているのだよ」


IFが存在しない世界?

宿命?

特異点?特異界?


「つまり、決まっている未来しかないということですか?」


「そうだね」


エリアスはそう言うと、手元にある紅茶を一口して、間をおき会話を続けた。


「この世界にとって、君が転生して転移してきたケースは創世記以降、検閲前例が無く唯一無二の存在だ。我々の常識の超えた通常ではあり得ない。この状況は異常ではあるが、我々にとっては幸運であり、創世記からの宿命なのかも知れない」


異常?

創世記からの宿命?


何をエリアスさんが何を言っているのかがわからない。


「僕は必然で呼ばれたということでしょうか?」


「そうだ。そして、現在、幾無限の世界を救うかも知れない存在かも知れない。IFが存在しないという法則だというのに、”かも知れない”というのは矛盾が生じるけどね。多次元未来観測所シェルムからの報告だと3年後の未来が観測できないでいる」


「どういう意味ですか?」


「この宇宙(世界)は特異点なのだ。全次元無限多世界を観測し検閲している我々が3年後の未来を観測できないでいる。原因は不明だが、おそらくこの宇宙(世界)が創生していらいの未曾有の大災害か消滅する可能性があるということだ」


エリアスさんは、未曾有の危機だというのにとても冷静に丁寧に説明してくれる。


「生まれ変わって思ったんですが、この世界には神様という存在はいるのでしょうか?あなたは神様なのでしょうか?僕をこの世界へ呼んだ一人なのでしょうか。エリアスさん教えてください!」


僕の問いにエリアスさんの表情は変わらなかった。そして、言葉を続けた。


「私たち十煌神は神ではない。この宇宙(世界)を調律する者。それに神という全知全能のような存在はいない。ステラマリス君をこの世界に呼んだのは私の個人的な推測だが、神煌核を中心とした、この宇宙(世界)の意志だと確信している」


言葉に重みがあり一言一言に響きがある。エリアスさんは真面目に言っているのだ。

この世界に神様はいない。だが、意志という概念が存在していて僕を呼んだということ。何故?


「宇宙(世界)の意志ですか....僕は何のために生まれ変わって、ここに呼ばれ存在しているのでしょうか?エリアスさん、教えてください!」


エリアスさんは僕の問いに相変わらず無表情だ。ただ、緊張感が更に張り詰めてきているような気がした。空気が重いそんな感じだ。


「私の見解だと、この世界を救う存在だということだ。我々が何もしなくても、宿命が君に迫ってくるだろう。3年後の君は必然に渦中にいることは間違いないと断言できよう」


僕がこの宇宙(世界)を救う?

何をエリアスさんは言っているんだ?状況が全くわからない。ただ、3年後は渦中にいる?必然?


「わかりませんが、軍で保護ということですが、僕は軍属になるということですか?」


僕は、軍人になるために生まれ変わったわけではない。自分の選択で生まれ変わったわけではないのだが、僕だって意志はある。


「本題に入ろう。ステラマリス君は軍で保護はするが軍属には入れない。我々が全面的に協力するということが正しい。君にはこの宇宙(世界)には未来が無く選択肢は1つしかないのだ。救ってくれる協力をしてくれないだろうか」


エリアスさんが頭を下げて頼み込んできた。本来、この方はとてつもなく偉い存在で雲の上にいる方なのだろう。そういう方が一人のポラリス・ステラマリスという個人に宇宙(世界)を救ってくれと頭を下げてくるのだ。


3年後か。転生して転移して、生まれ変わって未来が無いというのはとても酷い未来だ。


「エリアスさん、頭を上げてください。後一つ聞かせてください。万が一この宇宙(世界)を救えなかった場合どのような状況になるのですか?」


「我々がシュミレーションした結果だと、3年後の結果次第だが、言葉の通り全ての宇宙(世界)が消滅し特異界が崩壊し、全次元無限分岐する多世界の消滅が確定演算されている。3年後以降は我々が全力で対処しなくてはいけない危機が迫っていることは確定している。敵や存在も不明だが、それらしい存在は報告されている」


ポイントは3年後以降世界は終わる可能性が確定している。そして、遍く”あったであろう世界”もこの世界も無くなるってどうゆうことだよ。

なかなか、重い話だ。


もっと、アニメや小説のように楽しく異世界ライフを満喫っていうのが、理想だったんだけどな。

生まれ変わっても現実は、生まれ変わるより重い。しかも、今聞いた話が本当なら、今度死んだら生まれ変わる先すら無いのだ。


どうすればいい?協力して世界を救う努力をするか、協力しないで世界が無くなるまで満喫するか。終末世界ディストピア過ぎんだろ。


戸惑い、怒り、混乱、、様々な感情が僕の中を蹂躙して焼き尽くすように渦巻いた。


が、


《ポラリス、ポラリス様》


観測オブザーバーさん、が心配してくれた。


(ごめん、少し取り乱していたようだ)


表情には観測オブザーバーさんの補助で感情が表出することはなかったが、さすがに情報が多すぎる。


「お姉さま、大丈夫ですか?」


リノも真剣に心配して、僕を見てくれている。


「ああ、大丈夫だ。少し自分の気持ちや考えを整理していただけだ」


「ステラマリス君、今回の事を君に強制したりしない。君の人生だ。宿命だの意志だの未来などは考えなくていい。悪いことをした」


エリアスさんは、とても凄い方だ。とても偉いという方だというに、頭を下げてくれる。

リノの上司は最高の上司だな。職場として恵まれている環境だ。ちゃんと個人に寄り添って気持ちを汲もうとしてくれている。


僕の答えは話を聞いたときから、いや、生まれ変わった時から僕の答えは変わらないし、きっとこういう宿命なのだろうと自然に悟ったような気持ちになった。



「わかりました。ご協力させていただきます!」


「お姉さま!!」

マスター!!》


「本当にいいのかい?」


「ええ、生まれ変わって誰かの助けになるならば全力で応えたいと思います!整理はつきました。もう迷いはありません!」


「わかった。我々も私個人も君の勇気に更に全力で応えよう。本当にありがとう。時間が無いので早速で申し訳ないのだが、リノ君を仲間として今後は行動を共にして欲しい。近日中までに指示を出すのでそれまでは自分の能力を確認していただきたい」


エリアスさんは、再度頭を深く下げてくれて、今後の方向性を丁寧に説明してくださった。


ただ、今決断しただけでまだ本番すら始まってすらいない。これからの動きや行動もどうすればいいのか。


エリアスさんの言う通り、自分の能力を使った実践やら能力の把握を体感でも鍛えたほうが良さそうなのは目に見えている。



今日から3年後の決戦に向けて、ポラリス・ステラマリスとしての宿命の歯車が動き始まったのだ。




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