#330 英雄たちの墓標
雨ノ森です。
毎日更新をあえてせずに小説と構想を練りながら
投稿することにしました。※毎日更新するかも知れません。
物語も佳境です。
是非、引き続きポラリスの多世界をよろしくお願い致します。
雨ノ森 響
「これは、完全に押されてるな」
マーノ・ピネッリは魔眼を視界見える範囲全てを対象に、歪みの存在を全て打ち滅ぼしたが、肌では戦況が劣勢ということが肌で感じることが出来た。この感覚は、過去に遠征に出されたどの大戦でも当てはまらない不思議な違和感に近い感覚だ。
「そうね、これはまずいかもね」
ロリ・ノーラ・エングダールがそう言う。彼女の能力をフルに使用して、歪みの存在の上位互換を顕現させて攻撃して、片っ端から倒しているが明らかに敵の数が想定よりも多いとロリも気づいていた。
「さて、どうするかね」
「この終わりが見えない戦争を終わらせるための話」
ロリは問いかけて来た。
「ま、そんなとこだ」
魔眼を放出しながら、ロリと会話を続ける。
「私の能力で歪みの存在よりも大きな数は強くても顕現出来ない。今の私の最大値で攻撃しているから、本当にこの歪みの存在ってなんなのよ」
「さぁな、ただ、俺たちも押されている現状、これから厳しい戦闘になることは必須だろう」
「そうね」
「他の仲間達も奮戦している。補給は無限備蓄してある。いつでも休憩出来る環境ではあるが、休憩させてくれない程の大規模な戦闘で本当にまいるよ」
「何、弱気になっての。ウケるんだけど」
「馬鹿言え、弱気なら会話すら出来ていないよ」
「けれど、互いの安否を確認するぐらいは必要よね」
「そ、そうだ。それにしても、アクセルは随分派手に暴れているな」
「ええ、この防衛ラインも既に多くの敵が突破しているけれども、それ以上に食い止めている貢献人はアクセルだろうね」
眼前に広がる爆炎の嵐は宇宙が生まれる以上の規模で爆発を繰り返していた。恐らく爆心地にアクセルはいる筈。そのアクセルの状態はほぼ無敵と言っていいぐらいの出力を誇る。
「アクセルが爆炎で遮断していなかったら、今頃どうなっていたことやら」
「けれど、油断は出来ないわよ。アクセルのあの爆炎を通り抜けて歪みの存在が侵攻していることは紛れもない事実だ」
「そうね、その溢れを破壊しているが敵の数が本当に多い。こんな敵初めてだ。個々の強さも最初よりも増している気がする」
「マーノの魔眼や私の戦乙女姫の効果が無くなるというの」
「いや、適応しているという気がするんだ。俺たちの攻撃を学習して侵攻している気がするんだ」
胸の奥で嫌な感覚がもやもやと湧き上がって来た。こんな感覚は初めてだ。
「そういえば、タルタロスのグループは戦況は上々らしいわよ。さっき、通信で入って来た」
「あの連中ならそうだろうな。俺たちと互角の能力を保有しているからな」
「まぁ、加勢に行く程、こちらも手は空いていないけれどね。タルタロスの連中も上手くやっているのだろう。私たちは私たちの仕事をするだけ」
「無限地獄って感じだな。本当に倒してもキリがない」
「そうね」
その瞬間だった。ぐしゃりともざくりとも違う得体の知れない音が耳に入って来た。
「ロリ!!」
ロリが一瞬で歪みの存在に捕食されて絶命していた。通信をしても応答が無い。魔眼を向けた。
「嘘だろ」
俺の魔眼が効かない個体が、信じられないが目の前にそれはいた。気色悪い色をした、今までの白い無機物的で幾何学的な個体とは、また別の新たな個体だ。
『皇帝眼』
最大出力でその不気味な個体へ凝視した。だが、変化が見られない。破壊される様子も無い。能力は最大出力で出しているのにもだ。
《....応援を..む...タル...ロス......》
「は?タルタロスからの通信。何が起きている」
気が付けば。アクセルの巨大な爆炎も無くなっている。嫌な黒いモヤがどんどん広がって行く。まるで、久しぶりに感じる恐怖という感情だ。特異能力を得て研磨し、究極能力だと自負していたが、精鋭たちは漏れなく自負していたが、こんな現実なんてあり得ないだろう。
タルタロスからの応援要請は、その後確認することは無かった。通信の直後、歪みの存在に駆体が噛み砕かれる音が最後に耳にした記憶だった。




