#39 白い月のギルド
シュパン!
「色々あったけれど、お疲れ様でした」
「お姉さま、お疲れさまでした。にしても、最後のあの男は結局何者だったんでしょうね」
「さぁ、僕にもさっぱりだよ。まぁ考えてもしょうが無いから早くギルドへ行ってクエスト達成の報告をしに行こう」
「そうですね」
思い返せば、クエストを申請してから達成まで一時間以内といったところか。この世界での常識はどんなものかは分からないけれども、最難関クエストをこの短時間で達成できたのは良いリハビリになっただろう。
今の僕たちなら戦國クラスとも良い戦闘が出来るに違いないと、根拠は無いけれども自信がついたということは良い成果だと思う。
さて
「お嬢さん方、お早い到着で」
「衛兵さん、お疲れ様です。今無事に初クエストを達成してきました」
「それはそれは。初クエストお疲れ様でした。見た感じ怪我も無さそうで安心しましたよ。ギルドでこれから報告ですね。正門からどうぞ」
きっと衛兵さんは初クエストと聞いて、温かく迎えてくれた。
この都市は良いところだと、心の底から思った。
「お姉さま、ギルドへ向かいましょう!」
「リノ、そう焦るなって」
リノもなんだか楽しそうだ。そういえば、初クエストとはいえ二人で戦って勝てたのは初めてだったな。これは僕にとっても大きな自信になったと思う。最初の一歩だ。
さて、確かギルドってどのあたりだったかな?
《ナビゲートしますよ、主》
「宙王さん、ありがとう!確か、ギルドに入ってから文字を読めるようになったからギルド名を知らないんだよな。本当はどんな名前のギルドなんだろうか」
「リノ、失念しておりました。確かに!私たちギルド名を知りませんね。あはははは」
《ご安心ください。この都市の地理は全て把握済みですので、しっかりとこの宙王ご案内致しますよ》
「「頼もしいよ、ありがとう!」」
リノと僕は回廊で繋がっているから、宙王の声がタイムラグ無しで会話出来るのはとても嬉しいし有り難い。それに、三人で冒険しているみたいでもあってとても楽しい。孤独や寂しさというのは本当に感じなくなってきたな。二人に感謝しなくたちゃ。
「リノ、宙王いつもありがとう」
「《こちらこそですよ》」
宙王さんの完璧なナビゲートのおかげで、大正門から歩いて間もなくしたら大きな石造りの建物とギルド名が掲げられた看板が見えてきた。
「ギルド連盟所属:白い月、か」
「可愛い名前のギルド名ですね」
「うん、良い名前だと僕は思うよ」
ギルド:ホワイトムーンへ入ると、相変わらず広い空間に様々な人種や種族で混み合ってる。
「おい、あれ」
「さっきの小娘らじゃないか。忘れ物か?ぎゃははは」
「クエスト取り下げにきたとかか?」
耳を澄ませば、広い空間だというに酔っ払いや見下す声らが自分たちに向けられ集まってきた。
それはそうだ。まだ騒ぎを起こしてから一時間しか経過していないのだから。
クエストが浮かんでいる掲示板がある大広間へ向かう。
「よし、これだ」
自分がサインした。クエスト申請の紙が浮かんでいた。
クエスト達成の日付とサインをして、紙を手に取って受付カウンターへ向かった。
「はい、ご用件をお伺い致します」
「あの、このクエストを達成しましたので報告です」
「かしこまりました。では依頼書を確認致します。。えッ、あの、少々お待ちください」
なんだ?なんだか様子がおかしいぞ。
受付に来てからサインするべきだったか?
「お待たせ致しました。ギルド長が直接お話をお聞きしたいということなので、奥の応接室でお待ちください。ご案内致します」
「え?何か問題でもありましたか?」
「書類には何も不備はありません。ただ、このクエストはヒヒイロカネ級の中でも最難関のクエストでして、しかも、討伐依頼を受理してから一時間も経過しておりません。なので詳しく詳細をギルド長直々にお伺いしたいとの主旨がありまして」
「あ、そうでしたか。わかりました。直接ギルド長へお話させて頂きます」
最難関とは言っても他にもヤバそうなクエストはあったし、最難関の一つであろうが、この世界にも強者はいる筈だし、クエストがあるということは達成できる可能性があるから掲示してあるのであって、僕らが特別問題視されるようなことでも無いと思うのだけれども。まぁいいか。
この世界でギルド長とか言う凄そうな人と話せる機会も良い経験になるかも知れないし。
「お姉さま、なんだか広間が騒がしくなってきています。私たちがクエスト達成申請をしたせいで噂が広まっているようです」
「ウソ?!そんなに騒ぐことなのか?」
「お姉さま、ここは変な噂の渦中に巻き込まれない内に応接室へ向かいましょう」
「お、おう」
本当だ。様々な人種や種族や冒険者たちだろうか。色々な役職の人たちの視線が僕らに集まっている。
「あのクエスト達成した?」
「何かの冗談だろ?」
「いいや、嘘じゃなさそうだ。あのギルド長と面会するらしいぞ」
「本当かよ!」
「どうせ、はったりだろ。嘘をついて誤魔化そうとしているのかもだぞ」
「はは、違いねぇ!!」
「あの娘らが?!」
色々な色が聴こえる。
不安、嫉妬、疑念、動揺。様々な感情が耳から見えてくるようだ。
宙王の観測や能力を使う迄も無い。
僕の五感がそう感じた。
広間の殆どが僕らがクエストを達成したことに対して懐疑的なようだ。
広間を後にして、案内に従ってギルド奥の応接室へ向かった。
僕らは応接室へ入るとソファーに腰掛けて、ギルド長なる人物が来る迄待つことになった。どんな人なのだろうか。もしくは種族が違う場合も考えられる。どんな方かとても楽しみだ。
出された紅茶を口に含むと、戦闘の疲れがホッと抜けたような気がした。




