#24 色と鐘
「転移魔法だとここまでのようね」
エノカ様の魔法を持ってしても、戦地へ直接の転移魔法は無効化されたようだ。こんなことは今まであり得なかったことだ。魔法を無効化または無力化するスキルや能力は存在するのだというのだろうか。
「しょうがない、話通りね。ならばこれで。スイスイちょっと衝撃来るくるから私にしっかり掴まってね」
「あ、はい!」
『空間跳躍』
全身が青くぼんやりと光ったと思った直後に体の芯まで響きそうな衝撃がスイスイの全身を突き抜けた。空間跳躍は空間を折りたたんで進む特殊な魔法でコントロールが難しい空間魔法の一種だ。何故、難しいのかというと座標をしっかりと計算しないと建物を破壊しながら突き進むことになるのだ。
移動中は折りたたまれた空間を移動する前の空間で包まれた状態で移動するため、仮に魔法無効された場合でも全く問題がなく移動することが可能だ。流石はエノカ様だ。
「はい、現場へとうちゃーく!」
「ふぅ」
「こりゃ酷いな」
漏れた本心だ。何故かというと大魔法師団しかもエリートと呼ばれる師団たちが壊滅しているからだ。まだ、何分も経過していない。これほどの実力を敵は持っているのか。
「スイスイ、周囲の警戒を最大限に!」
「はい!」
「そう、警戒しなくてもいいよ。エノカさん」
「「??!!!」」
エノカとスイスイは知覚できなかった声が発せられた場所に目を向けた。そこには、一人の白いローブを着た白髪や銀髪とも言えない美しい髪の少年が立っていた。
エノカは全神経を向ける。だが、何も感じない。魔力も力も。何もかもだ。
「何者だ!!貴様が大魔法師団と相手にしたやつか!!」
「・・・・」
少年は静かにこちらを冷たくも鋭くも宝石みたいな眼光でこちらを見つめて何も言わない。
少年を包み込むように、周囲の温度が下がってきているような寒気をスイスイは感じたその瞬間だった。
「そうだよ、初めましてエノカさんとスイスイさんでいいかな?僕はシキ、よろしくね」
「これはどうも、シキ?さん。何が目的で首都へと攻めてきたのかな?」
「首都へ?違うよ。全部だよ」
「何を言っている?全部とはどういう意味かしら」
「全部は全部という意味さ。エノカさん感じてご覧。消えゆく大都市たちの煌きを」
「え」
エノカは言葉の意味を理解した。世界の大都市が消失している。間違いない。世界中の魔力が一同に消失している。これは、一体。
「理解したかな?エノカさん、この世界で生きている大都市はここだけだよ。そして、エノカさん遊ぼう、そして消えてくれると僕の仕事は終わり」
「スイスイ下がってて、魔法防壁が効くか不明だけど、怪我人とともに物理的に安全な場所へ避難を」
「はい!エノカ様!」
「さぁ遊ぼう。特異界最強の大魔法使いのエノカさん」
『幾何魔法:空閲迷宮』
空間が捻じれ反射し概念すらも万物すら拘束する禁書魔法。魔法というより科学に近い魔法だ。事象に干渉する魔法なので、魔法無効化であろうと一定の効果はあると発動させた。エノカの得意魔法の一つだ。
「へぇ、綺麗な色だね。エノカさん」
「まぁ、この魔法で拘束できれば楽なんだけどね」
捻じれた空間から平然と少年が出てきて魔法が消失した。
「イルミネーションは終わりかな?エノカさん?それじゃこちらから行くよ」
「させないわよ」
『天体魔法:歪曲から五百歪までの重々魔法式を展開』
重々攻撃魔法。加減をしないと全ての星の位置に多大な影響が出る極大魔法の500連撃だ。同時に空間を隔離を施す魔法は解放済みなので街への被害はない。
しかも首都の魔法障壁と物理障壁も施されているので万が一攻撃が外へ漏れた場合でも最小限の攻撃で済む。
さて、効果はいかほどに。
土煙の中から少年が満面の笑みで出てきた。
「あはははは、お姉さん面白くて派手な魔法を使うね。とは言っても魔法に僕そんなに詳しくないんだけどね。派手だけじゃ僕には届かない」
あの魔法が効かない?
いや、そんな筈は。本当に魔法の効果を無効化するのか。
「さて、僕の番にしようか、エノカさん。お姉さんは色は好き?僕は好きだよ。夜の黒も明け方の太陽の射し込みの光の色も、みんな大好き。お姉さんは好き?」
この少年が何を言っているのかがわからない。もしかして色を使う魔法?いや、魔力は全く感じられない。操作系、捜査系、探知系、万象系魔法を向けても全て無力・無効化される。目の前であり得ないことが自然に起きている。何者なんだ。
「お姉さんが魔法使いである限り僕には決して届かない。さよならエノカお姉さん」
少年が何か仕掛けてくるのはわかっていた。だから、幾重も魔法、物理、概念、ありとあらゆる対策をしてある。だからこそ。
『概念終魔法:終』
爺には申し訳ないけど、この空間結界事、有象無象関係なく敵をここで討ち滅ぼす!
「色は波なんだよ、お姉さん。波が無いのも色の特徴。色は海で色は陸で色は世界で色は宇宙なんだ。魔法も色なんだよ、お姉さん、そして終わり」
ズッパン!!
「・・・!!??」
斬られた?!肩から腰まで斜めに。斬られて血が噴き出ている。自動治癒魔法が斬られたと同時に起動するが追い付かない。血が異常に噴き出る。血を出すなんていつ振りか分からない。
傷は、かなり致命的なところまで斬られているようだ。
だが、仮に即死系の攻撃が魔法であれ、物理であれ私が死ぬことは無い。自動で再生と蘇生できるからだ。
即死系の一種か?!どうやって攻撃をしてきた。予備動作無しに攻撃してきた。どうやって?!
まだ、傷が塞がらない。
「はぁ、はぁ、あなたどうやったの?」
「お姉さん、終わりだよ。放った魔法も綺麗に消えたよ。とても綺麗だった。さよなら」
「いいえ、私はこの程度じゃ倒せない。倒されるのはあなたよ。さよなら強敵」
『極大禁忌魔法:忌空』
ゴゥーン........... ゴゥーン.............
時計の鐘が鳴り、針が十二時を指す。世界の時間が極致的に逆行し奔流し全方向の時間軸が爆散し時間が千切れ崩壊する極大禁忌魔法。魔法というより概念に近い。色も存在しない。あるのは概念と化した世界の中で崩壊する敵だけ。抗う術は無い。
本来、使用できる術者はこの世ではパルム・エノカだけ。術者も巻き込まれて即死する魔法だが、生来パルム・エノカには即死系が効かない。魔法でもなく、能力でもなく、スキルでもない。生まれつきの魔法だ。
エノカにとってこの魔法は遥か無限なる強者のみに使用する数ある極大魔法の一つ。過去に使用したのはプロエや各頂きに立つ強者のみだ。
時計の鐘の音が空間内の夜空へ響き渡る。
ゴゥーン........... ゴゥーン.............
鐘の音が遠くまで響き渡る。




