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狩人の女の子

 朝日が目に染みて、俺は目覚めた。


 昨夜はバルビリオンの外にある森林の中で野宿した。


 この地域のモンスターは強くてEランク程度だ。だからDランクの俺一人でも倒せる。

 本気で殴ればモンスターは粉微塵に爆散するから、爆散しないように弱い力で殴る。

 弱パンチで殴って殴って、肉体を残したままで倒せたモンスターは、尖った石で皮を切り裂いて内臓やらを取り除き綺麗にしたあと丸焼きにして食べる。


 もともとパーティーで活動していたときも野宿のときは俺が火起こしをしていたから、木の枝をこすって火を起こすことにはもう慣れた。


 廃墟の村からバルビリオンに来る間も、こんな感じで俺は野宿してきた。


「いてて……」


 背中が痛い。小石が背中にくい込んでいる感覚がする。

 野宿に慣れたとはいえ、大地の上で寝るのにはまだ慣れないでいた。


「やっぱ宿屋で寝てえな」


 採用試験は明日だ。せめて前日の夜くらいは宿屋でゆっくりとしてコンディションを整えたい。


 まあとりあえず今日もヒマだし、モンスターでも狩って素材を手に入れるか。そんでまた換金しに行こう。それから宿屋に泊まろう。


 俺はひとつ背伸びをする。


「……ん?」


 遠くで落ち葉を踏む音が聞こえた。

 俺は耳をすましてみる。


 やはりガサガサと音がする。

 何かがこっちに来ている。

 足音は次第に大きくなってくる。


 音は規則正しい間隔で聞こえてきている。

 モンスターだともっと不規則だ。

 つまりこの足音はモンスターじゃない。人間だ。

 こんな朝っぱらから誰だ?


 俺は念のために身構えた。


「あ、人がいる」


 足音がした方向から女の声が聞こえてきた。

 しかもこの声は聞き覚えのある声だ。


「あんたは昨日の……」


 俺は声をかける。


「な、なんであなたがここにいるんですか……?」


 理解できないという表情で女は俺に話しかけてきた。

 女は昨日換金屋で出会った女の子だった。

 女の子は俺の顔を見たあと、俺の周りの野宿した痕跡を見ている。


「あー、これはだな……」


「もしかしてここで一夜を明かしたんですか?」


 この状況だ。言い逃れはできないか。






 女の子はクロアと名乗った。

 クロアは俺に何度も感謝の言葉を伝えた。



「あの、昨日は本当にありがとうございました。それでよかったら私にデストさんのお手伝いをさせてください。どうしても昨日のお礼をしたいんです。デストさんの力になりたいんです」


 クロアが何度目かの感謝の言葉とお願いを俺に伝えてくる。


「さっきも言ったがもう終わったことだ。気にすんな」


「でも……もらったお金で宿屋に泊まってのんびりくつろいでいたときに、デストさんは野宿していたことを考えると……」


「それはもういいってことよ。はいこの話終わり」


 俺は話をバッサリ切る。


「そういやクロアは何でこの森に来たんだ? しかもこんな朝っぱらから」


「あ、それはですね、モンスターを狩りに来たからですよ。私、狩人なので」


 クロアは背負っている弓矢の装備を俺に見せてきた。


「じゃあ狩りは得意なのか?」


「自分で言うのもなんですけど、得意ですよ」


「ふーん、得意なんだ」


 俺の弱パンチよりかはクロアの弓矢のほうがはるかにモンスターを多く倒せて素材もゲットできるかもしれんな。


「すまん、やっぱりさっきの発言は撤回させてくれ。クロアに手伝ってほしいことがある」


 俺の言葉を聞いたクロアは、みるみるうちに満面の笑みになって目を輝かせた。


「ありがとうございます! なんのお手伝いをしたらいいですか!」


「一緒にモンスターを狩ってくれ。一人よりも二人で狩ったほうが効率がいいからな」


「わかりました!」


 クロアは快諾した。


「じゃあさっそくモンスター探しに行くか」


「あ、ちょっと待ってください。あそこにミニチュアヤンキーボアがいます」


 クロアが遠くを指差した。

 俺はクロアが指差す方向を見る。


 そこには確かにミニチュアヤンキーボアがいた。


 ミニチュアヤンキーボアはイノシシがモンスター化したやつだ。いまは木の幹に生えているキノコを食っていて油断しているようだった。


 しかしさすが狩人といったところか、索敵が早い。


 奴はすばしっこいから気づかれたら逃げられる可能性がある。俺は足音をたてないように慎重に近づく。


「待ってください。ここは私にやらせてください」


 クロアはそう言うと背中の矢筒から矢を取り、弦に引っかけた。


「見ててください。私、実はすごいんですよ」


 クロアは矢を放つ。


 放たれた矢は真っ直ぐに進んでいき、見事にミニチュアヤンキーボアの体に突き刺さる。


 その瞬間、ミニチュアヤンキーボアは派手に爆発した。そして周囲にさっきまでミニチュアヤンキーボアだった奴の素材が転がる。


「決まりました」


 クロアは笑顔だ。


「今のは……何だ?」


「スキル『大爆発』です。矢が当たったら、あとは私の好きなタイミングで大爆発させることができるんですよ」


「大爆発……」


 俺と似たヤバい奴がまた一人現れた。

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