#30 古城の魔人
ヘリオス山脈は魔気で満ち溢れていた。視界に入るだけでも全宙さんが解析してくれた情報が随時更新され数値が上昇していく。
大きな城と魔獣がたくさんだ。
500はいるだろうか。網膜の魔獣数の数値が上昇していく。
大きな古城には強い反応が観測出来た。
「リノ、魔獣を頼むよ。僕はあの城を制圧するよ」
「お姉さま、わかりました。お気をつけて」
「おう、それじゃまた後で!」
さて、行きますか。
多次元観測で跳躍して古城の前まで来てみた。なんて大きな城だろうか。遠くからはそんなに感じなかったが近くで見るととても雰囲気と重さと趣があるような好きな人が見たらたまらない古城の形をしている。
魔法の世界に出てきそうな古城だ。
いや、ここは魔法の世界なんだけれども。
どうしたものか。このまま、正面から攻めるか、どうするか。
まだ、古城の中にいる魔人か魔獣はこちらには気づいていないようだ。
だが、リノも動いているし、気づかれるのは時間の問題だろうな。
ここは思い切って正面から攻めてみますか。
《観測を展開》
「行くぞ、黒点域!!」
ドゴォォォォォォォ!!!!!
轟音がヘリオス山脈に鳴り響いた。この世界で初めて使う黒点域。加減して展開を限定したとはいえ、破壊力は抜群だった。
あの大きな古城は跡形も無く吹き飛ばされ、瓦礫すら黒点域の小さな崩壊によってヘリオス山脈に抉るように大きく消滅させてしまったようだ。
《観測掌握完了。古城は崩壊により完全消失を確認。魔人の生存も確認。続いて攻勢観測に移行》
全宙さんが攻撃体制に入った。
「それにしても、凄い破壊力だな。黒点域ってこんな威力だったのか」
《主、そうです。これが本来の威力と言いたいところですが、ここでは力を最小限に抑えております。全力で戦闘すると地表そのものが消失してしまう可能性を予測演算結果が出ましたので》
いやいや、チートだろ。
今更ながら、未だに自分の力の底が見えないでいる。
しかも、現在進行形で、今まで戦闘した経験値や吸収した甚大なエネルギーはせっせと全宙さんが僕の進化に還元しているから威力も最初の頃と比べるともしかしたらとてつもない開きがあるのかも知れないな。
「おい!貴様!よくも俺様の城を消し飛ばしてくれたな」
《主、敵です。種族は魔人。クラスは上級です》
片方だけ異様な角が目立つ魔人が出てきた。ここは挨拶とか必要だろうか。
「やぁ、僕はポラリス。君の名は?」
「死ね」
『魔宴』
《魔人から高エネルギー反応、魔法解析を開始。観測掌握完了》
「な、俺様の魔法が消えただと?!貴様、ただの人間じゃないな」
「僕はポラリス。君たちを討伐しにきた冒険者だ。魔神王はどこにいるのか教えてくれると助かるんだけれども」
「ぶっ殺す!!!」
まぁ、激怒するのは仕方ないと思う。いきなり、城をぶっ壊されて、放った魔法が書き消えたのだから。
さて、でも僕は油断はしないし、気も抜かない。
強さの基準は相手によって大きく異なるし、今の攻撃も吸収も僕自身の能力に由来するものだから、僕の実力というよりは全宙さんの強さだ。
僕の力でもあるんだけれども、能力に過信は足元を掬われる可能性がある以上、意識だけでも磨くことに僕は集中する!
「へッ、だんまりかよ!!俺はジス。お前を倒す者だ。これからは本気だ」
《敵、魔人の魔気量が急激に上昇していきます。来ます!》
『闇魔法:鐘の咆哮』
ぅお!!
これが闇魔法か、凄いな。流石は魔法の世界。きっとこの世界には他にも光とか土とか色々な属性の魔法があるんだろうな。
ジスという魔人が放った魔法は、空から禍々しい大きな鐘を現出させた。
不気味な音が大地を砕き、体の芯に不気味で不快な鐘の音の振動が芯に響いた。
《観測掌握完了。高位の即死魔法です。対象の魔法を無効化に成功》
「俺様の魔法が効かないだと?!こいつ勇者か化け物か!!」
魔人からすると、僕は化け物に見えるのだろう。今の僕だと傷一つ負わせることは、ジスという魔人には全宙さん曰く、難しいらしい。
「おおおおおお!!」
《複数の魔人を確認》
「さて、まぁそうだよな。一撃で終わるクエストなら僕以外の誰かがとっくに終わらせている筈。それが出来なかった理由がこれからわかるということだ」
《主、328の上位魔人を確認。合わせて上空と地上に大規模魔法陣を確認。オーダーを》
「よし、行くぞ全宙!」




