#11 十煌神エアリス
「お姉さま!お姉さま!起きてください、お姉さま!大変です!!」
何やら騒がしい。僕はつい寝て?しまっていたようだ。寝るような疲れというか体質ではなかったのだと思うのだが。
《主おはようございます!主は能力の統合の影響で少し睡眠のような状態にありました。ノノは主の意識が無くなってから間もなく来られました》
なるほど。仮眠のような状態ということか。僕が意識していない中で、能力や吸収した膨大なエネルギーをせっせとと進化に使用しているようだ。
「あ、リノ、おはよう。というか鍵は掛けていたはずなんだけど、どうやって入ってきたの?」
「お姉さま!?それは...その...
とりあえず細かいことは気にせず、緊急事態なので話を聞いてください!」
はぐらかされた。まあ、それは後でゆっくり聞くとして、緊急事態とはなんだろうか??
「お姉さま大変です!十煌神エリアス様、私の上司が直接実戦したいとのことです!お姉さま、これはとても名誉なことです!!」
「え?!エアリスさんと直接実戦???!なんで??」
「私には上司の思惑はわかりませんが、直接実戦したいと。今からすぐです」
「え??!!今すぐ???」
3年間しか時間が残されていないかななのか?もしかして、ノノとの実戦を見てなのか?
いや、本気の戦いにはならないと思うけど、無理ゲー過ぎるでしょッ!
レベル1の村からいきなり、ラスボスと戦うようなものでしょ、これ。
とは考えていてもどうしようもない。僕はエアリスさんの部下ではないから断る選択しはあるのだけれども、同時に、僕が抱えている実戦の経験値不足を大幅に解消するチャンスでもあるのだ。
いきなり、この世界で頂きの一角にいる存在と戦うことにこれからなるのだ。恐くないはずはない。どんな戦いになるのかもわからない。
これも宿命ってやつなのかも知れない。僕は腹を決めた。
「わかった。ノノ案内して」
「お姉さま、本当によろしいんですか?」
「ああ、構わない。この実践はノノとは比べ物にならない戦闘になるかも知れないけれども、僕にとっては実戦の経験値を大幅に飛躍させるチャンスだから」
「わかりました。お姉さまが心配ですが、私応援しています!!」
《主私も前回同様しっかりとサポートさせていただきます!》
(ああ!今回も頼むな”相棒”!!)
ノノにも感謝だ。心配してくれる存在がいるっていうのは、不思議と嬉しい気持ちになるものだ。
とはいってもだ、いきなり十煌神という雲の上の存在という方が、いきなり実戦を申し込んでくるとはどういう意図があるのだろうか。
3年という時間しかないから来る焦り?いや、焦りで動くような方ではないと、先日エリアスさんとお話してそう肌で感じていた。何も根拠はないのだが、直観というか確信に近い。
ともあれ、どういう意図や計算があるにしろ、ノノが言うにはとても十煌神が直接実戦というのは異例中の異例で大きな戦争が無い限り直接動くことや実戦するといったことはしないそうだ。
はてさて、どうなることやら。
「お姉さま、ご案内致します!あちらにある転送魔法陣へ行きましょう」
ノノは一見元気そうだが、緊張しているのだろうか。少し言葉に震えを感じる。
僕とはいうと、不思議と焦りや心配や不安といった感情は湧いてこない。なんだろうか、冷静という気持ちではないのだが、ようやく自分を知れるチャンスだと思っているのかも知れない。自分自身、どんな気持ちでこの実戦に挑むかは実のところよくわかっていないのだ。
今でも心の底では整理が出来ていないのだろうか。
生まれ変わる前は普通の会社員で、生まれ変わった後は、宇宙の危機を救う手伝いをすることに。
はたから見たら、生まれ変わっても波瀾万丈な人生に見えるのかも知れないが、僕にとっては今まで通りなのかも知れない。
僕はノノの後を歩きながら、そんなことを思っていたりしていた。
転送魔法陣は相変わらず便利だ。一瞬で様々な空間へアクセス可能ということだけあって、いくつかのポイントを通過後、目の前に大きな扉が聳え立っていた。
「今回は前回とは扉もこの辺りの雰囲気も違うね」
「このエリアはノノも初めてくるエリアなのです。前回の戦闘領域空間とは違った空間みたいですが、まぁ入ってみたらわかりますよ」
ノノはいつもと変わらず平常運転だ。さてさて、やはり扉の前まで来ると威圧感というか雰囲気が重く感じるな。
ノノの言うとおり、細かいことは入ってみてからだな。
扉は大きくゆっくりと重く開いた。
扉を開けた先には地平線まで続く草原が広がっていた。とても気持ちい風が吹いている。春のような陽気も感じる。
前回の戦闘領域空間とは違って、どこか別の空間?または世界に来たような気分だ。
「ようこそ、ステラマリス君。いきなり実戦すると呼びつけてすまないね」
エアリスさんが立っていた。ゆったりとした衣服が風で揺らいでいる。
「とんでもないです。エアリスさんと実戦とは驚きましたが、どうしてこのような事に?」
僕は素直に疑問を投げかけてみた。その方が話が早いからだ。
「うん、最もな質問だね。今回実戦することになったのは、敵の存在が分かったことと、ステラマリス君に近い将来実戦が避けられないと思われるので、ここで一つステラマリス君の能力や技能向上を手っ取り早く実戦形式で試みようと思っていてね、今回はここに来てもらったんだ」
「敵の存在がわかったんですか??」
「そう。現在、十煌神と軍や各省は来るべき大戦に向けて粛々と準備中だよ。敵の幾人とかとは現在交戦した報告も受けている。想像以上に強敵だね」
「それじゃ、今回の実戦はその敵と戦うための修行でしょうか?」
「そう。修行だね。内容はノノ君と同じで実戦形式で行うよ。さて、始めようか。まずは私を今立っている位置から動かしてみようか。主席官は別部屋にいるように」
「は!かしこまりました!お姉さま、ノノは別の部屋からお姉さまを全力で応援していますから。ご武運を」
「ノノ、ありがとう」
ー
《戦闘態勢を確認!戦闘観測へ移行します。完了》
全天の声と同時に、空間が重たくなった。重力とかそんな話ではない。圧倒的な格の違いから来る”差”だ。大気が震えているようだ。
エアリスさんは序列9位に位置する最高戦力の一角。手加減されているとはいえ、ノノとは比較にならないほど強い存在なのだろう。そのエアリスさんが胸を貸してくれて今回のこの場を用意してくれている
全天は観測解析した情報を網膜に表示させ、戦闘の予測を演算してくれている。
(よろしく頼む相棒!)
「エリアスさん、行きます!」




