#75 魔法コレクターというチート
地響きが鳴り響く。何処までも結界内を余すところなく全体を音と振動が包み込んだ。一体あの魔法使いは何をしようと言うのか。
一応、僕が出した黒点域の余波は全て自分で吸収して回収した。今この会場には攻撃による、あの神の血とやらもも無ければ重力攻撃の余波や閃光も衝撃波も無い。
きっと、次の攻撃は試合とかそんなのは関係無くて僕を殺す気で来る魔法なのかも知れない。どんな大規模攻撃だろうが、現在、舞台も結界内側全域に多次元跳躍を皮膜させてある。どんな攻撃や衝撃や力が発生しても外へ漏れ出すことはないだろう。
一番マズいのは外の人間への被害だ。
予選でも本戦でもそうだが、相手選手は結界や外にいる観戦者を無視した攻撃が多く目立つ万が一のことを考えると鳥肌が立つし、出来れば敵以外は誰も殺したくない。全部は難しくても血を流さないことにこしたことはないと僕は思う。
「ソラ、観測を」
《既に完了しております。いつどこからの攻撃へも対応可能です》
さて、どうする?
僕は星崩衣を纏った。出来れば決勝で使いたかったがここは身を守ることに全力を尽くしたほうが良いと判断した。星崩衣は完全な宇宙の力を纏った力。魔法では無いので解除することは不可能、突破することも不可能。リノ並の実力者じゃなければ今の僕に傷をつけることは物理的にも魔法的にも不可能に近い。
さぁ、どうする?
「本気になったら少し冷静になったよ。まさか、これほどの魔法使いがこの世界にいるとは思いもしなかったし、私より上位で高位な魔法を使うとも思わなかった。
はぁ、残念だ。君を殺さなくてはならなくなった。蘇生魔法も及ばない魔法をお見せしよう。さよなら、ポラリス・ステラマリス」
「僕は死ぬ気なんてさらさら無いけどね。全力で来い!!」
あーあ、自分で言っちゃった。この魔法使いに全力で来いなんて言ったらどんな魔法が飛んで来るか分かったもんじゃない。だが、それでいい。僕も全力を出す!!!
「ポラリス・ステラマリス征くぞ!!!」
『神越大魔法:呪術ノ神』
黒き闇が渦を巻く。空間が淀み空気が重たくなった。
いや、空気じゃない。大気全体が精神汚染のような感じだ。これはなんだ?
《観測掌握完了。呪術系の最上位魔法です。既に掌握完了したため主の進化へ還元が開始されます》
「え?」
「え?」
確実だが、僕が声にした意味と、相手が声にした意味は全く異なることは確かだ。
僕は相手の最大の魔法を吸収してしまった。感じた瞬間に。ソラの判断によるものか自動的に防衛機能によるものなのかはわからないけれども、これで相手の最大の切り札は掌握した。
「おかしいだろう、何故だ、何故だ。私が数年掛けて編み出した最強の即死系神の大魔法だぞ!」
「残念だけれども、ローデンヴァルトさんの魔法は今後一切僕には通用しない」
「なんだと?!そんな馬鹿のことが有り得るか!!」
「試してみるといいよ」
「あ、ああ、俺はここで負けるわけにいかない!!三十の神に告げられる神託を身に受けよ」
『神魔法:輪炎』
『神越魔法:王神』
『神越大魔法:聖食』
光の輪が上空に三十に重なった。とても神々しく綺麗で畏怖さえ肌で覚えた。これが、神域の魔法、神代の魔法かと、魔法に無知な僕でもはっきりと意識できた。ソラの観測のおかげかも知れない。
三十の光輪が一つに重なり刹那、天から僕に目掛けて巨大な光の柱が落ちてきた。避けるか、いや、ここは出し惜しみ無しだ。それでなければ僕は負ける可能性が高くなる。ここで僕も負けるわけにはいかない。
『深淵之魔神』
《全ての魔法を掌握完了しました。合わせて条件を満たしたため今後観測した全ての魔法が行使可能となりました。観測処理次第順次使用可能となります》
僕はこの戦いのおかげで魔法戦において最強の魔法コレクターへと進化した。今後ソラが観測し得る全ての魔法が行使可能となった。だが、魔法が使えたからといって強くなったというわけではない。単純には強くはなったが、強さとはそれだけでは説明が出来ないから難しい。取り敢えずこの戦闘で僕の選択肢が増えたことは確かだ。
「ば、馬鹿な、俺の、っわ私の魔法が..!」
目が虚ろだ。それはそうだ。目の前で全力の魔法が一瞬で掻き消えたのだから。
「もう僕には魔法使いの貴方では勝てない降参することをすすめるよ」
「私が降参だと?」
「もう魔力があっても魔法でも物理でも僕には届かないし効かない」
「一つだけいいか?」
「ポラリス・ステラマリスは神なのか?」
「神?!僕はそんな大した存在じゃない。僕はこの世界ではビギナーの冒険者さ」
「はははッ、神じゃないのか」
両手両足を地面につき、虚ろな目が暗くそのまま地面に沈んでいくようだった。
「降参しない?続ける?」
「いや、もう、私では貴女には勝てないよ、ポラリス・ステラマリスさん、私の降参だ。敗北なんて何十年振りか、年端もいかない少女に負けたのか私は」
プライドが高いんだな。だが、
「年齢や見た目は関係無い。実力が全てだ。あとは運かな?僕はそう思うよ。僕はまだ仲間には勝てたことないから偉そうなことは言えないんだけれども」
「ステラマリスさんよりも仲間の方が強いのか、ははははッ。ああ!私の完敗だ。私は初心に戻って出直すとするよ、ありがとう」
「こちらこそ、良い試合をありがとうございました」
僕は手を差し伸べた。僕の差し伸べた手を見た彼は僕の手を握ると立ち上がった。どこか清々しいような目になっていた。
「第三回戦、勝者ポラリス・ステラマリス!!!」
「「「「「わあああああああああああああああああー!!!!」」」」」
神にも負けない観衆の大歓声が盛大な聖歌のように聴こえたのは気のせいかも知れないが、僕はそう感じられずには居られなかった。




