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ポラリスの多世界  作者: 一
特異大魔法世界編
52/362

#50 強すぎ


「・・・・」


「・・・・!」


「お姉さま、お姉さま!」


何だか体を揺さぶられている感じがする。

いや、揺さぶられている。


「あれ?リノ!今どうなっているの?」


何が起きたか理解が追いついていないし、記憶も定かじゃない。確か究極技能アルティメットスキル『ティンダロスの猟犬』を発動させて、リノに直撃をして光の攻撃が止んだ筈。あれ?


「お姉さまは私の攻撃を受けて、気を失っていたんですよ。お体は大丈夫ですか?動けますか?」


「え?!僕がリノの直撃を受けた?」


直後の記憶に混乱が出ているな。ぼんやりとして思い出すことが直ぐに出来ない。


マスター、よかったです。意識が回復しましたね》


「あ、ソラ、ごめん状況の説明をお願い出来るかな?」


《ええ、勿論。結論から言いますとリノのフェイントにまんまと乗せられ、直撃をくらい気を失っておりました。虚数空間は未だ健在です。虚数空間へのダメージは既に回復しております》


「フェイント?」


《はい、観測した演算結果によりますと、リノの究極技能アルティメットスキル外成神ダオロス』とリノの『神速思考主演算コアアルゴリズム』との組み合わせによる別の個体素体を創出。その結果、マスターが攻撃したリノはダミーであり、本体は別の角度から攻撃を仕掛けてきました。観測出来たのは攻撃を受けた直後であり回避や対策を打つことが出来ませんでした》


ソラが観測出来ない刹那を狙った?

いや、観測範囲を絞ったせいか。これは今後の課題だな。


「なるほど。完敗だよ、リノ」


「あははは、ようやくお姉さまに勝てました」


勝てたも何も前回も勝ったとは言い難い戦闘内容だったし、今回は形に見えて見事に完敗だ。流石はリノだ。戦闘における圧倒的経験値差が結果に出たということか。

これまで何とかリノとの戦闘に追いついていけたのも、ソラや自分の能力による力に頼りっぱなしだったしな。


「お姉さま、次行きましょうか」


「次?」


「今回の模擬戦は能力による模擬戦でした。今からは格闘における模擬戦です。武道大会では能力を制限されたり、使用不可にする相手が現れるかも知れません。肉弾戦においてある程度経験値を積んでおくとより勝利に近づくと思います」


「確かに。能力だけだと威力が高すぎて繊細な調整が必要になりそれが隙になる可能性もあるかも知れないな」


「OK、リノ。僕はもう大丈夫だ。それじゃ早速始めようか」


「今回、私は自分の真核は発動させません。肉弾戦において全ての事象を拒否出来てしますので」


「助かるよ、リノ。それで僕は能力でしかリノに触れることしか出来なかったからね」


「それじゃ、お姉さま始めましょう!」


二回戦開始。ルールは能力を制限された状態での戦いを想定。肉体強化のスキルは使用可とのこと。ここはあの能力を使う。


『万力』


全身に力が漲ってくる。拳に力が入る。


「行くぞ!リノ!」


万力で肉体強化された脚から繰り出される踏み出す力は『縮地』をも可能にした。


距離があった間合いが刹那で詰められ拳を振る。

リノが避ける。凄く滑らかな動きだ。この速度の攻撃を予備動作無しで回避出来るのはリノぐらいだろう。蹴りを瞬時に体を回転させて蹴る。これも避けられる。衝撃波と風圧だけだけで建物が吹き飛んでいく。これも避けられた。


ならば!


リノからの攻撃をさせないように連続攻撃だ。

拳と蹴りは音速を超えてソニックブームが起きて周囲の建造物が跡形も無く消えてゆく。端から見たら凄い攻撃のように見えるが、ソニックブームの音が大きいせいで、実際はリノに直撃しても大してダメージが与えられるのかは触れてさえ出来ていないで全くの未知数だ。


「お姉さま、良い調子です。もっと速度を上げて、攻撃に集中してください」

「おう!」


攻撃の速度を上げる。蹴りに殴打に突きに掴みに。

まるで当たらない。今回はソラの観測を使用せずに戦っている。

純粋な自分の実力がどこの位置にいるのか知りたいからだ。


自分の頭で考えて、自分の選択して、自分で行動して、自分で分析するサイクルで、攻撃のスピードを上げていく。


「良い感じです。お姉さま!ではリノも本番に行きます」


「!!?」


リノの連続攻撃が目で追えない速度だ。何発か腹部と脚にくらった。吹き飛ばされないように踏ん張り回避する。


リノと僕の拳が打つかった衝撃で地面には衝撃波の跡が出来た。


「力とはただ振るうだけでは相手には届かないんです。力を感じて集中させて意識して点で攻めるのです。面だけではリノには届きませんよ」


「おう!リノ!」


力を点に。感じて、集中すること、意識すること。

これは他の能力とかにも応用出来そうな技術だ。


リノの蹴りが見えた。ギリギリで回避出来たが、今にも衝撃で吹き飛ばされそうだ。現状、僕が押されている。僕はもう既に何発か食らっているけれども、僕の攻撃を一回も当たっていない。リノはスキルを使用せずに僕と肉弾戦をしている。

僕は万力のスキルを利用してようやくリノの攻撃に届かずにいる。


もっと集中だ。力の流れを感じて意識しろ!


さっきの戦闘で感じた直感で避けたことをふと思い出した。

あの感覚を思い出せ!


拳と蹴りの応酬の中で五感を研ぎ澄ませる。

慣れないせいか意識と集中力が瞬間途切れると直撃を食らう。

リノの拳と蹴りはとても奥まで響く。「完神体」のスキルを常時用いても奥までとても良く響く。

集中力が完全に切れたらフルボッコ間違いないだろう。


「良い感じに体が温まってきましたね。速度を上げますよ」


リノは鬼教官に違いないと心の底から思った。

攻撃の速度が上がる。避ける、受けるは少しずつだが慣れて来た感じがするのは気のせいだろうか。


油断はしたつもりは無かった。

意識も集中力も途切れさせたつもりは無かっただが


「せいッ!」


地面から脚が離れて空を舞い、直後地面に直撃した。


土埃が上空に舞って衝撃波の跡が見えた気がした。

僕は投げられて地面に叩き付けられた。


「ッか!!」


背中から胸部へ衝撃が突き破るようだ。


「お姉さま、一本ですよ!」


「リノ、強すぎ」


息も切れ切れに言えたのはその一言だけだった。


「いいえ、よくぞリノの攻撃をここまで応酬に応えてくれました。軍ではここまでの応酬に応えられた方はいなかったんですよ」


眩しい笑顔が太陽のように見えた。


「はは、リノが言うと皮肉にも聞こえないや。完敗だよ、リノ」


「あはははは」


この虚数空間はとても良い。改めてそう思った。

今後、模擬戦をするには丁度良い場所だ。誰にも迷惑を掛けないし、今の実力を試せて経験値も溜めることが出来るし、気づきもある。


息の切れ切れがスキル「完全治癒」を持ってしてもなかなか治らないということは、これは即死級の威力ってことだなということだけが何故か頭を過った分、意外にまだ僕は余裕があるんだなって気づきを得られた気がした。

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