#67 本戦初戦
「俺はウォルムナ・シュタナ、ステラマリスさんよろしくな」
「こちらこそ」
凄い気迫だ。スキル『万力』を発動しているのにも関わらず覇気で吹き飛ばされそうな勢いを感じる。轟く歓声のせいだろうか、この男のせいだろうか、自分の力の無さのせいだろうか。
いや、気のせいだ。
油断大敵。しっかりしろよ!自分!
《主、私も付いてますかベストを尽くしましょう!》
(ソラ、ありがとう!ああ、ベストを尽くそう!)
「それでは両者!試合開始!!」
レフェリーの号令がかかる。
リノが言っていたあの冒険者立っているだけでもまるで隙が無い。これが経験値の差か、僕も突貫だけどリノ教官に徹底的にしごかれたので経験値はそれなりにある筈だと自分を信じたい。
さぁ、僕らの本戦が始まる。
シュタナは動かない。剣を構えてこちらの様子を伺っているのか?それじゃ、僕から先手を打たせてもらう。この大会本戦のルールは相手を戦闘不能にするか、場外へ飛ばせば勝ち、ならば!!
『縮地』
「少女が消えた?!」
シュタナは瞬時に冷静に状況を分析する。肉体操作系のスキルか魔法かだな。魔力は感じ無かったが、これはスキルだろう。
スキル『領域感知』
このスキルの範囲内は必殺の間合い、いつでも来な!
「ここだ!!」
ガキィイイン!!!!!
俺の剣を素手で受け止めただと?!!しかも、この音は金属音だぞ!?どんな堅さだよ!
「攻撃を受け止められたか、だが!!」
《戦闘観測継続》
「!!!」
『重弾』
腹部に0距離で放った重弾がシュタナを捉えた。脚で踏ん張らないと今にも場外へ飛ばされそうだ。だが、ここで負ける俺では無い!
スキル『脚部獣身化』
脚全体が強化され場外へ飛ばされずに耐えきった。
「やるな、準備運動は以上だ。体が温まってきたからギアを上げるぞ」
《観測掌握完了》
刹那、僕のスキルの縮地同様、身体強化されたシュタナの速度は目にも止まらない速度で高速移動して攻撃してきたが、全てソラが観測して攻撃の軌道を予測出来た。
これはリノ教官のしごきのおかげだな。
「当たらない?!まだまだぁ!!」
剣と脚を使った攻撃が襲ってきた。
威力が半端ない!受け止めるだけでも衝撃で吹き飛ばされそうだ。速度で言えば、ジーンさんを超えてるんじゃないか?
あの居合以上の速度で放たれる蹴りと剣撃はソラの予測観測で回避しながら受け流した。
「どうした!どうした!」
シュタナの速度が更に格段に上がった。だが、まだ僕には避ける余裕はある。
今のところ、シュタナは僕には一撃も与えていない。だが、このままでは、ただの時間の浪費だ。ここは開けた本戦会場、予選会場のようにジャミングを効かせることは出来ない。手の内を見せたくは無いが、見せた手の内なら問題は無いだろう。
この今のスキル『万力』は言葉の通り、万の力を宿した力の塊。速度は音速を超える。
パンッ!!!
「ッ!!!?」
俺の攻撃が空間に弾かれた?!いや、空気が破裂したんだ。この少女の攻撃で。というか、これ直撃受けたらヤバいぞ。拳と蹴りが音速を超えて攻撃の応酬が繰り広げられた。
会場は二人の肉弾戦のやり取りに目を奪われ、大歓声と共に二人の戦いを見守っていた。
「やはり、本気でいかないとな」
シュタナの雰囲気が変わった。次来る!!
『戦脚轟雷』
獣身化した下半身が雷を纏った。
瞬間、気配とシュタナは目前から消え、意識した直前には遅く蹴りが目の前にあった。
《観測掌握完了》
上体を反らし、間一髪で避けた。次来る。これはキリがない。
1秒間に100を超える攻撃の応酬が数秒続いた。ソラが居なければ僕は既にフルボッコだったかも知れない。
ガキィイイン!!!!!
ガキィイイン!!!!!
音が遅れて来る。ソニックブームが応酬する度に空間全体に轟音が轟いた。
《回避成功。続いて来ます》
「うッ」
『砲脚』
防御したが、直撃を受けた。両手でかろうじて防いだが、依然威力は『万力』でも受け流せない。なんという男だ。
『雷下轟脚』
上段からのかかと落としに回し蹴り。
このままでは場外へ吹き飛ばされてしまう。ここで負けてしまうのか、練度で言えばリノにも届くかも知れない。純粋な力と研ぎ澄まされた技術の結晶の攻撃だ。この世界の特有の武道なのかも知れない。今現時点では、決定打になるような攻撃は受けていない。これならまだ耐えきれる。
『円重』
片手で発生させた『円重』で、強制的に間合いを飛ばして間合いを空けた。これくらいしなければ今も回避だけで次の攻撃に移せない状態が続くだけで消耗戦だ。
「!!」
何が起きた。突然間合いが強制的に空けられたぞ。なんだあの力は?!それに同時に、あの少女の雰囲気が変わった。次、何か仕掛けてくるな。




